森保ジャパンは左SBに「自信を持てていない」 欧州遠征の起用法に英記者見解「この事実は重い」【コラム】

英記者が左サイドバックの選手起用に注目【写真:Getty Images】
英記者が左サイドバックの選手起用に注目【写真:Getty Images】

欧州遠征のドイツ、トルコ戦における選手起用を英記者が総括

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は9月の欧州遠征でドイツ代表(同15位)に4-1、トルコ代表(同41位)に4-2の勝利をそれぞれ収めた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、昨年のカタール大会でワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、欧州遠征2試合における選手の起用法へ持論を述べている。

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 2試合で8得点を挙げて、ドイツとトルコに勝利した。森保一監督は、11月に控えているワールドカップ(W杯)予選と1月に控えているアジアカップに向けたチームの微調整という位置づけの欧州遠征は、大成功だったと考えているはずだ。

 よりコントロールされた慎重なアプローチでハンジ・フリック監督率いるドイツを破り、より華やかな戦術でトルコと戦った。森保監督のチームは、勝利を得るための方法が1つだけではないことを示した。柔軟性はインターナショナルレベルで重要なものだ。

 森保監督の率いる二軍が臨んだトルコ戦のパフォーマンスが、より目を引くものだったことに疑いはない。ヘンクで示された前半を通しての活力と活気に満ちたプレーぶりは、シュテファン・クンツ監督のチームには手に負えなかった。

 とはいえ、欠点が露呈しなかったわけではない。MF伊東純也のPKによって勝利が決定的になる前には、トルコを蘇らせてしまい、脅威を与えられたからだ。

 久保建英の突出したパフォーマンスには、なぜレアル・ソシエダの選手がドイツ戦に先発出場しなかったのかという疑問を覚えずにいられなかった。国際Aマッチデーの前にラ・リーガで見せていた状態は素晴らしく、それをトルコ戦にも持ち込んだ。

 その様子はドイツを相手にまるで存在感のなかった鎌田大地と極めて対照的だった。10月の親善試合は、久保が中央の攻撃的な役割を託される時が来たのは間違いないだろう。

 この22歳は長らく待ち望まれていた日本のスーパースター候補だった。そしてサムライブルーにおいて、あれだけの自信と落ち着きを払って、創造的なポジションを務められる選手というのは、2006年にスパイクを脱いだ中田英寿以来、思い浮かばない。

 久保のプレーには、中田の面影が重なるものがある。高度なスルーパスをチームメイトに通す能力は、過去に2度のアジア年間最優秀選手賞の受賞者と似ている。

 この若者は、超一流へ才能を開花させようとしており、森保監督は自身が最強のチームを率いる際に、彼を先発メンバーに入れるように努力をする必要がある。

欧州遠征2試合における左SBの起用法は「興味深い決断」

 森保監督がサイドを務める攻撃的な選手について、2試合で異なる選手を起用することができたのに対して、今回の欧州遠征の2試合ともに左サイドバック(SB)にDF伊藤洋輝を起用したことは、興味深い決断だった。

 シュツットガルトの選手は、ドイツ戦、トルコ戦の両方で先発した唯一の選手であり、生粋の左SBではないことを考えると、この事実はより重いものだ。

 森保監督は、ほとんどのポジションに2人以上の選手を揃えていた。センターハーフと左サイドの攻撃のオプションが心許ないという議論もあるかもしれないが、左サイドの守備者についても監督は自信を持てていないようだ。

 伊藤は2試合を通じて、信頼に足りるプレーを見せたが、最もプレーをしやすそうに見えたのはドイツ戦の後半に日本が5バックに布陣を変更した時だった。また、この時に三笘薫がカタールでのW杯の時にも務めた左ウイングバックにポジションを下げたことも、興味深いポイントだった。

 この起用は驚きであると同時に、三笘を自陣の深い位置でプレーさせることによって、アタッキングサードで相手を苦しめる彼のドリブルとスピードを奪うことになり、何の価値も見い出せなかった。

 Jリーグの上位チームの多くが、5人のDFでプレーしていることが、森保監督に生粋の左SBを探すことを難しくさせているのかもしれない。だが、将来的にはほかのオプションをテストする必要が出てくるだろう。そうでないのであれば、長友佑都の代表でのキャリアを復活させようとしているのかもしれない……。

 とにかく、森保監督は今回の代表ウィークでの非常に珍しい欧州勢との連戦におけるチームのパフォーマンスに満足をして日本に帰ることになるだろう。

 アジアカップが近づくなかで調子を上げている日本だが、11月に公式戦が再開される前にはホームで2つの親善試合が待っている。

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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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