「すべてを引き出してくれる」 J2首位・町田、多種多様の境遇の選手たちが輝けている理由
8月12日には磐田との首位攻防戦に2-1で勝利
FC町田ゼルビアは8月12日、首位攻防戦となるジュビロ磐田とのホームゲームで2-1と勝利し、1試合消化が少ない状況で、2位の磐田との勝ち点差を「9」に広げた。
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右サイドバックのDF鈴木準弥は2つのPKにつながる起点となるなど攻撃面で貢献しつつ、守備では磐田のキーマンであるMF古川陽介を阻止。最後は左サイドバックからポジションを上げたDF松原后にロングボールを競られて、FW後藤啓介の折り返しを見事なボレーで決められたが、2つのPKを獲得したFW藤尾翔太とともに、2-1の勝利の立役者となった。
その鈴木は今年7月にJ1のFC東京から完全移籍で加入してきたが、セレッソ大阪から育成型期限付き移籍の藤尾や川崎フロンターレから同じく育成型で加入したMF松井蓮之、サガン鳥栖から期限付き移籍で来ているFW荒木駿太など、たしかにFWエリキのようなJ2で規格外と言われる大型補強もあるが、いろんな境遇の選手が町田に集まって、戦術的なタスクをこなしながらも個人がこれまで以上に輝く。まるで水滸伝の梁山泊(りょうざんぱく)のようなチームができ上がっている。
鈴木はその理由を、「それは本当に黒田(剛)さんや(金)明輝(ヘッドコーチ)さんがしっかり示してくれるというか。もちろん選手もそうですけど、監督はじめスタッフが町田のやるサッカー、チームの目標はここなんだというのを示し続けてくれてる」と説明する。
「レンタルだったり、自分みたいにJ1から降りてきたり、いろんな境遇の選手がいて。それでも、みんな同じ方向で戦えていることが、チームとしてもそうだし、結局チームとしてやることが共有できている。勢いがある時は11人も個人個人がのびのびできるので、それが今の町田なのかなと」
――みんなポテンシャルがあるから、鈴木選手もFC東京に行ったり、松井選手も大卒で川崎に行ったりして。だけど、そこでなかなか出番がなかったり、出番をものにできなくて、ここに来て。だけど町田でこうやって、チームとして勝つだけでなく、個人の成長を見せているというのはJ1を取材することが多い1人としても、ちょっと感動しています。
「そうですね。もちろんいろんな決まり事はある中でも、なんか選手が持ってるものを内から引き出してくれる。俺で言ったら1年半ぐらいあんまり出せずに悶々としているものとか、そういった部分をすべて引き出してくれるというのはチームの雰囲気としてあるので。そこを変に出しすぎたら浮く感じでもなく、みんな同じ強いテンションでやらせてもらえているので。それはすごくいいかなと思います」
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。