26年北中米W杯メンバー入りへ 磐田18歳FW後藤啓介が描く「20歳で海外。残り1年でスパート」の青写真【インタビュー】

磐田で活躍する後藤啓介【写真:Getty Images】
磐田で活躍する後藤啓介【写真:Getty Images】

大型FWとして期待も「自分のゴールにはこだわっていない」理由は?

 令和5年度全国高校サッカーインターハイ(総体)は今夏、北海道で熱戦が繰り広げられる。「FOOTBALL ZONE」では高校サッカー特集を展開するなかで、ジュビロ磐田U-18で育ち、高校2年生にしてトップチームに昇格したFW後藤啓介に、Jリーグの下部組織でプレーするメリットや海外挑戦の野望について訊いた。(取材・文=河合 拓/全2回の2回目)

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 現在J2リーグで2位の磐田に所属する後藤は、今シーズンの開幕前に磐田U-18からトップチームに昇格したばかりだ。開幕節のファジアーノ岡山戦(2-3)に途中出場すると、いきなり2ゴールを挙げて注目を集めた。

 ヨーロッパでは、大活躍を見せるイングランド1部ブライトンの日本代表MF三笘薫やスコットランド1部セルティックの日本代表MF旗手怜央が、大学卒業後にプロになっており、まだプロとしてのキャリアが短いことが話題となった。その意味では、中学年代から磐田のトップチームの練習にも参加し、17歳(当時)でプロ契約をした後藤は、ヨーロッパスタンダードの選手と言える。

 今季ここまでチーム3位タイの5ゴールを挙げている後藤は、昨シーズンまで所属していた磐田U-18では、ストライカーだけではなくボランチとしてもプレーしていた。「今はこれだけトップチームで出させてもらっていますし、やれないことはないと思っています」と話すが、1年前はまだプロサッカー選手として、どのポジションで勝負していくか、決まっていなかったのだ。

 そうした背景もあるからだろう。10ゴール以上に絡むことを目標に掲げ、開幕戦の2ゴールで話題をさらいながらも、後藤は「そこまで自分のゴールにはこだわっていない」と、エゴイスティックなストライカーからは遠いところにいる。実際にプレーを見れば、ゴールを目指す動きだけではなく、最前線からチームのために行うチェイシングをはじめ、ボランチとして培われたボール奪取力など、多くの場面でチームに貢献していることが見て取れる。

 J2に舞台を移して約半年の後藤は、「FWとしてすべての能力を高めたい。ゴールだったり、ポストプレーだったり、ゴール前の迫力やアクション。DFと駆け引きをしたり、つなぎが上手くいっていない時は起点になっていかないといけないと思っています。J2で圧倒的な力を示せないと、J1に行っても通用しないし、海外に行ってもできないと思うので、もっと圧倒的な存在感を出していきたいです」と、成長を誓った。

 育成年代でJリーグの下部組織でプレーするメリットの1つに、「トップチームの練習を間近で見られること」を挙げていた後藤は、今も多くの選手たちのプレーを参考にし、万能ストライカーになることを目標に掲げる。

「ゴール前での動き出しは、古橋亨梧選手ですね。(身長170センチと)小さいけれど点を取れていますし、死角から動き出してアクションを起こしていますし、ゴール前の嗅覚やセンスは凄いなと思います。ポストプレーやいるだけで相手が怖くなるような迫力の部分で言えば、(ノルウェー代表FWアーリング・ブラウト・)ハーランド選手や(ポーランド代表FWロベルト・)レバンドフスキ選手を参考にしています」

磐田からシュツットガルトへ羽ばたき、W杯メンバー入りした伊藤洋輝をイメージ

 すでに海外のクラブからの関心も伝えられているが、後藤自身はどのようなキャリア形成を考えているのか。「20歳までに海外に行く」と即答すると、自身が歩もうとする道を先に行く先輩がいることを明かした。ドイツ1部シュツットガルトに所属する日本代表DF伊藤洋輝だ。

 6月に開催されたU-20ワールドカップ(W杯)出場は叶わなかったが、「直近で言えば2024年にはパリ五輪もありますし、僕が21歳の時には北中米W杯もあります。そこも狙っていきたい。W杯は4年に一度しかない大会。W杯が終わってから次の1年間で活躍ができたとしても、直前の1年で活躍ができなかったら意味がありません。20歳で海外に行って、残り1年でスパートをかける。そこで注目されて、結果を残すことができれば、伊藤洋輝選手のようにA代表にも入れると思うので、そういうイメージです」と、現在の描いているプランを明かした。

 実際に伊藤のキャリアを振り返ると、2021年7月にシュツットガルトへ期限付き移籍し、その約1年後となる22年5月にA代表に初招集。日本代表に定着すると、同年11月に開幕したカタールW杯に出場してチームのベスト16進出に貢献した。

 海外移籍を実現させるためにも、FWが自分の存在をアピールするためにも、最も手っ取り早く、重要なのはゴール数だろう。だが、後藤は「10ゴールは取りたいですけど、自分が10点取るよりもスクールの時からお世話になっているこのクラブがJ1に昇格するほうが大事なので。別に点で貢献できなくても、守備の部分で走って戻ったりすることもそうですし、準備の部分で助けることも貢献だと思うので、いろんな部分で貢献できるような選手になりたいと思います」と、クラブへの強い愛着を見せた。

 昨季J2に降格した磐田は、今シーズン、カタールW杯まで日本代表のコーチを務めていた横内昭展監督が率いている。「これまで自分がやってきた監督の中で、一番話しやすいですし、個人の感覚ですけど……近所のおじちゃんみたいな感覚です(笑)。それくらいフラットに話せて、意見も聞いてくれるし、言ってくれます」と、前日本代表の参謀とも、いいコミュニケーションが取れていることを窺わせた。

 ここまで横内監督から受けたアドバイスの中で、特に印象深かったのは「調子が悪くても、コンディションが上がっていなくても、やり続けないと上にはいけない」というものだったという。

 自身の進む道をしっかりと見据えている18歳のキャリアは、まだまだ始まったばかりだ。

[プロフィール]
後藤啓介(ごとう・けいすけ)/2005年6月3日生まれ、静岡県出身。カワイ体育教室SC―磐田U-15―磐田U-18―磐田。J2通算21試合5得点。高さやポストワークに加え、裏への動き出しも得意とする身長191センチの大型FWで、ポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキ(FCバルセロナ)を目標とする。今年、高校2年生(当時)ながらトップチームに昇格し、2月18日のJ2リーグ第1節ファジアーノ岡山戦でJデビュー&クラブ最年少得点記録を更新と鮮烈な活躍を見せた。

(河合 拓 / Taku Kawai)



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