久保建英は「一皮むけた」 日本代表OBが絶賛…飛躍する22歳の変化とは? 「前までは『怖さ』に欠けていたが…」

久保建英はスタメン出場で1ゴール2アシストの活躍【写真:徳原隆元】
久保建英はスタメン出場で1ゴール2アシストの活躍【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】ゴールへの積極的な姿勢を見せた上田は「好材料の1つ」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は6月15日に豊田スタジアムで国際親善試合を行い、エルサルバドル代表(同75位)に6-0と快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は3選手を名指しで絶賛し、なかでもMF久保建英について「全方位的に脅威を与える」「一皮むけた」と賛辞を送っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 カタール・ワールドカップ(W杯)後、第2次森保ジャパンでの初勝利となったエルサルバドル戦は、文字どおりのゴールラッシュだった。

 金田氏は「選手たちのポテンシャルを最大限に引き出すために、強い相手との勝負を見たかったというのも偽らざる本音」と吐露。その一方、「格上や同格の相手と戦いたいというのは、森保監督やスタッフをはじめ、選手たちも思っているかもしれないが、こればかりは他国の事情や状況も絡んだマッチメイクになるから、一筋縄ではいかない。強豪とやりたいと外野が言うのは簡単だが、マッチメイクが難しいことは重々承知している」と理解を示す。

 エルサルバドル戦ではDF谷口彰悟のゴールを皮切りに、FW上田綺世、久保、MF堂安律の一撃で4-0とリードして前半を折り返すと、後半には途中出場のFW中村敬斗とFW古橋亨梧もネットを揺らして相手を圧倒した。

 金田氏は「開始からわずか数分で相手が1人退場してしまい、しかも序盤で日本が2点リードしている状況。日本からすれば、当たり前のようにいいプレーをして、相手を圧倒し、ゴールも量産しなければいけないというプレッシャーもあったはずだ。そのなかで6ゴールを奪った点は素直に評価していいだろう」と総括。さらに「好材料の1つは上田だ」と名前を挙げ、次のように続ける。

「以前から言い続けているが、本当にポテンシャルが高い。ゴール自体はPKによるものだったが、上田のアグレッシブな守備から生まれたPKだったし、それ以外の局面でも身体を張ったポストプレーをはじめ、ゴールへの意欲を随所に感じさせてくれた。実際にベルギーでも結果を残しているなか、ゴールへ向かう積極的な姿勢を見せてくれたと思う」

インサイドハーフでスタメン出場した旗手怜央【写真:徳原隆元】
インサイドハーフでスタメン出場した旗手怜央【写真:徳原隆元】

総合力の高さが光った旗手、「全方位的に脅威を与える」存在となった久保

 金田氏が、上田に続いて称賛したのが先発出場したMF旗手怜央だ。「バランサーとして光った。本来ならずっと招集され続けてもいいぐらいポテンシャルが高い」と評し、この日のパフォーマンスを振り返る。

「守備の時は、守田英正とダブルボランチ気味に構える場面もあり、攻撃のリンクマンとしても機能した。簡単にボールを失わず、決定的なスルーパスを通したかと思えば、攻撃のサポートも行うなど攻守両面で良さを見せていた。ボールを捌きながら決定的なパスを出し、ゴール前に顔を出すだけでなく、自らもゴールを狙いにいく姿を見せるなど総合力の高さを改めて感じさせた」

 上田と旗手について賛辞を並べた金田氏だったが、最も力を込めたのは3人目の選手――久保だった。

「この日は、なんと言っても久保だろう。カタール・ワールドカップ(W杯)ではやや不完全燃焼に終わったものの、今季はレアル・ソシエダで飛躍を遂げ、チームの中心と言えるほどの活躍を見せつけた。アタッキングサード付近でのゴールにつながるボールキープ、ゴールにつながるラストパスに加え、ゴールやシュートも積極的に狙う久保は、やはり相手にとって脅威そのものだ。今の久保は相当、期待値が高い」

 エルサルバドル戦の久保は右サイドで先発出場し、1ゴール2アシストと躍動。切れ味鋭い突破だけでなく、シュートやパスなどあらゆる面で高水準のプレーを披露した。高い評価を与える金田氏の語気が強まる。

「2アシストはもちろん称賛に値するが、周りを生かしつつ、自分自身がゴールを狙えるポジションを取るという動きが素晴らしく、飛躍的に向上している。パスだけ、ドリブルだけ、クロスだけ、というレベルの選手ではなくなった。少しでも目を離せばゴールに直結するプレーをするだけに、全方位的に脅威を与える。その意味でこの日の久保は非常に良かった。クロスに対する逆サイドのポジションや入り方、味方がシュートを打った時のこぼれ球への予測。そうしたアクションはソシエダで間違いなく磨かれたし、久保本人もそうした動きを強く意識しているのが窺える」

“怖さ”が増した久保「すべての動きがゴールに直結する可能性を感じさせる」

 雌伏の時を経て、一皮むけたアタッカーという印象を金田氏は久保に抱いたという。

「今の久保は『吹っ切れた』『一皮むけた』という印象が強い。久保が発するコメントも力強くなっているが、それはスペインで積み重ねてきたものが確固たる自信としてあるからだろうし、今の久保はみんなの期待に応えるだけの力がある」

 飛躍を遂げる久保は何が変わったのか。金田氏は「ゴールへの貪欲さ」に答えを見出しているようだ。
 
「前までの久保は、突破に鋭さはあったものの『怖さ』が欠けていた。欠けていた怖さとは、言い換えるなら『ゴールへの貪欲さ』だろう。だが今はどうか。すべての動きがゴールに直結する可能性を感じさせるし、久保自身もゴールから逆算した動きを意識し、あらゆる場面で怖さが増した。相手が1人少ない状況というのを差し引いても、『攻撃の軸は久保』と言っても過言ではないぐらいの“怖いプレー”を見せている」

 森保監督が選考に頭を悩ませるほどポテンシャルの高い選手たちが揃う日本代表。完勝したエルサルバドル戦に続き、20日にはパナソニックスタジアム吹田でペルー代表と対戦するなか、サバイバルはさらに激化しそうだ。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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