横浜FM宮市亮に敵サポーターも拍手 「現役を続けて良かった」…不屈のヒーローが噛み締めた喜び
柏戦で劇的決勝ゴール、大怪我から復帰後初得点で主役に
横浜F・マリノスがFW宮市亮の劇的な逆転ゴールで4-3の勝利を飾った。試合は横浜FMがFWアンデルソン・ロペスの得点で先制も、柏が同点、すぐさま横浜FMが勝ち越すと、また柏が追い付くという展開だったが、後半28分にDF片山瑛一の右クロスにFWフロートが豪快ヘッドで合わせる形でアウェーの柏が一旦は逆転した。そこからケヴィン・マスカット監督が、MF水沼宏太と一緒に命運を託して送り出したのが宮市だった。
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後半42分に鋭い仕掛けでDF立田悠悟のファウルを誘い、結果的に直後の遅延行為で退場となった。11対10になった後半アディショナルタイムに、水沼のクロスからA・ロペスが同点ゴールを決めると、直後に柏MF高嶺朋樹のロングシュートがクロスバーに当たるなど、攻守が交互に切り替わるオープンな展開になる。
迎えた後半アディショナルタイム、試合を決する一撃が生まれた。柏のロングボールをDFエドゥアルドが折り返したところからFWマルコス・ジュニオールが受けて、A・ロペスがファーストコントロールから前を向く。柏DF古賀太陽がなんとか外側にかき出すが、素早く拾い直したM・ジュニオールのパスを宮市がトラップした右足で思い切り振り抜く。ボールは懸命のブロックに来たDF土屋巧に当たり、転々とゴールを割った。
宮市がそのままゴール裏のサポーターに向けて喜びを爆発させたあと、直前にあったシーンで横浜FM側にファウルがあったかどうかのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)チェックが行われたが、OFR(オンフィールド・レビュー)の末にゴールが認められると、宮市はマスカット監督と抱き合った。
「嬉しかったですし、本当に何かこう、いろんな人の思いが乗ったゴールだったなと。だからこそ入ったなという感じでした。時が止まったような……入ってくれと。僕の力じゃどうしようもないぐらいの回転が掛かってたので。みなさんのポジティブなエネルギーが乗っかってゴールになったかなと思います」
昨年にはE-1サッカー選手権に出場する日本代表に約10年ぶりに選出も、韓国戦で負傷交代。前十字靭帯の断裂で、全治8か月と診断された。これまで度重なる大怪我から復帰してきた宮市だが、サポーターや選手たちに励まされてリハビリに取り組み、5月24日のルヴァン杯・北海道コンサドーレ札幌戦で復帰を果たした。そうしたことも知ってか、試合後のヒーローインタビューに答える宮市に対して、悔しいはずの柏サポーターからも温かい拍手が送られた。
「レイソルも本当にいい戦いをしていましたし、自分たちも危ないところもありましたけど、なんとかみんなの諦めない気持ちが上回ったのかなと思います」
そう振り返る宮市は苦しい時間も含めて、サッカーをやり続ける喜びを語った。
「現役を続けて良かったなと思いましたし、やっぱりサポーターが今日もたくさん来て、喜んでくれる。スタッフがサポートしてくれて、ゴールを喜んでくれる。そういう誰かを喜ばせることができる1ゴールで。本当にそういう職業っていいなと思いましたし、まだまだこういった機会を何度も続けていきたいなと思います」
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。