J助っ人が見た“日・韓・中サッカー” 「日本は3か国でトップだ」…韓国、中国にはなかった決定的な違い【インタビュー】

横浜FMでプレーするアンデルソン・ロペス【写真:徳原隆元】
横浜FMでプレーするアンデルソン・ロペス【写真:徳原隆元】

横浜FMアンデルソン・ロペスが語る日本と韓国、中国サッカーの違い

 日本サッカーは海外からどう見られているのか――。Jリーグ誕生から30年、日本のプロサッカーリーグは海外放映やSNSの普及により、今や世界にも届けられる時代に。そんななかで「FOOTBALL ZONE」では「海外から見た日本」をテーマに特集を展開。その1コンテンツとしてJ外国籍プレーヤーに日本サッカーの印象を尋ねてみた。日本、韓国、中国、それぞれのリーグでのプレー経験を持つ横浜F・マリノスのブラジル人FWアンデルソン・ロペスが語る、各国の違いとは? (取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・橋本啓)

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 サッカー選手の“輸出大国”と言われるブラジル。同国のデジタル紙「Poder360」によると、2022年に国外でプレーした自国出身選手の数は、世界トップの1219人に上ったという。

 Jリーグが1993年に発足して以降、日本でもブラジル出身選手がプレーする光景はお馴染みとなったが、同国内で日本サッカーに触れる機会はそう多くはない。だからこそ、国外移籍を経験したことがなかった2016年より前のA・ロペスにとって、日本はまさに「未知なる国」だった。

 現在、横浜FMの前線を牽引するA・ロペスは、16年夏に初来日。その3年前に母国でプロデビュー後、ブラジルのクラブを転々としていたなかで、出番に恵まれていなかったアトレチコ・パラナエンセ時代、自身のもとに日本行きのオファーが舞い込んだのがJクラブ移籍のきっかけだった。

「正直、日本のリーグに関してはその当時、何も知らなかったんだ。だから、日本でプレー経験のある選手に聞いたり、自分でも色々と調べてみたりしたんだよ。どんな国なのか、全く想像がつかなかったけど、とにかく良いことしか耳にしなかった。実際に来てみると、そのとおりだったなって実感したね」

 来日当時をこう振り返ったA・ロペスは、日本行きを決断し、森保一監督(当時/現・日本代表監督)が率いたサンフレッチェ広島の外国籍助っ人として、1シーズン半在籍した。その後、2019年から3シーズン在籍した北海道コンサドーレ札幌、昨年から所属する横浜FMと合わせて、3つのJクラブでプレーしてきた。

 今でこそ日本の環境にも慣れ、本領を発揮するブラジル人ストライカーだが、加入1年目は半年のプレーながらゴール数(リーグ)はわずか2得点。「言い方は悪いけれども、正直に言うとちょっと舐めていた部分があったんだ」と正直に明かしたA・ロペスは、レベルの高さに戸惑いを覚え、ついには腹を括った。

「Jリーグでは常にベストコンディションで準備しないと戦えないリーグだと、そこで初めて気づかされた。ブラジルから来たからプライドが邪魔することももちろんあった。でも、活躍するために割り切ったよ。ブラジルのサッカーを忘れて日本のサッカーにしっかり集中することが大事だと」

 ピッチ上では、日本人プレーヤーの技術レベルにも衝撃を受けたという。1つのショートパスやロングパス、止める・蹴るといった基本技術が正確である選手は、王国ブラジルでもそこまで多いわけではない。だからこそ、自在にボールを操る日本人選手の多さに驚いたという。そこで「印象に残っている選手は?」と質問をぶつけてみると、三笘薫(ブライトン)を挙げ、こう続けた。

「この選手は違うなって思ったね。実際に対戦してみてとても印象的だった。三笘選手はチームの規律を守ったうえで、個のプレーで違いを生む。ドリブルだったり、1対1の局面での仕掛けだったり、スプリントだったり、フィニッシュも凄い。日本人選手なんだけれども、これまでのなかで一番、ブラジル選手の匂いを感じた選手だ」

アジア3か国での経験を経て、肌で感じるJリーグの魅力

 Jリーグでは3クラブを渡り歩き、日本ではトータル5年半プレーしているA・ロペス。一方で、2018年には韓国KリーグのFCソウル、21年には中国スーパーリーグの武漢足球倶楽部に、それぞれ1シーズン在籍した。3か国それぞれで国としての文化や環境が異なるなかで、ブラジル出身選手として感じた違いは何だったのか。印象的だったのは、トレーニングへの取り組み方だったという。

「例えば韓国でプレーしていた当時、試合に負けた翌日の練習ではグラウンドを走ってから、ボールを使ったメニューをしていたんです。ただそれだと足が重たくて、個人的にはトレーニングの質が下がる印象を受けたんだ。その点、日本だと練習のクオリティーが非常に良くて、効果的なトレーニングができる環境だと感じている。次の試合に向けた準備がしっかりしているからね。練習の質という点では、日本は本当に素晴らしいと思うし、3か国ではトップだ。

 それに、日本の選手たちは献身的に練習に取り組んでいて、集中力を切らさずちゃんと向き合う。その姿勢は言うことないよ。真面目に練習に向かうところでは、韓国の選手たちにも同じような印象を受けたね。それに比べると中国の選手たちは練習への取り組み方への物足りなさが感じられた。そのあたりはサッカーのレベルや歴史、それから国としての文化的側面が関係しているのかもしれない」

 アジア3か国での経験を踏まえ、改めてJリーグの魅力を問うと「リーグレベルが高くて、どのチームが優勝するか最後まで分からないところには愛着を持っているよ」とにこやかに答えたA・ロペス。今季リーグ戦でゴールを量産するブラジル人助っ人は、「未知なる国」だった日本の地で今まさに、充実のキャリアを迎えている。

[プロフィール]
アンデルソン・ロペス/1993年9月15日生まれ、ブラジル出身。アヴァイFC(ブラジル)-CNマルシリオ・ジアス(ブラジル)-アヴァイFC(ブラジル)-アトレチコ・パラナエンセ(ブラジル)-広島-FCソウル(韓国)-札幌 -武漢足球倶楽部(中国)-横浜FM。強さと高さを兼ね備えたJリーグ屈指の左利きストライカー。決定力抜群の正確な左足シュートや懐の深さでも違いを見せつける。

(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)



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