久保建英、注目の去就は? 「リーグ全体でトップレベル」の急成長…オファー殺到を地元記者予想「来夏には…」【現地発】

久保建英はザルツブルク戦の後半途中から出場【写真:Getty Images】
久保建英はザルツブルク戦の後半途中から出場【写真:Getty Images】

ソシエダはCLザルツブルク戦で主力温存、途中出場の久保は好プレーも0-0ドロー

 オーストリアリーグの首位チームをホームに迎えたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)にて、久保建英は短時間で効果的なパフォーマンスを見せるも、スコアレスドローで終了した。

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 レアル・ソシエダは、インターナショナルウィーク明け最初の一戦となった週末のセビージャ戦で、苦戦しながらも2-1と貴重な勝ち点を挙げ、良い流れのまま現地時間11月29日のCLグループリーグ第5節レッドブル・ザルツブルク戦に臨んだ。

 前節ベンフィカ戦で10季ぶりとなるラウンド16進出を決めていること、中2日のタイトな試合日程による疲労を考慮し、イマノル・アルグアシル監督は6人を入れ替える大幅なターンオーバーを実施。久保、アマリ・トラオレ、ロビン・ル・ノルマン、ミケル・メリーノ、アンデル・バレネチェアといった主力を温存して臨んだ。

 ザルツブルクはすでにグループリーグ突破の可能性が潰え、次の目標となるUEFAヨーロッパリーグ(EL)への参加を目指し、激しい戦いを繰り広げてくると予想された(※CL各グループ3位の8チームはEL決勝トーナメントプレーオフに出場)。しかしアルグアシル監督が試合後に「相手は普段どおりのプレーをしていなかった」と語ったとおり、立ち上がりから試合の主導権を握ったのはソシエダだったが、決定力を欠き得点を奪えなかった。

 後半もソシエダの有利な展開は変わらなかったが、0-0の状況を打破できなかったため、アルグアシル監督は後半29分に久保を投入。スタンドから送られる力強い拍手に背中を押されながら公式戦2試合ぶりにベンチからピッチに入ると、いつもどおり4-3-3の右ウイングでプレーを開始した。

 徹底的に警戒され、簡単にはプレーさせてもらえなかったが、後半40分に会場の空気をガラリと変える。右サイドでDFを突破してスルーパスを通し、それを受けたバレネチェアが中に入れ、マルティン・スビメンディがダイレクトで合わせたが、残念ながら枠外となった。

 さらに後半アディショナルタイム、自らが獲得したフリーキック(FK)をゴール左上隅に飛ばしたが、惜しくもGKにファインセーブされ、その2分後に右サイドから放ったシュートも防がれてしまう。スコアは最後まで動かず0-0で終了となった。

久保建英について語ったスペイン紙「エル・パイス」のジョン・リバス記者【写真:高橋智行】
久保建英について語ったスペイン紙「エル・パイス」のジョン・リバス記者【写真:高橋智行】

ザルツブルク戦で見せ場を作った久保、スペイン各紙の評価は?

 決定機を演出して大いにスタンドを沸かすも、これで久保は公式戦10試合連続の無得点。最後のゴールは“ヒップダンス”を披露したアスレティック戦で、実に2か月前のことだ。

 ソシエダのグループD成績は5試合3勝2分と一度も負けていない。勝ち点11でインテル・ミラノと並びながらも首位の座をキープしている。1位通過は2週間後にインテルの本拠地スタディオ・ジョゼッペ・メアッツァで行われるグループリーグ最終節の直接対決での結果次第。セリエA首位チームが相手とあって全く楽な戦いにはならないだろうが、得失点差で上回っているため、引き分けでも大丈夫な状況となっている。

 価値ある勝ち点1を獲得したものの、シュートを20本以上打ちながら得点を奪えなかった選手たちに対し、スペイン各紙の採点は全体的に低かった。一方、短時間で見せ場を作った久保については評価が分かれている。

 クラブの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「後半アディショナルタイムのFKを直接決めるところだったが、依然として調子を落としている」と評し、2点(最高5点)と厳しめの採点をつけた。

 もう1つの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「出場するや否や素晴らしい攻撃力を発揮した。その役割を引き受け、そのすべてを望み、何も恐れていない。しかしクロスの精度を欠き、ゴール左上隅に蹴った素晴らしいFKはGKにセーブされた。さらに終盤に再びシュートを打った」と寸評したが、出場時間が短く採点までには至っていない。全国紙「マルカ」の評価は1点(最高3点)、「AS」は2点(最高3点)であった。

 この試合の取材に訪れていた地元記者は、久保のパフォーマンスをどのように見たのだろうか――。

 試合後、スペイン国内で最も発行部数の多い一般紙「エル・パイス」で、ソシエダやアスレティック、アラベスといったバスク州のチームを広くカバーするジョン・リバス記者に話を聞いた。

「イマノルは久保に出番をあまり与えなかったが、これまで多くの試合に出ていたので、賢明な判断だったと思う。彼はそのわずかな出場時間で、いつもどおり自分のサイドから攻撃に革命を起こした。誰も久保からボールを奪えないし、シーズンを通じて目を見張るようなパフォーマンスを発揮している」

CLザルツブルク戦が行われたソシエダの本拠地エスタディオ・アノエタの様子【写真:高橋智行】
CLザルツブルク戦が行われたソシエダの本拠地エスタディオ・アノエタの様子【写真:高橋智行】

久保は「今やチーム最高の選手の1人」 地元記者が絶賛「とても気に入っている」

 さらにジョン・リバス記者は言う。

「久保は最近、調子を落としているとも言われているが、彼の突破力やドリブル、縦の速さ、ボックス内で起こっている状況をいち早く察知する視野の広さ、常にゴールを狙い続け、チームのためにプレーしようとする献身的な姿勢をとても気に入っている」

CLザルツブルク戦が行われたソシエダの本拠地エスタディオ・アノエタの様子【写真:高橋智行】
CLザルツブルク戦が行われたソシエダの本拠地エスタディオ・アノエタの様子【写真:高橋智行】

 また気になる来季去就について同記者は、「残留するかどうかは彼次第だ。ラ・レアル(ソシエダの愛称)に来てからクオリティーを一気に飛躍させ、今やチーム最高の選手の1人となった。それだけじゃなくリーグ(ラ・リーガ)全体でもトップレベルの選手と言っていい。来夏には魅力的な“ガールフレンドたち”(多くのクラブ)からたくさん声がかかるだろう」と、オファーが殺到するとの見解を示した。

 代表戦明けのセビージャ戦を皮切りに、クリスマス休暇前のカディス戦まで、わずか26日間で8試合、平均3.3日おきに1試合というハードな日程が続く。コンディション調整が非常に難しいなか、久保は次戦ラ・リーガ第15節で14位と低迷しているオサスナとアウェーでの対戦を迎える。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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