「ルヴァンに負けて、今日も負けて…」 西川周作が悔やんだACLアウェー戦…それでも浦和に1つの希望が見えた理由【コラム】

浦和の西川周作【写真:2023 Asian Football Confederation (AFC)】
浦和の西川周作【写真:2023 Asian Football Confederation (AFC)】

ACLグループの浦項戦で痛恨の結果、先制するも後半2失点で逆転負け

「うしろから観ていても、今日は福岡戦と違ったチームでしたし、チームで素晴らしいプレーをやっていたと思います。本当に戦って、スペースを作って……勝てなかったというのは受け入れ難いものだったんですけど、全員がハードワークして、身体張って。(勝つための)ベースを作っていたとうしろから観ていて思いました」

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 韓国の浦項スティーラーズにアウェーで1-2と敗れた試合後、守護神の西川周作は悔しい気持ちを堪えるように、そう振り返った。過密日程、しかもJ1リーグの終盤戦にルヴァンカップの決勝、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)とビッグゲームを立て続けにこなさなければいけない過酷なレギュレーションで、パフォーマンスは下降気味だった。その基準で見れば、この数試合で最も良いパフォーマンスだったと言っていい。ルヴァン杯でタイトルを逃して、たった4日後のアウェーゲームであることを考えれば、DF荻原拓也の言葉を借りれば「120%で臨んだ」ことが、観る側にも伝わってきた。

 ただ、韓国FAカップの決勝で、全北現代を4-2と破ったばかりの浦項も前回対戦時の3バックと異なる4バックで入りながら、後半勝負であることが明らかな布陣だった。その浦項を相手に、浦和は攻守にハードワークして、前半は浦項を大きく上回るチャンスを作り、前半36分には荻原のインターセプトを起点に、小泉佳穂、エカニット・パンヤとつながって、最後はFWホセ・カンテが技ありの左足シュートを浦項ゴールの右隅に流し込んだ。

 前半の終了間際にはMFコ・ヨンジュンのクロスがディフェンスに当たって流れたところから押し込まれそうになるが、西川がビッグセーブで難を逃れた。浦項のキム・ギドン監督は後半の頭から大型FWのゼカ、韓国代表ボランチのキム・ジョンウ、経験豊富な右サイドバックのシム・サンミンという“真打ち”とも言うべき3人の主力をピッチに送り込んできた。明らかに浦項の攻撃ギアは上がったが、浦和も真っ向から立ち向かった。

「ピンチもあるだろうなと思いながら想定内ではあったので。後半もいい入りはしたんですけど」(西川)

 しかし、クロスボールがDFマリウス・ホイブラーテンの手に当たり、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入する形で、浦項にPKが与えて同点にされると、様相が変わってきた。浦和のほうがスタートからギアを入れている以上、メンバー交代も含めて後半パワーをかけてくる浦項が押し返してくることは予想できたが、PKの失点で試合の流れが浦項に向いてしまった。後半27分にはカウンター阻止でDF明本考浩がMFコ・ヨンジュンにうしろから危険なタックルをしてしまい、一度はイエローカードが提示されるも、VARチェックからアリレザ・ファガニ主審がOFR(オンフィールドレビュー)した結果、レッドカードで退場処分が下された。

PK失点、明本の一発退場、スコルジャ監督の退席…浦和にとって後味の悪い試合に

 勝ち点3が是が非でも欲しい浦和は10人になっても引くことなく、4-2-3のような形で何度かチャンスを作り出すが、9分が提示された後半アディショナルタイムに裏返されて、FWキム・スンデのクロスを西川が弾いたボールを勢いよくゴール前に走り込んできたFWキム・インソンに押し込まれた。西川は「僕としては下に弾くよりはちょっと上に弾いて、セカンドボールが来ても、相手がコントロールするような位置にもうちょっと高くできれば良かったなというのがあって」と振り返るが、その直後に不可解な出来事が起きた。

 ファガニ主審はスコルジャ監督にレッドカードを提示し、退席を命じたのだ。後半31分ごろに異議で警告を受けていたが、このレッドカードについてはスコルジャ監督に代わりって記者会見に臨んだラファ・ジャナスコーチも「理由が分からない」とかぶりを振るしかなかった。浦和としては心身ともに、過去数試合でもベストのものを出した。浦項も同じ過密日程の中でプランニングして、レベルの高い試合だっただけに、PKによる失点、明本の一発退場、そしてスコルジャ監督の退席と、浦和側からすると後味の悪い試合になってしまった。

 これで浦和はACLのグループステージ首位突破の可能性が消滅。5グループの2位の中で、成績上位3つに入るしかなくなった。残る2つを勝って、勝ち点10に伸ばしたとしても勝ち上がれる保証はないが、朗報を待つしかない。ただ、優勝の可能性がわずかに残るJ1リーグに向けてもポジティブな要素はある。

「本当に90分間を通して、ホームの浦項戦と全く違う姿を見せたと思いますし、結果が出ればベストだったんですけど。出なかった時にルヴァンに負けて、今日も負けて……本当に応援してくれてる人は僕たちがどういう姿勢で日曜日に挑むのかというのを期待してくれてると思う」

 可能性がある限り、自分たちは諦めない。浦項まで駆けつけた600人の浦和サポーターからの応援も心に刺さったという西川。本当に苦しい時に、どれだけのものを出せるか。今季はすでに52試合を消化。Jリーグのクラブが経験したことのない過酷なレギュレーションの中で戦う浦和の選手たちに外側から奮起を期待するのは酷かもしれない。それでも「本当に応援してくれてる人は僕たちがどういう姿勢で日曜日に挑むのかというのを期待してくれてると思う」と語る西川の眼差しに“諦めない浦和”を期待せずにはいられない。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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