なでしこ植木理子、涙の一撃と噛みしめる4年分の喜び 無念のW杯から飛躍「本当に頑張って良かったなって」【コラム】

スペイン戦でゴールを決めた植木理子【写真:早草紀子】
スペイン戦でゴールを決めた植木理子【写真:早草紀子】

怪我でチームを離れた前回W杯から4年、グループリーグで2ゴールの活躍

 女子ワールドカップ(W杯)グループリーグ第3戦スペイン戦前日に誕生日を迎えた植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は自らの右足でバースデーゴールを決めた。4年分の想いの詰まったゴールだった。

「4年前はここに立てなくて悔しい想いをしたのが、今年はこんな素敵な場所で素敵な仲間が同じ方向を向いてプレーできる。本当にこの4年間頑張って良かったなって改めて感じたので、それを噛みしめる試合になりました」(植木)

植木理子は代表で活動できることの充実感を口にする【写真:早草紀子】
植木理子は代表で活動できることの充実感を口にする【写真:早草紀子】

 前回のフランス大会では現地入りしながらも、怪我のため開幕戦直前にチームを離れた。悔しくて夜中に目が覚め、涙を止められない時期もあった。当時まだ19歳、寄せられた期待と、それに応えられない無念に押しつぶされそうだった。

 そこから4年、植木がW杯の舞台に立った。初戦のザンビア戦(5-0)では一度PKを外し、嫌なムードのなか幸運にも蹴り直しの判定。再びのチャンスを決めた植木の目には安堵の涙が光っていた。

 優勝候補の一角である7月31日のスペイン戦、植木は初スタメン。前半29分、宮澤ひなた(マイナビ仙台レディース)からのパスを受けた植木は落ち着いてDFを1枚かわすと、右足を振り抜いた。相手DFが懸命に伸ばした足に当たってコースが変わり、ゴール左隅へ吸い込まれていく。こんな形も植木らしい。華麗なゴールではなく、泥臭い得点を好むゴールゲッターは、迷うことなくベンチへ駆け出して行った。

スペイン戦を終えてファンとの写真撮影に応じる植木理子【写真:早草紀子】
スペイン戦を終えてファンとの写真撮影に応じる植木理子【写真:早草紀子】

 スペインはアンダー世代でも対決してきた相手。同世代の選手たちが、A代表にすぐさま招集され、世界基準へと母国を押し上げていく様子を見せつけられてきた。下馬評でもスペイン有利が伝えられるなかでの4-0快勝に、「今日は(日本が)世界に離されていないと証明できた」と植木は胸を張った。

 グループリーグの3試合で日本は計11ゴールをマーク。そのうち3トップに入った選手が10ゴールを叩き出している。日替わりでヒロインが生まれるのも頼もしい限りだ。決定力不足が嘆かれていた大会前からは想像ができないほどの決定力で流れを生じさせてきた。徹底した堅守速攻が効いている証拠だ。

 しかしここからはノックアウトステージ。対戦相手のプレー強度も上がれば、分析能力も長けてくる。攻撃陣が好調な分、植木をはじめ、前線3枚には厳しいマークが付くことも予想されるが、そこを剥がしてゴールを決めてこそだ。

 決勝トーナメント一発目、ラウンド16の相手はグループリーグで苦しんだノルウェーだ。駆け込みで上がってきたことで、エンジンがかかり出した頃だ。どの国もギアアップするここから、“世界”との本当の戦いが始まる。

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早草紀子

はやくさ・のりこ/兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサポーターズマガジンでサッカーを撮り始め、1994年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿。96年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルフォトグラファーとなり、女子サッカー報道の先駆者として執筆など幅広く活動する。2005年からは大宮アルディージャのオフィシャルフォトグラファーも務めている。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。

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