森保ジャパンに死角はないのか? 9月シリーズ2連勝も敢えて考える課題、不安が残る3つのポシションとは?【コラム】

森保ジャパンは欧州遠征で2戦8ゴール【写真:ロイター】
森保ジャパンは欧州遠征で2戦8ゴール【写真:ロイター】

森保ジャパンは監督の続投による上積みで一歩リード

 森保一監督率いる日本代表は、9月のヨーロッパ遠征をドイツ代表に4-1、トルコ代表に4-2と2連勝で終えた。

 ドイツに対しては2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)の時のような守備中心のサッカーではなく、パスワークで強豪を崩していく戦いぶりという進歩した姿を見せた。トルコに対しても先制点、追加点、ダメ押し点とたたみ込み、1点差に迫られたあとは個人技で突き放すゴールも決めて勝利を収めた。

 しかもドイツ戦、トルコ戦では伊藤洋輝以外、10人の先発を入れ替え、ほぼ2チーム分の選手を試して結果を出した。町田浩樹、毎熊晟矢、中村敬斗、伊藤敦樹という代表経験の少ない選手も投入し、久保建英はゲームメーカーとして役割を果たせることや、守備力も向上したことも証明した。

 戦術面、フィジカル面、選手層、連携、個の力とさまざまな課題を克服し、森保ジャパンには明るい未来しか待っていないように思える。だがW杯で躍進することはそうそう甘くもないはずだ。

 現在はW杯が終わって9か月という、各国とも新チームを編成し、ベースの部分を構築している段階。現時点では積み上げのある森保ジャパンが一歩リードしたに過ぎないと言えるだろう。

 まだ気分がいい今のうちに、日本代表の課題、あるいは課題の芽を見つけておいたほうがいいだろう。針小棒大に批判するのではなく、懸案材料を挙げてリマインド的に使えるのではないだろうか。例えば、3つ考えることができる。

■1. 左サイドバックをどうするのか

 ドイツ戦、トルコ戦は2試合とも伊藤洋が先発だったのは、森下龍矢のコンディションが悪かったのか、あるいは戦術に馴染まなかったのか不明だが、このポジションが今、日本代表で一番悩ましい場所だろう。ドイツ戦でも三笘薫をサポートするために伊藤洋が上がり、そのうしろを狙われていたのを嫌って後半は5バックにしたのではないかとも思える、守備面での不安は垣間見えた。

 中山雄太の復帰待ち、あるいはU-22日本代表から大畑歩夢、中野伸哉、畑大雅、あるいはバングーナガンデ佳史扶と候補になりそうな選手はたくさんいるが、右サイドの菅原由勢ほどピッタリ当てはまった選手はまだいない。

 2010年の南アフリカW杯から4大会連続で全試合先発を務めた長友佑都の代わりは、なかなか簡単には見つからない。足にピッタリ馴染んでいたスパイクから新しいシューズに履き替えた時は、どこかに隙間があるものだ。

 2024年1月~2月に開催されるアジアカップは長期でチームの連係構築を図れる。そこに新戦力を呼ぼうと思うと、残されたチャンスは10月と11月。だが、11月はW杯予選という場になるため、冒険はしたくないはず。となると、10月にはもっと候補選手を呼んでほしいものだ。

「左SB」、「GK」、「1トップ」をどうするか

■2. GKをどうするのか

 カタールW杯で全試合に出場した権田修一は現在34歳。シュートストップの能力が高いのはもちろん、最終ラインに入って組み立てに参加できるくらい足元の技術を備え、さらに経験も積んだ次世代のGKがほしいところだ。

 シュミット・ダニエルは31歳、中村航輔が28歳、大迫敬介は24歳。ドイツ戦で大迫がゴールを守ったということは、現時点で大迫が一歩リードしていると言うことになるだろう。だが東京五輪で活躍した22歳の谷晃生、U-22日本代表には21歳の鈴木彩艶もいる。

 GKだけは「調子がいいから」と次々に入れ替えて使っていいポジションではない。カタールW杯でメンバーだったシュミットか、2018年のロシアW杯に行った中村航か、あるいはこの際、若手選手に切り替えるのか、方針をハッキリしたほうがいいのではないだろうか。

 一番避けるべき事態は、若手が伸びてきているにもかかわらず、日本代表での経験が不足していて使えないこと。2019年アジアカップの時は権田が全7試合のうち6試合、シュミットが1試合を守った。同じように考えると10月から1月まで、誰がレギュラーで誰がバックアップなのか、固める時期に来ている。

■3. トップ問題は終わっていない

 2試合で合計8点を叩き出した日本代表の内訳は、伊東純也2点、中村敬斗2点、上田綺世1点、浅野拓磨1点、田中碧1点、伊藤敦樹1点。もっとも浅野の点はほぼ久保の得点と行っていい内容だった。期待の古橋亨梧は何度もゴールに迫りながらノーゴール。前田大然はサイドで起用されている。

 2022年2月1日のカタールW杯アジア最終予選サウジアラビア戦を最後に大迫勇也が日本代表を外れて以降、やっと日本は上田が1トップの1番手として地位を固めつつある。ポストプレー、抜け出し、強烈なシュートとさまざまな能力のある選手が、現在の日本のストロングポイントである両アウトサイドに絡めるようになったのは心強い限りだが、1人の選手に頼るのは常に危険だ。

 2019年アジアカップの時に1トップを務めたのは大迫勇也、武藤嘉紀、北川航也の3人。入れ替わりが激しいFW陣にあって、結局3人のうち誰もW杯メンバーに入らなかった。

 そういう過去の例を考えると、とにかく調子のいい選手を次々に使うほうがいいのではないか。若手を起用する方針で進んでいるが、浅野や前田はもう十分に実力を見せつけている。それならば、町野修斗や小川航基、9月はU-22日本代表と日程が被ってしまった細谷真大、さらにJ2には若手で生きのいいFWがたくさんいる。

 9月の試合で町田と毎熊というDFはしっかりと試して経験を積ませることができた。「いい守備からいい攻撃」の守備の部分はオプションまで含めてかなり固まってきたと言えるだろう。次はFWの新顔を入れて、どこまでできるか試すことができる。

 2018年に森保ジャパンがスタートした時、初戦のチリ戦は地震のため中止となった。その幻の1戦までカウントすると、現在の新チームで6試合終わった状態というのは、2018年11月20日、豊田スタジアムでキルギスを4-0と下したあとと同じタイミングだと言える。

 そのキルギス戦でゴールを奪ったのは、山中亮輔、原口元気、大迫、中島翔哉。その後のさまざまな変遷の中でカタールW杯にメンバー入りしなかった選手たちだ。当時と現在とでは状況や倒してきた相手、積んできた経験値も違う。だが4年前と同じように予測できない大きな変動が来てもいいように、選手層を厚くし、その選手の力を利用した戦術、戦略を練っていかなければ、今回の快勝はぬか喜びになってしまう。今はまだ出来がいい試合があっても過程なのだ。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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