シュツットガルト遠藤航が放つ圧倒的な存在感 入れ替え戦でサポーターに衝撃「相手からしたら嫌なのかなって」【現地発コラム】

シュツットガルトでプレーする遠藤航【写真:Getty Images】
シュツットガルトでプレーする遠藤航【写真:Getty Images】

1部16位シュツットガルト、2部3位ハンブルガーとの入れ替え戦第1戦で3-0勝利

 今季16位でブンデスリーガのレギュラーシーズンを終えたドイツ1部シュツットガルトは、2部3位ハンブルガーとの入れ替え戦に残留の望みをつないでいる。

 ホームのファーストレグは4万7500人と満員。白一色に染めようという呼びかけに応えて、スタジアムを訪れたファンはみんな白のチームTシャツかユニフォームを着て現れた。純白のファンたちが、真っ赤なチームマフラーをスタジアム中で回す。サポート体制はばっちりだ。

 アウェー席のハンブルガーブロックからは試合前に青い発炎筒。「このスタジアムは今日俺たちが掌握するぜ」のメッセージだろうか。だが青い煙がファンブックから広がる前に、そんな気勢を一気に打ち消す一撃が生まれた。

 開始わずか45秒でシュツットガルトが先制に成功したのだ。意気消沈せまいとハンブルガーファンが大きな声でチームを鼓舞する応援をしようとすると、すぐにシュツットガルトファンがそれ以上の声量で潰しにかかる。

 遠藤は試合後、そんなファンの力強いサポートに感謝の思いを言葉にしていた。

「声援の声量みたいなのはね、最初のアップの時から凄いなっていうのは感じてました。でも今回に限らず毎回毎回うちのサポーターはすごくいい雰囲気を作ってくれてる。このホームの雰囲気というのは相手からしたら嫌なのかなっていうのはある。うちもやっぱりしっかり乗っていきながらプレーできたと思います」

 幸先の良いゴールで勢いに乗ったシュツットガルトは、その後もチャンスを演出し、最終的に3-0で快勝。それ以上の点差で勝ってもおかしくないくらいのパフォーマンスだった。

 それを支えていたのが遠藤だろう。

 競り合いの強さ、読みを生かしたインターセプトの鋭さは圧巻のレベルにあるし、攻撃面でも重要な役割を果たしていた。中盤から左右にパスをダイナミックに展開し、味方の素早い攻撃を何度も引き出す。

「相手のプレッシャーのかけ方で前から来るのを一枚剥がせればというところと、自分は最近攻撃にどう関わっていくか、立ち位置とか相手がどうプレッシャーに来ているのかは常に見てやっている。どんどん前につけて勝負させるようなパスを供給できれば、というところだった」(遠藤)

攻撃への意識が高まっている遠藤「あと一歩みたいなシーンもありました」

 ここ最近の遠藤は、パスを捌いて中盤のスペースを埋めるだけではなく、ペナルティーエリア付近に出没する頻度も増えている。そこは本人が意識して取り組んでいるところだと試合後の談話で明かしてくれた。

「(シュツットガルトDFが)3枚あって、2ボランチでやっている難しいところではある。あんまりうしろに重たくなりすぎると、最後崩すところでちょっと物足りなくなる。ボランチが1枚そこで関われるかどうか、最後まで持っていけるかっていうところで、すごく大事になると思っている。相方が(守備的なアタカン・)カラソルなので、今日も自分のところで点を取れそうな場面、あと一歩みたいなシーンもありました」

 エンツォー・ミロとのパス交換でペナルティーエリアに侵入したり、上手くボールを引き出してティアゴ・トマスのシュートシーンを演出したりと、効果的な絡みが何度もできていたのは、現地時間6月5日(日本時間6日)のセカンドレグに向けて非常にポジティブな要素だろう。

「とりあえず3-0という結果は悪くない。4点、5点取れる展開だったと思いますけど、でもやっぱりホームで先にできるというアドバンテージを生かすためには、ここでしっかり勝っておかないといけない。叩いておかないとっていうところはあった。ゲーム内容的にも良かったと思います。失点をしていないっていうのも、すごく有利な状況になったので、気を抜かずに残り1試合やるだけです」

 チームにおける絶対的な存在としてピッチ上で先頭に立って戦う男だ。シュツットガルトはアウェーを苦手にしているのが心配な点ではあるが、ファーストレグで手にしたアドバンテージを生かして、遠藤を中心にチーム一丸となって、一部残留をもぎ取ってほしい。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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