なでしこ猶本光、悔しさを乗り越えた“努力の塊” 女子W杯初出場でベンチを沸かせる大活躍…チームで担う重要な役回り【コラム】

なでしこジャパンの猶本光【写真:早草紀子】
なでしこジャパンの猶本光【写真:早草紀子】

コスタリカ戦でW杯初出場・初スタメン・初ゴールの猶本、平常心で迎えた一戦

 29歳でのワールドカップ(W杯)初出場。猶本光(三菱重工浦和レッズレディース)のW杯初スタメン初ゴール(第2戦コスタリカ戦/2-0)はGKの左手を打ち抜く無回転の豪快なシュートだった。

「あまり入り込みすぎないようにタメて……しっかり正確に蹴れるように」(猶本)放ったシュートは、この試合の流れを決める重要な先制弾となった。

 猶本も2011年のなでしこジャパン(日本女子代表)W杯優勝に多大な影響を受けた1人。そこからここまでなでしこジャパンに縁がなかったわけではない。澤穂希さんや宮間あやさんとともに戦った経験もあれば、東京五輪を視野に入れた高倉麻子監督下のチームにおいてもチャンスはあったが、それを掴み取ることができなかった。その悔しさを身体作りや体幹、瞬発力、シュートなど、ストイックにスキルアップに励んできたまさに努力の塊だ。

好調を維持してワールドカップで活躍【写真:早草紀子】
好調を維持してワールドカップで活躍【写真:早草紀子】

 今大会は、日本女子サッカープロリーグ「WEリーグ」で優勝を決めた流れを受けて、自身のコンディションも好調なままに臨めている。選手たちが口を揃えて表現する“緩い”ピッチも大好物。24歳の時に移籍したSCフライブルグ(ドイツ)と似ていると、南半球の寒さや匂いまでも歓迎している。

 W杯メンバー発表時にはこれまでの苦悩がよみがえり、涙が込み上げてきた猶本だったが、大会直前から気持ちを上げすぎず、下げすぎず、平常心でこの日を迎えることができていた。

チームのつなぎどころとして重要な立ち位置に【写真:早草紀子】
チームのつなぎどころとして重要な立ち位置に【写真:早草紀子】

キャプテン熊谷紗希の下の世代、チームのつなぎどころとして重要な立ち位置

 最年少の浜野まいか(ハンマルビーIF)が練習中に左肩を激しく痛めるとすぐさま駆け寄って声をかける。チームメイトの石川璃音が初戦ザンビア戦(5-0)のスタメンを張ると、「なんかあったら叫べばいいから(笑)」と背中を押す。キャプテンの熊谷紗希(ASローマ)のすぐ下はもう猶本たちの世代だ。初のW杯といえど、このチームのつなぎどころとしても重要な立ち位置にいる。

 第2戦のコスタリカ戦では猶本に続き、林穂之香(ウェストハム・ユナイテッド)、杉田妃和(ポートランド・ソーンズFC)らが新たに名を連ねた左サイドがゲームの鍵を握っていた。

 逆サイドは清水梨紗(ウェストハム・ユナイテッド)、藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)と強力なタッグがそのまま起用されており、攻守においても同等の強度がなければバランスが崩れてしまう。なでしこジャパンは上位進出を狙える選手層が備わっているのか否か、コスタリカとの一戦は見極めの要素が詰め込まれていた。

 結果として、猶本からゴールが生まれ、杉田、林が関わるビルドアップも有効性を示して見せた。

グループリーグ1位通過を懸けた第3戦のスペイン戦に挑む【写真:早草紀子】
グループリーグ1位通過を懸けた第3戦のスペイン戦に挑む【写真:早草紀子】

猶本の活躍は出番を待つ選手たちへの大きな励み

 他グループではジャイアントキリングがさかんに行われ、常勝チームが苦戦を強いられるなどの波乱が見られる今大会のなかで、日本が2連勝で決勝トーナメント進出を決めることができたのは、猶本らをはじめとする“あとから出る選手”たちの奮闘があってこそ。猶本の先制弾はピッチ上の歓喜を上回るほどベンチを沸かせたことからも見て取れるように、出番を待つ選手たちへの大きな励みとなるものだった。

「まだワールドカップは続くし、(このゴールに)あまりそこまで浸らないように次に向けて準備します」

 W杯初ゴール後に、猶本はすぐさまこのコメント。渾身のガッツポーズで周りと喜びを爆発させていた彼女の視線は、すでにグループリーグ1位通過を懸けた第3戦のスペイン戦(7月31日)へ注がれていた。

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早草紀子

はやくさ・のりこ/兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサポーターズマガジンでサッカーを撮り始め、1994年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿。96年から日本女子サッカーリーグのオフィシャルフォトグラファーとなり、女子サッカー報道の先駆者として執筆など幅広く活動する。2005年からは大宮アルディージャのオフィシャルフォトグラファーも務めている。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。

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