堂安律も称賛「違いを見せた」 フライブルクの名采配…ベンチ組を導く指揮官の手腕「優れたチームはそれができる」【現地発】

フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督【写真:ロイター】
フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督【写真:ロイター】

ケルン戦で堂安所属のフライブルクが2-0勝利、途中出場の選手が2ゴールに貢献

 途中出場の選手が活躍できるチームは強い。日本代表MF堂安律がプレーするフライブルクはブンデスリーガ第15節のケルン戦で2-0の勝利を飾ったが、どちらのゴールも決めた選手と起点となった選手は途中出場だった。

 後半20分にオーストリア代表FWミヒャエル・グレゴリッチとハンガリー代表MFロランド・サライがピッチに登場すると、拮抗状態を保っていた試合の流れはフライブルクへと傾いていく。その直前の後半17分、ケルンのセンターバック(CB)ユリアン・シャボーが2枚目のイエローカードで退場となったところへ畳みかけるように攻撃的な采配を見せたのが、フライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督だった。

「2枚目のイエローカードでの退場も確かにうちにとって助けとなったが、ベンチからピッチに投入された選手が流れを変えてくれたことが大きい。優れたチームにはそれができる。うちと対戦した時のライプツィヒがそうだった。途中出場した(クリストフ・)バウムガルトナーがPKを獲得し、自身もゴールを決めて試合を決定づけた。昨日のホッフェンハイム戦もそうだった。同じことを今日、自分たちはやることができた」

 スタメン11人だけではなく、どんな選手がベンチに座っていて、どんな影響を試合にもたらすことができるのか。チームが持つ総合力とは、そうした噛み合わせのなかで測られる。

 2人が交代で入るまでのフライブルクは、低調ではないものの、決定機を作れずに攻めあぐねる時間が続いていた。堂安も「前半は一見ボールを持てているように見えましたけど、それほどビッグチャンスを作れてなかった」と振り返っていた。

 今季のケルンは下位からなかなか抜け出すことができずに苦戦しており、まずは守備を固めてハードワークを徹底しようとするチームに対してチャンスを作り出すのは決して簡単ではない。

 それだけに疲れも出始める後半途中から投入されたフレッシュな選手が、次々に積極的な仕掛けを見せて、相手を追い込んでいくことができたのは大きい。

「途中から出た選手が違いを見せてくれたのもありました。ロランド(・サライ)やノア(・バイスハウプト)が出てきてからは、彼らが仕掛けられるのが良かったかなと思います」

 堂安も途中出場選手の効果を口にしていたし、実際にゴールはそんな彼らの動きから生まれた。

 後半27分、左サイドでドリブルからサライがファーサイドへとクロスを入れると、MFマーリン・ロールがフリーでヘディング。相手GKが一度はセーブしたが、こぼれ球にいち早く反応したグレゴリッチが至近距離から右足でズドン。アディショナルタイム5分にはグレゴリッチのクロスをサライがヘディングで合わせて試合を決定づけた。

指揮官が指摘「『やってられるか』となるか、『その時が来たら…』と受け止めるか」

 ベンチスタートの選手が交代出場後に期待どおりのパフォーマンスを発揮するには、自分の立場と役割を正しく理解し、自分のモチベーションを上手くコントロールする術が必要になる。

 シュトライヒ監督もそこを指摘していた。

「どのようにピッチに入ってからプレーをするのか、そして監督の決断をどのように受け止めて消化するのか。そこが大事だ。すべてに過剰反応してしまい、『やってられるか』となって感情的になりすぎてしまうか。あるいは『その瞬間が来るまで待って、その時が来たら爆発する。ほかの選手は疲れてきているし、スペースも増えてくる』とポジティブに受け止めるのか。今日の後半はそういう展開だった」

 グレゴリッチもサライも本来スタメン組の選手だ。スタメンで出たい選手に、その意図と狙いを丁寧に説明し、チームのために力を発揮するように導く。シュトライヒ監督の手腕の素晴らしさがここにもある。

 またチーム1点目の場面では、堂安もロールのうしろにフリーで走りこんでいた。このシーンだけではなく、守備で奔走しながらもチャンスとなれば常にゴール前へ走りこんでいたのが印象的だ。

「ハードワークができていて、運動量も増えてきてると思う。徐々にコンディションが上がってきてるので、危険な位置にずっと入り続ければ、(ボールが)こぼれてくるかなと思います」

 フライブルクは一時期の不振を乗り越え、堂安をはじめ、各選手の調子も上向きだ。虎視眈々と今季も欧州カップ戦出場を狙い続ける。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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