歴代日本人ストライカー「センターFWランク」TOP10 総合1位は?…大迫勇也、高原直泰、ゴン中山ら厳選

センターフォワードのトップ10を独自に選定【写真:Getty Images & 徳原隆元】
センターフォワードのトップ10を独自に選定【写真:Getty Images & 徳原隆元】

【識者コラム】「決定力」「駆け引き」「ポストプレー」の3項目から評価

 日本サッカー界にはこれまで、さまざまなタイプのストライカーがその名を轟かせてきた。相手との巧みな駆け引きから得点嗅覚を発揮した者や力強いポストプレーを武器にゴールへ迫ったハンターなど、特徴は多岐にわたる。「FOOTBALL ZONE」では日本人ゴールハンターの系譜を振り返るべく特集を展開。ここでは歴代日本人ストライカーの中から「センターフォワード(CF)タイプ」のトップ10を独自に選定し紹介する。

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 基本的に前線でターゲットマンになりながら、最終的にボックス内で勝負するタイプの選手たちを10人選んだが、最も候補が多く、リストアップに苦労した。上田綺世や黒崎久志、金崎夢生、李忠成、久保竜彦、川又堅碁、西澤明訓、播戸竜二なども、惜しくも入れられなかった。

 基本項目である「決定力」「駆け引き」に「ポストプレー」を加えて評価したが、大迫勇也と中山雅史の2人が「28」で、総合トップに並んだ。

 大迫に関しては「ポストプレー」がダントツの「11」で、ライバルより高くなった理由だ。ただ、ドイツではセカンドトップ的なポジションを任されていたことも多く、この部門でJリーグのレジェンドたちと比較しにくいという側面もある。ここまで今シーズンのトップを走る得点数を考えると「決定力=8」は厳しめかもしれないが、Jリーグ在籍時の1試合あたりの得点率なども考慮した。

 逆に言えば今シーズンこのまま得点を伸ばし続け、ドイツ移籍前に鹿島で記録した19得点を超えるキャリアハイを達成したら、もっと評価を上げることができる。33歳という年齢ではあるが、今後の活躍次第で歴代最高FWという位置付けも狙える存在であることは間違いない。

 中山は「決定力」が「11」と最高値になった。理由は1試合で0.442というJリーグでの驚異的な得点率で、2度の得点王を獲得。1998年には27試合で36得点という金字塔を打ち立てている。フィニッシュにつながる「駆け引き」もCFでは柳沢敦と並ぶ「10」となった。マークを一瞬で外してシュートに持ち込むうまさもそうだが、90分の中でチャンスを逃さない集中力と勝負強さも加味した。

 ただ、いわゆる典型的なターゲットマンではないため、3つ目を「ポストプレー」にしたことが、虎視眈々とゴールを狙うストライカーには気の毒だった。ここをフィニッシュに特化した項目にしたら、総合値も頭1つ抜けていたかもしれない。

鹿島の攻撃を牽引する鈴木優磨【写真:徳原隆元】
鹿島の攻撃を牽引する鈴木優磨【写真:徳原隆元】

鈴木優磨はチャンスにも多く関与、ストライカーとしての価値が向上

 大迫と中山に次いで高評価になったのが、興梠慎三と高原直泰だ。現役Jリーガーでもある興梠は得点王のタイトルこそないが、10シーズン2桁得点をマーク。ここまでJ1歴代2番目の得点数(通算166得点)を記録している。

 興梠は175センチと決して大柄な選手ではなく、もともとCFの選手ではなかったが、持ち前の柔軟性と技術を生かした「ポストプレー」や“オブリックランニング”と呼ばれる動き出しの上手さでチャンスの起点にもフィニッシャーにもなれる、日本を代表するCFとしての地位を確立してきた。

 浦和のエース的な存在である現在、本人は今シーズンが最後になるかもしれないという覚悟で臨んでいるようだが、これまでやっていなかったというフィジカルトレーニングに取り組むなど、36歳という年齢にして新境地を開拓している。ACL(AFCアジアチャンピオンズリーグ)で27得点という記録もぜひ伸ばしていってほしい。

“黄金世代”の象徴的な選手の1人である高原はアルゼンチンの名門ボカ・ジュニアーズから帰国した2002年に26ゴールでJリーグ得点王に輝いた。そこからドイツに渡って、厳しい環境に揉まれながらフランクフルト時代の2006-07シーズンには11得点を記録している。その後は浦和、韓国の水原、清水エスパルス、東京ヴェルディ、SC相模原と渡り歩き、沖縄SVを県3部リーグからJFLに引き上げることに貢献しており、43歳で兼任監督として現役生活を続けている。

 決定力は磐田でコンビを組んだ中山に次ぐ「10」とした。トータルバランスに優れたCFであり、どんなアタッカーとでも良好な関係を築けるという特長がある。181センチという上背以上に存在感のあった高原。「ポストプレー」も決して苦手ではないが、典型的なターゲットマンではないので、中山と同じく別の項目にしていたら、もっと総合値が上がったかもしれない。

「駆け引き」に関しては中山と並び、柳沢がトップの「10」となっている。鹿島でプロ入り3年目となる1998年に22得点を記録しているが、その後、2桁得点が2度ということもあり、キャリアを通した評価で「決定力」を「7」としたが、味方に点を取らせる役割も含めたら相当にハイレベルなFWだった。また“アジアの大砲”高木琢也は「ポストプレー」で2番手の「10」とした。

 現役選手では鈴木優磨もランクイン。ベルギーリーグで2年半プレーしてから鹿島に復帰し、ストライカーとしての価値を高めている。まだ27歳という年齢もあり、もっと評価を高めていけるだろう。彼が常に目標として掲げるのが、ゴールとアシストを合計した“ゴールポイント”という価値基準であり、点を取ることに加えて、点を取らせることも強く意識している。今回は「ポストプレー」で「9」にしたが、よりトータルでチャンスやフィニッシュに関わる仕事としては大迫にも引けを取らないものがある。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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