「長くいることは考えていなかった」 6か月のレンタルからスタート…柏FWドウグラスが10年以上を日本で過ごす理由【インタビュー】
最初は日本で不便を感じた「言語は大きな壁」
Jリーグの歴史を語るうえで、外国籍選手の存在は欠かせない。プレーヤーとしての実力はもちろんのこと、日本の生活や文化に馴染もうと努め、活躍につなげた例は多い。「FOOTBALL ZONE」では、「外国籍選手×日本文化」の特集を組むなかで、10年以上の月日を日本で過ごしたレアなブラジル人選手のJ1柏レイソルFWドウグラスに話を訊いた。Jリーグ通算250試合以上に出場し、90を超えるゴールを挙げてきたストライカーは、日本という国にどんな印象を持っているのだろうか。(取材・文=河合拓/全3回の1回目)
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「日本というのは、私にとって第2の故郷です」と言うドウグラスだが、2010年に徳島ヴォルティスに加入した際は、「当初は6か月のレンタル移籍でしたし、ブラジルから出てプレーするのも初めてだったので、日本に長くいることは考えていませんでした。レンタル期間が終わり、もう1年契約しようというオファーをもらった時、初めて考えが変わりました」と、振り返った。
6か月という期間を日本で暮らしてみて、日本のことが気に入ったのかというと、実はそうではなかったという。
「やはり言語は大きな壁でした。また、免許がなくて自分で運転できないこともストレスになりましたね。徳島はとてもいい街だったんですが、どこかに移動するためには車がないと不便な街です。せっかくオフがあっても、自分1人では気晴らしに行くこともできないので、人に頼らなければいけませんでした」
私生活のことだけを考えれば、ドウグラスの日本挑戦は半年で終わってもおかしくはなかった。しかし、サッカー選手として、「この国で成功したい。自分のキャリアをここで開花させるんだ」という強い意志を妻に伝え、日本での挑戦を続けることにしたという。
サッカーについても、戸惑うことはあった。
「ブラジルのサッカーと単純に比較してみた時、スピードやリズムがどうしても違います。テンポが非常に速く、戦術的なところでもFWにも守備の部分がすごく求められました。もちろんブラジルでもFWに守備が求められることはありますが、日本ほどではありません」
そして、サッカー選手としてのドウグラスが日本で形成されていった。
「周囲と連係して、連動して守備をする。そしてボールを奪ったあとに、素早く相手のスペースを突く動き出しというのは、日本に来て新しく学んだことが多かったですね。それが結果的に自分のプレーのオプションを増やすことにつながったので、今となっては本当に感謝していますし、やってきて良かったと思います」
ドウグラスが見る日本サッカーの未来は「正しい方向に進んでいる」
「日本のサッカー界はこの12年間で大きく変わった」と、ドウグラスは見解を語る。
「まだまだ成長過程にあると思いますが、ワールドカップ(W杯)をはじめとする国際大会でも日本代表は結果を出しています。非常にクオリティーの高い選手が、どの世代にもいますし、ヨーロッパの主要リーグには必ずといっていいほど、日本人選手がいる時代になりました。Jリーグのレベルも非常に高く、ここで成功する選手は、世界中どのリーグでも活躍できるレベルになってきていると思います」
では、日本のサッカーがさらに成長するためには、何が必要だとドウグラスは考えているのか。「その質問は答えるのが難しい」と前置きし、「自分の立場で言えるのは、今の日本のサッカーが正しい方向に進んでいること。W杯などで結果を残せているのは、日本人特有の規律やプレーモデル、アイデアがあり、さらに組織として落とし込んでいる。サッカーはどれだけクオリティーの高い選手が揃っていても、結果を出し続けることは難しい競技です。そういう意味でも日本のサッカーは成長過程にあると思いますし、この先の取り組みも考え方を変えずに進めば、間違いなくより高みを目指して戦えると思います」と、継続が重要だという考えを示した。
[プロフィール]
ドウグラス/1987年12月30日生まれ、ブラジル出身。2006年に地元マラニョン州を本拠地とするモト・クルブ・ジ・サン・ルイスでプロキャリアをスタートさせた。ブラジルでクラブを渡り歩いて10年に徳島ヴォルティスへ加入。13年にはJ2で29試合12得点の活躍でチームのJ1昇格へ貢献した。14年途中に京都サンガF.C.へ移籍し、15年にサンフレッチェ広島へ。広島では33試合21ゴールを挙げて、得点王争いを演じた。優勝に貢献後、UAEやトルコでプレー。18年に日本へ復帰し、清水エスパルス、ヴィッセル神戸を経て21年から柏でプレーしている。15年にはJリーグベストイレブンに選出された。
(河合 拓 / Taku Kawai)