久保建英、バルサ戦のリアル評価は? 2人のスペイン人記者を直撃「そんなことができる選手はほとんどいない」【現地発】

古巣バルセロナ相手に奮闘した久保建英【写真:Getty Images】
古巣バルセロナ相手に奮闘した久保建英【写真:Getty Images】

バルセロナ戦でスタメン出場したソシエダの久保、存在感を示すも0-1で惜敗

 久保建英はFCバルセロナ戦で再び存在感を示すも、レアル・ソシエダは土壇場の失点によりホームで久々の敗北を喫することになった。

 ミッドウィーク開催となった11月1日の国王杯1回戦、相手は6部のブニョールとあって、イマノル・アルグアシル監督は前節ラージョ・バジェカーノ戦(2-2)から9人を入れ替える大幅なターンオーバーを実施し、久保を含むレギュラークラスの選手全員を温存した。

 対するバルセロナは、前節ホーム開催されたクラシコでレアル・マドリードに1-2の逆転負けを喫して4位に転落し、これ以上ライバルに水をあけられないためにも絶対に勝たなければいけない一戦であった。

 久保にとってバルセロナは、多感な少年時代を過ごした思い出深いクラブだ。と同時に、過去4季の対戦成績は8試合1勝7敗、得点・アシストともになしと、非常に相性が悪い相手だった。この流れを断ち切ったのは昨季、カンプ・ノウで8試合目にして初の勝利(2-1)を挙げた時だった。

 そして迎えた11月4日、ホーム開催のラ・リーガ第12節バルセロナ戦で、久保は公式戦2試合ぶりに先発復帰。テーピングが貼られた左足大腿部の状態が懸念されるなか、いつもどおり4-3-3の右ウイングでスタートした。

 満員となったスタンドからの熱い声援に後押しされたソシエダは、キックオフからハイプレスを武器に主導権を握り、序盤からチャンスを立て続けに作っていく。久保もコーナーキックやドリブルでチャンスを演出。そして前半16分、ペナルティーエリア内右サイドのやや角度のないところから右足でシュートを打つが、これは名手テア・シュテーゲンが阻止。その後、何度かクロスボールを試みるも、バルセロナ守備陣の壁を突破することはできない。

 後半も右サイドで好プレーを見せ、同9分にマイナスのパスからブライス・メンデスの決定機をお膳立てするが、テア・シュテーゲンにセーブされる。その1分後、最終的にオフサイドの判定となったボレーシュートでスタンドを沸かした。さらに27分に持ち味を発揮する。右サイドを突破して敵陣深くまで切り込んだクロスはクリアされたが、得点の可能性を感じさせるプレーとなった。

 久保は最後まで攻守にわたり走り続けるも、チームが終盤バルセロナの猛攻を受け、アディショナルタイムにロナルド・アラウホの鮮やかなダイビングヘッドが決まり、0-1の敗北を喫することとなった。

 ソシエダがレアレ・アレーナで敗れたのは、今年2月のバジャドリード戦以来、実に公式戦18試合ぶり、ラ・リーガ16試合ぶり。チームはこの敗戦により順位を7位に落とした。

バルセロナ戦で売店も盛況だったソシエダの本拠地レアレ・アレーナの様子【写真:高橋智行】
バルセロナ戦で売店も盛況だったソシエダの本拠地レアレ・アレーナの様子【写真:高橋智行】

地元紙評価は「電光石火の動きを見せたが…」 バルサ番記者が賛辞「ボールを全く失わ

 久保はチームの中では存在感を示した選手の1人に見えたが、チームの結果が伴わなかったこともあり、クラブ地元紙の評価はそこまで高くなかった。

「ノティシアス・デ・ギプスコア」紙は、「何度もプレーに関与し、チームをリードしようとしたが、イニゴ・マルティネスに上手く止められたことで、バルセロナがペナルティーエリア内で出血することはなかった。決定機を作るのに苦しんだが、身を潜めることなくベストを尽くした」と評し6点(最高10点)とした。

 もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」紙は、「非常に積極的にプレーし、電光石火の動きを見せたが、ほかの試合のようには突破できなかった。前半16分にいいシュートを放つもテア・シュテーゲンに足でセーブされる。バレネチェアとの連係を試み、ゴールラインに到達しスペースがない時は、マイナスのパスを出した」と寸評し、3点(最高5点)を与えた。一方、全国紙の「マルカ」、「AS」はともに2点(最高3点)と評価した。

 スペインのラジオ局「ラジオ・マルカ」でバルセロナ番のラウール・フエンテス記者は試合後、久保の印象を次のように語ってくれた。

「久保はセンセーショナルな活躍を見せる素晴らしい選手だ。今季はチームを背負い、常にボールを求めてチャンスを生み出すなど、昨季に比べて大きく成長しているのが分かる。バルサ監督のシャビも先ほどの会見で、“彼はワールドクラスの選手”と認める発言をしていたほどだ。今季はそれを確証させるシーズンを送っているように見える。彼は今日、ビッグクラブとの重要な試合で、どのチームが相手でもスター選手になれることを証明した」と称賛した。

 バルセロナ戦で特に良かった点について、「縦への強さや、パスを受けた時に相手にボールを奪われない非常に高いキープ力を気に入っている。久保はボールを足に縫い付けているかのようなプレーをする選手だ。なかでも個人的に一番好きなのは、久保が相手と対峙した時、何をやるのか相手に分かられているにもかかわらず、ボールを全く失わないことだ。彼は身体を上手く使ってドリブルを仕掛け、さらにクロスも上げていたが、そんなことができる選手はほとんどいないと思う」と言及した。

久保建英について語ったスペインラジオ局「ラジオ・マルカ」のラウール・フエンテス記者(左)、スペインラジオ局「カデナ・コペ」のマウリシオ・イディアケス記者(右)【写真:高橋智行】
久保建英について語ったスペインラジオ局「ラジオ・マルカ」のラウール・フエンテス記者(左)、スペインラジオ局「カデナ・コペ」のマウリシオ・イディアケス記者(右)【写真:高橋智行】

ソシエダ番記者が指摘「今日1番のニュースは、久保がゴールを決めなかったこと!」

 スペインのラジオ局「カデナ・コペ」でソシエダの番記者を務めるマウリシオ・イディアケス氏は開口一番、冗談混じりに笑いながら話し始めた。

「今日アノエタ(レアレ・アレーナ)で1番のニュースは、久保がゴールを決めなかったことだよ! だって我々は久保がゴールを決めることに慣れてしまっているからね」

 続いて久保のパフォーマンスを冷静に分析し、「特に終盤、少し疲れがあったように感じたよ。久保の最大の特徴はスピードを生かした突破力だが、バルサのディフェンスラインには特に足の速いアラウホやクンデなどのような優秀なセンターバックがいるので、いつもより苦労していたし、疲労困憊するのは普通のことだ。それでも概ね今日の試合内容は良かったと思う。我々は最近、久保が得点することやアシストすることにあまりにも慣れすぎているから、今日の結果はちょっと物足りなく感じたけどね。水曜日のベンフィカ戦でそうなることを願っている」と希望を述べていた。

 ソシエダはこの後、中3日で8日に行われるUEFAチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節でベンフィカをホームに迎える。ラ・リーガではここ4試合でわずか1勝と、勝ち星獲得に苦しんでいるが、ここでの勝利は決勝トーナメント進出に大きく前進することを意味するため、久保にとってもチームにとっても非常に重要な一戦となる。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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