試される森保監督の“マネジメント力” 選手層に厚みを増す日本代表のリアルなコンディション問題【コラム】

日本代表を率いる森保一監督【写真:徳原隆元】
日本代表を率いる森保一監督【写真:徳原隆元】

海外組が増える最中、選手のコンディションを考慮した采配が命運を分けるか【カメラマンの目】

 2026年のワールドカップ(W杯)・北中米大会出場を目指す日本代表は、アジア2次予選の初戦の相手となるミャンマー代表をホーム・パナソニックスタジアム吹田に迎えた。結果は終始、ペースを握り続けた日本の完勝で終わる。

 今回の代表戦では選手のコンディションに関することが話題となった。振り返ってみれば、コンディションのことが問題提起されたのは、2006年W杯ドイツ大会を戦ったジーコが監督を務めていた時以来のことではないだろうか。

 現役時代、限りなくブラジル的なプレーでサポーターを魅了したジーコは、指揮官となってからも、華麗なプレーを前面に出して戦う集団を作り上げようと試みた。その象徴が中盤の4人だった。中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一という才能豊かな選手を中盤に揃え、世界と戦うことを決意する。ジーコが日本代表の監督に就任した当初、彼らに共通していたのが海外のクラブでプレーしていたことだ(本大会時では小野が浦和レッズでプレーしていた)。

 ジーコは先発の条件として選手のポテンシャルを第一として考え、コンディションを二の次にして海外組を起用し続けた。そうした起用方針はときにチームとして上手く機能せず、交代で途中出場した国内組が活躍をすることにもなる。

 ジーコの時代は国内組を起用する選択の余地があり、監督を務めた終盤には海外組一辺倒の構想に固執することもなくなっていた。しかし、現代ではもはやサムライブルーはほぼ海外でプレーする選手たちによって構成されている。

 多くの選手たちが代表の活動を行ううえで、移動が伴うことはもはや避けられない状況だ。しかも彼らの中には国内だけの試合に留まらず、ヨーロッパを股にかけて戦うハイレベルな大会にも出場するようになっている。こうした国内と国際大会を同時並行で週に2度のペースで試合をこなすときもある選手は、コンディション的に代表の活動が難しくなるのは当然だ。

 例えば途中離脱した三笘薫(ブライトン)だが、11月9日に行われたUEFAヨーロッパリーグ(EL)の試合を現地で取材した。彼にしては珍しくプレーに精彩を欠いたのは、明らかなオーバーワークが理由だった。オーバーワークは怪我を誘発し、選手生命にも影響を及ぼすことになり兼ねない。

後半からボランチで出場した佐野海舟【写真:徳原隆元】
後半からボランチで出場した佐野海舟【写真:徳原隆元】

ミャンマー戦では国内組も実力発揮

 代表でプレーをしたくないという選手などいないだろう。ただ、現実的に代表の活動をするのが難しい選手がいることを我々は理解しなければならない。それだけ日本にもヨーロッパを舞台に戦う優秀な選手が増えたということだ。

 すべての物事がそうであるようにサッカーの世界でも絶対はない。指揮官としては万全を期して考えられる最高の選手たちを集めたいと思うのも理解はできる。ただ、海外で活躍する選手が大半となった今の時代の万全を意味するものは、高いポテンシャルの選手を起用することではなく、コンディション面をより考慮に入れる必要が生まれている。

 その点で言えばこのミャンマー戦はコンディションを優先したメンバー編成となった。しかも、追加招集した佐野海舟や細谷真大の国内組のコンディションが整った選手を交代で起用した。コンディションを重視し、海外組に負担をかけなかった采配は、この試合でもっとも森保一監督の素晴らしかったところだ。今の代表では時に選手の招集を見送り、また休養を与えるといった判断を下すことが、監督の仕事として1つ増えたことになる。これから対戦国のレベルも上がっていくW杯予選を勝ち抜いていくためには、森保監督のマネジメント力がより重要になっていく。

【読者アンケート】ミャンマー戦@ベストコンビ

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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