サッカー界から大谷翔平を生み出すには? 杉本龍勇氏が提言「体を大きく動かさない限り…」【独占インタビュー】

メジャーで活躍する大谷翔平【写真:Getty Images】
メジャーで活躍する大谷翔平【写真:Getty Images】

吉田や堂安らを指導する杉本龍勇氏が大谷翔平投手の“走り”に言及

 森保一監督率いる日本代表は6月シリーズで2連勝した。「4-1-4-1」の布陣をテストし、新たな攻撃のオプションを発揮。そのなかで、「FOOTBALL ZONE」では森保ジャパン第2次政権でもキーワードになる「スピード」に注目した特集を展開する。現役代表選手である新10番MF堂安律や最終ラインの主軸DF板倉滉、レジェンドDF吉田麻也やFW岡崎慎司らを指導してきた元陸上選手でフィジカルコーチなどを務める杉本龍勇氏が、日本サッカー界が目指すべき姿を展望した。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞/全3回の3回目)

【PR】ABEMA de DAZN、明治安田J1リーグの試合を毎節2試合無料生中継!

   ◇   ◇   ◇

「日本のサッカー選手も、彼から学べるところたくさんあると思います」

 そう話す「彼」とは、MLBロサンゼルス・エンゼルスに所属する大谷翔平投手。大谷の凄さは言わずもがなだが、スピードについて自身はバルセロナ五輪出場経験がある杉本氏はこう分析する。

「走るのはもっと速くなれると思いますけど、何がいいのかというと、ベースランニングでスライディングした後に減速しないというのはすごいこと。だから三塁打が多い。例えば、陸上だと走る幅跳びなら、踏み切り動作で減速せずに踏み切って、砂場に着地するまで減速しない選手が遠くに飛べる。それができない選手は踏み切った後に空中で減速していく。大谷くんの凄いところは、ベースに向かって減速しないでむしろスピードが上がっていくところ。フォームはまだ改良する余地はあるけど、体が動いている、お尻もすごく動いている。日本のサッカー選手も、彼から学べるところはたくさんあると思います」

 大谷のお尻、足の動かし方について「どうしたらいいのか探っていかないといけない」と話す杉本氏。日本のサッカー界、なかなか他業種、他種目との交流や意見交換なども少ない。今はフィジカル強化の意識が高い選手も多いなかで、個人トレーナーをつける選手も増えているが、「いいというものはどんどん取り入れるぐらいのダイバーシティな感覚がなきゃいけないと思う。例えば今のペップ(マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督)のサッカーは基本的バスケットボール。ラグビーのエディージョーンズは、サポートのり方をサッカーから学んだ。ハングリーさを持つといいと思う」と、ほかにも目を向けるべきだと提言する。

 では、現在だけではなく未来はどうか。今、幼き子たち、親がやっておくべきことについて、再び大谷を引き合いに出しながら語った。

「幼少期にやった方がいいのはたくさんジャンプするということと、スキップはちゃんとやっておいた方がいいと思う。あと大事なのは力むこと。力が出せないといけない。日本で野球の競技人口が減っていると言われていても、大谷翔平選手クラス、佐々木朗希選手(千葉ロッテマリーンズ)、村上宗隆選手(東京ヤクルトスワローズ)みたいなスケールの大きい選手が頻繁に出てくるかというと、全力で素振りして、全力で投げるから。体を大きく動かさない限りは、大きい素振りや遠投ができない。サッカーは(幼いころ)技術、技術といって小さくまとまってやっている。それだとスケールは大きくならない」

「例えば部活動、量が多すぎると負荷が高くなりすぎる。30mダッシュ100本なんて本当はできない。陸上選手なら、本当の30mを全力でやったら7、8本で限界がくる。運動能力を向上させるためには全力を出さないといけない。(ヴィッセル)神戸にいた(アンドレス・)イニエスタや(ダビド・)ビジャは練習から全力だった。日本人はトレーニング量が過多で、生命維持のためでもあるけど、無意識に手を抜く。9割ぐらいで一生懸命やったと思ってしまう。 だから、力を入れることというのは大事なことです」

 世界的なスーパースターに共通している「全力」。日本人選手が欧州に挑戦して、最初に口をそろえるのが「練習の強度の高さ」だ。日々、毎回、毎分、毎秒の瞬間に全力を注ぎ切る。世界と戦ううえで、誰もが大切にしないといけないことだ。

[プロフィール]
杉本龍勇(すぎもと・たつお)/1970年11月25日生まれ、静岡県出身。陸上選手として浜松北高校、法政大学を経て1994年に豊田自動織機製作所陸上部へ入部。全日本総体100m、200mで1位、全日本大学対抗選手権も100m、200mで1位。ドイツ大学選手権でも100m、200m,で1位の成績を残し、アジア選手権大会100mで8位、同大会の4×100mリレーでは2位に輝いた。バルセロナ五輪に出場し、4×100mリレーで6位入賞を果たしている。指導者としては、浜松大の陸上部監督を務めながらサッカー部のフィジカルアドバイザーにも就任。この時にサッカー部の指揮を執っていた長谷川健太監督と出会い、その縁から2005年に清水エスパルスのフィジカルコーチに就任。湘南ベルマーレや大分トリニータでも指導し、岡崎慎司の専属コーチにも就いた。現在は法政大学で教授を務めながら、日本代表選手やJリーガーの指導に当たっている。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)



page 1/1

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング