日本代表DF瀬古歩夢、欧州ステップアップ移籍の青写真「ドイツ、スペインも行きたい」 衝撃を受けたFWも告白【現地発】

グラスホッパーで戦う瀬古歩夢【写真:Getty Images】
グラスホッパーで戦う瀬古歩夢【写真:Getty Images】

【インタビュー】スイス1部で順調に成長「潰せるところを潰さないと評価されない」

 22年1月、セレッソ大阪からスイス1部グラスホッパーへ移籍した日本代表DF瀬古歩夢は順調に経験を積み重ねている。今季リーグ戦31試合に出場し、センターバックのレギュラーとして貢献。在籍2シーズン目の今季、自身のパフォーマンスにどのような手応えを得たのか。グラスホッパーのオフィスで本人に直接話を聞いた。(取材・文=中野吉之伴/全3回の1回目)

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 通された部屋で窓からきれいに晴れ渡った空を眺めていたら、瀬古が「お疲れ様です」と朗らかに入ってきた。天気の話を振ってみたら、「いや今日、午前中はめっちゃ雨降ってたんですよ」とにこやかに話してくれる。スイスでの生活にはだいぶ慣れてきたようだ。

「当初こっちに来た時は身体能力っていうところで、もっと考えないといけないなっていうのを感じてました。それが今、自分自身で考えながらできてるっていうのはあります。少し慣れちゃったかなっていうのはあるので、今後を見据えてまた違うところにステップアップしていきたいなとも考えてはいます。

 将来的なことを考えると、正直ボールを保持するチームに行きたいっていうのは、もちろんあるんですけど、結局ディフェンダーとして潰せるところを潰さないと評価されない。それは分かっている。ドイツもそうだし、スペインも行きたいですけどね。自分がステップアップできればどこでもいいですよ、正直」

 頭に描いているビジョンはとてもクリアだ。そして自分が理想とする選手になるためには貪欲に成長し続けなければならない。昨季話を聞いた時、「身体能力の差を感じる」と話していたのを思い出す。足のリーチの違いや爆発的な初速の速さを持った選手がいて、日本では守れていた部分でやられそうになることがあった、と。

 スイスへ渡って1年以上が経っている。練習からインテンシティーと球際の激しさが当たり前にあるなかで戦い、瀬古は自分の間合いを見つけ出したようだ。今ではどことやってもそう簡単にはやられないという自信を持ちながらプレーができている。

「だからこそ絶対的にどの相手にもやられたらいけない。そこはまず大前提ですね。そのなかで自分自身のクオリティーをもっと出していかないといけない。人にガツガツくるリーグなんで、ちょっとあえて食いつかせて、そこからサイドチェンジで展開みたいなプレーで、自分が試合の局面を変えられる部分をもっともっと増やしていきたいですね。1試合で何回もチャンスメイクできる部分があると思う」

瀬古が驚いた同世代の22歳FW「完璧に逆を取られたことがあった」

 瀬古が来季以降どこでプレーするかは不透明だ。成長できる機会はどこにでもあるなか、スイスリーグには瀬古が「お?」と驚かされたFWがいるという。

「バーゼルの9番(スイス代表の22歳FWゼキ・アムドゥニ)は同い年ぐらいだと思いますけど、ちょっと賢いなというか、『あっ!』ってなった。正直そこまでテクニックがあるとは思ってなかったんですね。スピードで多少やられる部分があったとしても、駆け引きでやられるっていうのがなかったので。それがバーゼルと対峙した時、1回完璧に逆を取られたことがあったんです。身体を入れ替えられたシーンあるんですけど、『おお。そんなんできるのおったんや!』って思いましたね。そっからずっと気にして見てて、この前もスイス代表でゴールもしてました。すごく面白い選手だと思いますね」

 アムドゥニはブンデスリーガのボルシアMGなどから興味を持たれており、これからが楽しみな若手選手だ。そんな相手との対戦は瀬古にとっては喜びなのだろう。「誰もが自分を恐れるほどの存在になりたい」と瀬古が話していたことがある。

 どんな相手でも、どんなタイプでも、的確に抑え込めるようになることが必要なのだ。絶対的な存在になるために――。

[プロフィール]
瀬古歩夢(せこ・あゆむ)/2000年6月7日生まれ、大阪府出身。中泉尾JSC―セレッソ大阪U-12―セレッソ大阪U-15―セレッソ大阪―グラスホッパー。2017年にC大阪最年少となる16歳11か月でトップチームデビュー。20年には史上4人目となるJリーグのベストヤングプレーヤー賞、ルヴァンカップのニューヒーロー賞の新人賞ダブル受賞。22年1月にグラスホッパーへ完全移籍した。19年のU-20ワールドカップに出場。21年11月に21歳でA代表初選出。23年3月のウルグアイ戦では22歳でA代表デビューを飾った。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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