「NEXT欧州組候補」タレント6選/東京五輪世代編 海外“即挑戦”すべき選手は?…有能Jリーガーを厳選【コラム】
東京五輪世代の中から欧州挑戦をしたら興味深いタレントを6人厳選
近年Jリーグから欧州クラブへ活躍の場を求める日本人タレントはあとを絶たず、国内にはその“予備軍”が控える。「FOOTBALL ZONE」ではその顔ぶれを今一度おさらいすべく「NEXT欧州組」特集を展開する。このコラムでは東京五輪世代の人材をピックアップ。多くの有力選手がいるなかで、筆者の目線で欧州挑戦をしたら興味深いタレントをそれぞれ【即戦力】と【成長中】で選定する。ひと括りに東京五輪世代と言っても、1997年生まれから2000年までいるので、基本的に【即戦力】は97年生まれ以降ならすべて対象にしているが【成長中】は年齢も考慮した。
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【即戦力】
■藤井陽也(DF/名古屋グランパス)
2000年12月26日生まれ(22歳)
オフ・ザ・ピッチを含む環境適応は未知数だが、長谷川健太監督の率いる名古屋で抜群の存在感を見せている。本人も笑いながら自虐で語るとおり、12月26日生まれなので、1週間遅く生まれていたらパリ五輪世代だったが、そうしたハードラックも糧にして行きそうだ。フィジカル面が向上しており、外国人FWとのバトルも難なくこなしている。
近年、冨安健洋(アーセナル)をはじめ板倉滉(ボルシアMG)、町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)、瀬古歩夢(グラスホッパー)、渡辺剛(ヘント)と日本人センターバックが欧州で定着、あるいはステップアップするケースが続いており、十分に加わっていけるタレントだ。言い換えれば、そうなって行かないと日本代表に定着することは難しい。
■伊藤敦樹(MF/浦和レッズ)
1998年8月11日生まれ(24歳)
前回の日本代表に追加招集されて大きな刺激を受けたようだ。浦和のマチェイ・スコルジャ監督はこの半年で伊藤のプレー強度が上がったことを評価するが、代表活動に参加してみて、日々のトレーニングからすべての意識を引き上げて行く必要があると感じたようだ。
それでもJリーグの中盤では局面の強さ、トランジションでの機動力などは高く、技術面も悪くない。ゲームコントロールや崩しの起点になるアイデア、いざ攻め上がった時の決定力、ラストパスを呼び込むパーソナリティーなど、課題はたくさんあるが、ほかの日本人MFにはないスケール感ありきの前向きな課題だ。8月には25歳となる伊藤。然るべきオファーがあれば挑戦に歯止めをかける必要はないが、浦和の場合はACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)もCWC(クラブワールドカップ)もあり、何より良い監督が付いているので、今焦る必要もないか。
■岩崎悠人(FW/サガン鳥栖)
1998年6月11日生まれ(25歳)
サイドを切り裂くスピードと上下動を繰り返せる機動力はJリーグ屈指だ。東京五輪世代でも期待されたタレントの1人だったが、プロ入りしてからは行く先々で壁に当たり、鳥栖でようやく花開いた。在籍3年目となり、何よりチームの中心として引っ張っていく意識が強まっているのは頼もしい。
両ウイングバックやサイドバックもこなせるが、現在は左のサイドハーフに定着。欲を言えばもっとアシストやゴールという目に見える結果は欲しいが、チャンスを作り出す能力は特筆に値する。ボールに絡むプレーはシンプルだが、ポジショニングは川井健太監督の下で多くを学んでおり、戦術的な適応力も問題ないだろう。
鹿島の中盤で存在感放つ佐野、代表とは無縁も成長後の姿は見もの
【成長中】
■佐野海舟(MF/鹿島アントラーズ)
2000年12月30日(22歳)
J2のFC町田ゼルビア時代から見せていた中盤でボールを回収する能力はもちろん、鹿島では正確なファーストパスに磨きをかけることで、スペシャリティーの特性を引き上げている。開幕時は4-3-3のアンカーを担ったが、怪我で離れている間に、チームの主戦システムは4-4-2に。しかし、すんなりフィットしてディエゴ・ピトゥカとともに攻守の舵取りを担っている。
名古屋の藤井と同じ2000年12月生まれで、今年U-20ワールドカップに出場した弟の佐野航大(ファジアーノ岡山)と違い、代表とは無縁のキャリアを送ってきた。しかし、岩政大樹監督は近い将来の代表候補として太鼓判を押す。本人は特に海外志向を口にしておらず、鹿島でやるべきことはまだまだある。ただ、ポルトガル1部サンタ・クララからベルギー1部ルーベンに移籍が決まった三竿健斗もそうであったように、成長した先にどういう決断をして行くかは本人次第だ。
■中村桐耶(DF/北海道コンサドーレ札幌)
2000年7月23日(22歳)
東京五輪世代のタレントが多い札幌においても個人能力のポテンシャルは一番だ。特に、相手に裏返されてもリカバリーで追い付いてしまう反転スピードはJリーグだと、かなり目立つ。アカデミー育ちだが、高校2年の夏までFWだったこともあり、センターバックとしては成長途上にある。もともとアタッカーだけに、ボールを奪ったあとの前向きなプレーは迫力がある。
最近はボランチ起用も増えているが、これは札幌の3-4-2-1で2トップの相手にもオールコート・マンツーマンを成立させる意味合いが大きい。守備時には4バックのようになることも多いが、それでも中盤での経験は中村をさらに成長させる要素になっている。年齢的には海外挑戦も決して早くはないが、札幌で継続的に試合に出るようになって間もなく、成長の余地は大いにある。ただ、順調に行けば遠からず、進むべき道の決断を迫られるはずだ。
■森 海渡(FW/徳島ヴォルティス)
2000年6月7日(23歳)
名は体を表すと言うが、筑波大学から1年前倒しで、アカデミーに所属していた柏レイソルに加入した理由に海外挑戦を挙げていた。プレミアリーグで活躍する三笘薫(ブライトン)の後輩でもある。右足のシュート力に絶対の自信を持っており185センチのサイズに加えてスピードもある。
柏に在籍していた昨年はリーグで4得点を決めたが、出場機会と成長の環境を求めてJ2徳島に期限付き移籍。開幕戦でスタメン起用されて以降はしばらく苦しんだが、ここで腐ったら徳島に来た意味がないと奮起し、第10節のV・ファーレン長崎戦からスタメンに定着。チームの象徴である柿谷曜一朗との2トップは猛威をふるい、ここまで9得点を記録している。しかし徳島は出遅れが響いて現在18位。プレーオフ圏内の6位から勝ち点14差となっており、奇跡的な昇格には大型FWのさらなる爆発が必要だ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。