伊東純也へ王者PSGサポーターからブーイング 真っ向勝負で挑んだドリブルに心が躍った熱狂ぶり【現地発】

PSG戦で果敢に仕掛ける伊東純也【写真:徳原隆元】
PSG戦で果敢に仕掛ける伊東純也【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】PSG戦でも好プレーを連発した伊東純也

 試合が終了してもサポーターたちからの熱き声援は終わることがなかった。リーグ・アン第12節スタッド・ランス対パリ・サンジェルマン(PSG)の一戦。オーギュスト・ドゥローヌ・スタジアムにこだました、試合後の声援はキリアン・ムバッペがハットトリックを完成させて、3-0で勝利したPSGサポーターだけからのものではなかった。スコア的には完敗したランスのサポーターも選手たちに惜しみない拍手と声援を送っていた。

 近年はフランスのクラブチームを取材するのはPSGばかりで、その試合もUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に限られていた。そのため考えてみればリーグ・アンを撮影したのは、松井大輔や大黒将志がフランスでプレーしていたころ以来の取材となった。

 それにしても観客を熱狂させるタフな試合だった。この試合がリーグ・アンのレベルや戦い方を表す縮図ではないだろうが、両チームがドリブル攻撃をこれでもかと仕掛け合う、激しい攻防が続いた90分だった。攻撃のどの選手も相手を攻略するもっとも有効的な手段としてドリブルを武器に相手陣内へと切り込み、対する守備陣は自分が守るスペースに敵を侵入させまいと、激しいファイトをみなぎらせて1対1の勝負を挑む。互いが長所を出し合う戦いにおける局面での攻防の激しさは、実に見応えがあった。

 この両チームのドリブルを主体とした攻撃を支えたのがランスとPSGともに背番号7を背負う選手だった。ムバッペは多くの時間をサイドライン際で味方からのボールを待ち、パスを受けると超高速ドリブルでランスゴールへと迫った。ポジションを超えて選手にさまざまな役割が課される現代サッカーにおいて、ほぼ攻撃だけに専念している選手は稀な存在と言える。しかし、世界屈指のスーパースターは守備に参加しなくても、その爆発的な攻撃力だけでチームへのあまりある貢献を見せつけた。

 対するランスの攻撃の核は右サイドを主戦場として、王者PSGのDF陣と渡り合った伊東純也。PSGというレベルの高い相手に、これほど自慢のドリブルが威力を発揮するのかと驚かされ、カメラのファインダーを通して見る姿に心が躍った。

 その切れ味の鋭いドリブルはピッチに立つPSGの選手たちばかりではなく、サポーターにとっても脅威だったのだろう。前半、ランスの攻撃の先にあるゴール裏のスタンドに陣取るPSGサポーターは、伊東のドリブルやコーナーキック(CK)に対して激しくブーイングを浴びせた。それほどPSGの勝利を脅かす危険人物とみなされていたのだろう。

 後半のランスのサポーターが鈴生りとなったゴール裏へと攻め込むことになると、スタンドからは「イトー、イトー」と声援が上がっていた。そのドリブルやサイドを突破してからのゴール中央へと送るラストパスの伊東のプレーが、ランスの攻撃を牽引していたことは間違いない。

 ホームでの試合とあって意地もあったのだろうが、ランスの選手の誰もがPSGに対して攻守に渡って真っ向勝負を挑んだ。90分間の内容は互角。ただ、規格外のテクニックとパワーを併せ持ったムバッペにゴールを次々と奪われてしまったが、それでもランスの選手たちは心が折れることなく戦い続けた。

 スコアは0-3となったが、試合後も鳴りやまなかったランスサポーターの声援がホームチームの健闘を表していた。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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