【月間表彰】良さが出た驚愕スーパーゴールも慢心なし 広島・川村拓夢が求める“決めきる力”

相手DFを巧みに抜き去り、得意の左足でゴール左隅へシュートを決めた川村拓夢(中央)【写真:(C) 2023 S.FC】
相手DFを巧みに抜き去り、得意の左足でゴール左隅へシュートを決めた川村拓夢(中央)【写真:(C) 2023 S.FC】

6月4日の京都戦で試合を決めた会心ゴールで月間ベストゴール受賞

 Jリーグでは今季も全得点を対象に「明治安田生命J1リーグ KONAMI 月間ベストゴール」を選出し、表彰している。スポーツチャンネル「DAZN」とパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」の連動企画として、「FOOTBALL ZONE」では毎月、ベストゴールに輝いた受賞者のインタビューを実施。6月度の月間ベストゴールに選出されたのは、サンフレッチェ広島のMF川村拓夢選手が6月4日の第16節・京都サンガF.C.戦の後半48分に決めた50メートル独走弾だ。相手DFをかわし、得意の左足で決めた今季3点目のゴールを振り返る。(文=石川遼)

 ◇ ◇ ◇

 6月4日に行われた京都戦の後半アディショナルタイム3分だった。広島のMF川村拓夢はドリブルで50メートルの距離を独走し、スタジアムを沸かせる会心のゴールを決めてみせた。

 自陣のセンターサークル付近でこぼれ球に反応し、相手選手の前に身体を入れる。そのままの勢いでドリブルを開始すると、1人、2人とDFを抜き去り、さらに大きく空いた前方のスペースへボールを蹴り出す。一気に加速した川村を止められるDFはもう残っていなかった。最後はGKの動きを冷静に見極め、得意の左足でシュートをゴールの左隅へと流し込んだ。

 このゴールは6月度のJ1月間ベストゴールに選ばれた。川村にとっては、昨季のJ1第28節清水エスパルス戦で決めた60メートルの超ロングシュートに続き、自身2度目の受賞となる(このゴールは2022シーズンの年間ベストゴールにも選出された)。23歳のMFは「あそこで踏ん張れるというか、頑張れるのが僕の良さ。自分の良さが出たゴールだったと思います」とゴールシーンを回想する。

「2-1の状況で、相手がロングボールを入れてくるのは分かっていたので、まずはセカンドボールを拾うことを意識していました。(ドリブルをして)前を見た時に道があったというか、両センターバックの間にスペースがありました。DFがちょっと疲れているような表情を見せていましたし、時間帯的にも思いきって行きました」

 相手の緩みを見逃さず、積極的な仕掛けによって守備網に穴を開けた。GKと対峙した場面は絶対に決めなければならないチャンスだっただけに「緊張した」というが、「キーパーが僕から見て少し右側にいたので、落ち着いて左のコースに流し込めたと思います」とフィニッシュは冷静だった。

広島の攻撃に欠かせない存在ながら「まだ3点“しか”取れていない」

 川村はJ1第12節のアビスパ福岡戦でも同じように自陣からドリブルでボールを運び、MFエゼキエウとの連係を交えて相手のペナルティーエリアに侵入し、左足の強烈なシュートでゴールネットを揺らしている。川村が持つこの推進力、3列目からのダイナミックな飛び出しは、広島の攻撃に欠かせないエッセンスとなっている。

 川村の攻撃面での貢献度の高さは、これまで以上に大きくなっている。1試合あたりの平均シュート数2.8本(7月14日時点)はリーグ3位。3得点はすでに昨季の数字に肩を並べるものだ。しかし、本人は「まだ3点“しか”取れていない。チャンスの数を考えたら二桁(得点)でもおかしくないと思っています」と、ここまでの成績には悔しさをにじませている。

「今シーズンはチャンスがたくさんある中で、シュートもたくさん打てていますけど、あと一歩のところでクロスバーやポストに当たったり、力んで外してしまう場面が多くあります。ゴールのバリエーションは確かに増えているので、あとは本当に決めきるところだと思っています」

 練習でも積極的にシュート練習に取り組み、精度の改善に励んでいるという川村は、“決めきる力”を身につけてさらなる高みを目指したいと向上心をたぎらせている。

「去年からシュートを打てるポジションにしっかりと入れるようになっていて、今年はその回数も多くなってきましたけど、その中で仕留めきれていない部分があります。そこを仕留めきれるようになればチームとしても、選手としてもさらに上に行けると思うので、そこが僕のこれからの課題です」
 
 開幕からレギュラーポジションを掴み、今年6月には森保一監督率いる日本代表にも初招集されるなど飛躍のシーズンを過ごす川村だが、現状で満足してしまうような慢心は一切ない。広島でのリーグ制覇を夢と語る生え抜きMFは、これからもチームのために走り続ける。

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