横浜FMベンチで宮市亮は「闘志を漲らせていた」 カメラが捉えた“大逆転劇前”の1枚

決勝ゴールを決めた宮市亮【写真:徳原隆元】
決勝ゴールを決めた宮市亮【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】劇的な逆転劇を生み出した横浜FM、その強さの神髄とは

「サッカーは(試合において)良い時もあり悪い時もある。だが、我々は自分たちの信じるスタイルを貫く」

 J1リーグ第17節・横浜F・マリノス対柏レイソル戦の試合後の記者会見で、前半でのGKから前線へとボールをつないでいくプレーのなかで、特に最終ラインでリズムが作れなかったことについて聞くと、ケヴィン・マスカット監督はそう答えた。

 前半、横浜FMは前線のブラジル人選手たちの活躍により、2度のリードを奪うものの、内容的には本来の安定感が見られなかった。自陣から攻撃へのスイッチとなるボール回しがスムーズにいかず、柏の積極的な守備もあって、何度か失点へと結び付きそうな危ない場面を作ってしまっていた。

 このGKから攻撃へと転じる際のショートパスでのつなぎで安定感を欠いたことは、柏の反撃の勢いを助長する結果となったことは否めない。特にマテウス・サヴィオが前線で激しいチャージを受ける状況に負けまいと闘志を奮い立たせ、果敢に立ち向かってきていた。

 感情の高まりは柏の背番号10番を起動させ、その闘志はほかの選手にも伝播し、最前線から積極的な守備を仕掛けてはボールを奪い、そこからのカウンター攻撃で横浜FMと互角の展開を見せることになる。

 それだけに柏には勝利のチャンスがあった。実際、リードを許してもしぶとく追い付き、後半28分にはフロートのゴールで逆転に成功する。

 しかし、だ。選手たちの試合終了のホイッスルが鳴るまでの勝利に対する強い思いと戦術遂行の幅広さといった柔軟性では、リーグの順位が表しているように横浜FMのほうが一枚上手だった。

 横浜FMは基本戦術となる自陣からボールをつなぐ作業において、ショートパスでの展開では精彩を欠いたが、選手たちは1つの形に固執することなく、柏守備網を攻略していったところに試合巧者ぶりが光っていた。

前半41分のチーム2点目がその良い例で、後方に位置するエドゥアルドからの一気のロングパスを受けてエウベルがネットを揺らしたように、基本的にはショートパスから相手の守備体系を揺さぶり、両サイドの突破からゴールを目指すスタイルとしながらも、戦術を理解したうえで臨機応変なプレーを見せられるのが横浜FMの強さの神髄だ。

信念を持ってプレーするトリコロールの選手たちがドラマを作り上げる

 指揮官が明確な戦術論を持ち、それを選手たちに的確に伝え、選手たちは確実に実行する。マスカット監督が選手たちへ戦い方を伝える作業は、ピッチに向けて指示を出すのはもちろん、ベンチに控える選手たちに対しても同様で、その言葉に水沼宏太や宮市亮らが真剣に耳を傾けている場面が印象的だった。

 こうして伝えられた確固たる指揮官の勝利への方程式はチームの武器となり、選手たちの自信となって、ピッチに出た時にミスを恐れないダイナミックなプレーを引き出すことになる。

「自分たちのサッカーに勇気を持って取り組む重要性を選手全員が認識している」とマスカット監督が語っていたように、信念を持ってプレーするトリコロールの選手たちは最後に大逆転劇というドラマを作り上げた。

 柏はフロートのゴールによって3-2と逆転し、そこから試合終盤まではなんとか横浜FMの攻撃を凌いでいた。だが、無理もないとはいえ、もともと守備に不安があるなかで、後半42分にDFの退場者を出すと一気に選手たちから積極性が失われ再逆転を許すことになる。

 後半アディショナルタイムに同点となり、すでに時間がない状況でも最後の最後まで自信を持ってプレーしていたのはやはり横浜FMだった。そして宮市の魂のゴールによって勝利を奪取する。

 カメラのファインダーで捉えたベンチでマスカット監督の指示を聞く宮市は、その劇的な結果を手繰り寄せるだけの闘志と集中力を漲らせていた。

徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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