J1昇格争いに異状あり エースFWが今季絶望…町田・黒田監督の苦しい胸の内【コラム】

町田を率いる黒田剛監督【写真:森雅史】
町田を率いる黒田剛監督【写真:森雅史】

J2得点ランクトップのエリキが長期離脱で町田は大ダメージ

 J2リーグが風雲急を告げている。

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 ここまでのリーグ戦は、FC町田ゼルビアが首位を独走。1試合消化試合が少ないながら、2位ジュビロ磐田に勝ち点差6を付けている。

 2位以下は磐田、清水エスパルス、東京ヴェルディ、大分トリニータ、モンテディオ山形、V・ファーレン長崎、ザスパクサツ群馬、ヴァンフォーレ甲府が勝ち点差10の間にひしめきあう。

 特に山形、長崎、群馬、甲府は勝ち点47で並んでおり、その下の勝ち点42のファジアーノ岡山、ジェフユナイテッド千葉までプレーオフ進出の可能性は大いにある。

 1位は確定、2位の自動昇格枠を激しく争い、3位から6位のプレーオフ圏争いはさらに熾烈——というのがここまでの構図だった。

 ところがここまでリーグを引っ張ってきた町田に手痛い事態が起きた。18ゴールでJ2リーグ得点ランク首位を走っていたブラジル人FWエリキが負傷し、長期離脱を余儀なくされたのだ。チームの全得点の3分の1以上を取ってきたエースの離脱に、町田は大きな影響を受けざるを得ない。

 町田とブラウブリッツ秋田を除けば残りは11試合。多くのチームが「逆転首位も狙える」と考え始めたのではないだろうか。加えて、ライバルたちは残り11試合のうち、6試合がホーム(磐田、清水、東京V、山形、長崎、群馬、千葉)なのに対し、町田は残り12試合でホームゲームは5試合。この1試合の差は大きく響くかもしれない。

 この緊急事態に町田の黒田剛監督はどう対処しようと考えているのか。8月24日、囲み取材に応じた指揮官は、突然のストライカーの離脱に悩んでいる様子だった。それでも第31節を終えて首位に立っていることは自信になっているのではないか。

「これまで対戦して弱いと思った相手は1チームもありません。どこともすごく拮抗した試合を毎試合やっていると思っています」

首位の町田でも自動昇格のためには最低6勝が必要な計算

 ここまでギリギリの戦いを続けてきたという思いを明かしつつ、今後については厳しい予想を立てた。

「目の前の一戦にどう勝利するのかだけを考えていきたいと思います。過去の経験から、何か違う手、または何かを肉付けしないと、このまま一筋縄ではいかないような感覚はあります」

 どんな肉付けが必要なのだろうか。

「今から上手くなるわけでもないでしょうし、何かのスキルが上がるわけではないでしょう。それよりも、1メーター先に足が出るとか、1メーター寄せられるということを怠らないでやることが重要だと思います」

 そんな黒田監督が敗戦した8月19日の第31節清水戦(2-3)のあとに感じたことがあった。

「試合が終わったあとも、サポーターが『諦めないで最後まで応援する』と言っていたのを聞いていました。彼らはずっと信じて応援してくれるでしょうから、我々が諦めるわけにはいかないのです」

 さらに、応援の力についても語った。

「(全国高校野球選手権大会決勝の)慶応と仙台育英の試合は、慶応のホームみたいな応援があって、アマチュアスポーツの中であれが本当に正しいのかどうかという意見があったと思いますが、応援されているほうは常に『自分たちは有利だ』と思ってやるでしょう。慶応じゃないけど、乗ったほうが強いですよね」

 ここまで町田の平均観客動員数は7368人とリーグ9位。果たして、残り5試合でどれくらいの観客がチームを後押ししてくれるかも重要な要素になりそうだ。

 J2リーグが22チーム構成になった2012年以降、シーズンを終えた時点で1位チームの平均勝ち点は86.2、2位は80.9。そしてプレーオフ圏内の6位は66.4になっている。

 ということは、現在勝ち点63の町田であっても残り試合でまだ1勝以上しなければプレーオフ圏内に入らず、自動昇格を手にしようと思ったら残り12試合のうち6勝は必要と言える。

 また、2017年は第31節を終えた時点で首位の湘南ベルマーレが勝ち点64、2位のアビスパ福岡が勝ち点57と、現在のリーグ状況と非常に似通っている。その時の最終的な勝ち点は湘南が83、2位には浮上した長崎が勝ち点80で滑り込んだ。やはり町田の自動昇格には6勝が必要と考えていいだろう。

 2018年の第31節でも町田は首位に立っていた。最終節では4位だったがJ1ライセンスを持たなかったため、プレーオフには進出できずに涙を呑んだ。果たして今年はどんな結末が待っているのか。群雄割拠時代の終盤戦がますます熱を帯びている。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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