「あの結果がすべて」 シーズン通し活躍した堂安律の次なる壁…自ら語る課題とは?「これからの練習次第」【現地発コラム】

フライブルクの堂安律【写真:Getty Images】
フライブルクの堂安律【写真:Getty Images】

最終節では敗れるも5位フィニッシュのフライブルクを主力として支えた

 ドイツ1部フライブルクでプレーする日本代表MF堂安律は、ブンデスリーガ5位でフィニッシュしたチームで主力としてシーズンを通して活躍した。1-2で敗れた5月27日ブンデスリーガ最終節フランクフルト戦でも、持ち味を随所に披露。第33節ヴォルフスブルク戦に続き、フライブルクは3-4-3システムを採用。これまで右ウイングバックにバランス能力の長けたルーカス・キューブラーか、1対1に強く、ヘディング力もあるキリアン・サルデラがプレーすることが多かったが、クリスティアン・シュトライヒ監督は本来攻撃的なポジションでプレーするハンガリー代表MFローランド・シャーライを起用。同サイドで堂安とコンビを組むことになった。

 前任者と比べると守備時の対応に若干の不安を感じさせるが、オフェンス時のバリエーションは確実にアップされた。これまでは堂安が右サイドで1人奮闘することが多かったが、ボールを持てるシャーライが相手DFを引っ張ってくれるので、堂安がフリーでボールをもらえるシーンが増えているように思える。

 先制点も同サイドから生まれた。前半44分、堂安とのパス交換からシャーライがクロスを入れると、相手DFのクリアボールが流れたところに走りこんだイタリア代表ビンチェンツォ・グリフォがヘディングで押し込んだ。アウェーまで詰めかけた1万人以上のフライブルクファンからは大歓声が送られた。

 堂安はボールロスト後のファーストプレスがうまい。すぐに距離を詰めると、そこから相手にターンをさせて、ボールを下げさせる。これで味方がどれだけ助かるか。オフェンス面では頻繁にハーフスペースからセンタースペースへと進入し、仲間からのボールを引き出していく。相手からのチャージを受けながらもそれを引きはがしてドリブルで持ち運び、そこを起点に好チャンスへとつながるシーンが少なくない。

 前半32分には、ペナルティーエリアすぐ外でボールを持つとセンターへスライドしながら持ち込んで左足シュート。この試合だけではなく、前節ヴォルフスブルク戦でもこの「得意とする形」からシュートというシーンがあった。ただ枠をとらえ切ることができない。

 チームに求められるプレーはできているし、その貢献度はだれもが認めるところ。そしてシュートに持ち込むこともできているだけに、あとはその機会をより高頻度で生かしきることができるかどうか。本人もまさにその点を自身の課題として受け止めている。

「あのシーン、あの結果がすべてだと。あれを外してしまう自分がすべてだと思う。今季、あそこまでもっていくシーンはかなり作れていたのでそこでの課題はないが、最後のシュートの精度というのはまだまだ上げられると思う。むしろ伸びしろのある試合内容にも思えた」

 チャンスを作り、チャンスに絡み、チャンスを生み出している。リーグでは5得点6アシスト。ドイツカップ、UEFAヨーロッパリーグでもそれぞれ1点ずつ決めているが、「トータルのコンペティションで10(得点)10(アシスト)は狙っていたので、そういう意味では両方足りていないのでそこは課題」と本人は反省の弁を口にする。

 では、ここからさらに数字を上乗せするためにはどうしたらいいのだろうか。

「練習すれば変わることだと思う。(チャンスに)持っていけないほうが僕は課題だと思っているので。持っていけているということはポジティブです。最後の精度は目つぶってもシュートを打っても入るくらい練習するべきだと思う。これからの練習次第かなと思います」

 言葉は明瞭で、そこにはゆるぎなき強い意志を感じさせられる。

体調不良、膝の故障を乗り越え「この1年でかなり強くなった」

 リーグ33試合、ドイツカップ5試合、ヨーロッパリーグ7試合に出場。リーグの間にはカタール・ワールドカップ(W杯)の熱戦もあった。体調不良で倒れ、膝の負傷で欠場したことがある。それでも堂安はいつでもピッチに立っていたし、立ったら常に精力的な動きで走り続けていた。

「今季だけではなくて、結果というのは海外に来てから口酸っぱく言われていることなので、それに限っては今季から意識したわけではない。そこは変わっていないところ。あとは間違いなくブンデスリーガで5位のフライブルクという、ビッグクラブではないですけど、ビッグクラブになりつつあるクラブで主力を張って、毎週強度の高いところで戦うコンディションを作るというのは初めてのシーズンだった。タフなプレッシャーもありましたし、新しい1年ではありましたけど、そういうコンディション的な体の強さというのはこの1年でかなり強くなったかなと思います」

 数多くの手ごたえと成長、そして来期以降への課題。実り多きシーズンが終わりを告げた。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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