セルティック視察をコーチが担当問題 世間が森保監督に聞きたがっている“核心”

森保一監督【写真:ロイター】
森保一監督【写真:ロイター】

【識者コラム】森保監督はセルティックの試合はすべて見ていると話すが…

 日本代表を率いる森保一監督が5月12日に帰国し、空港で囲み取材を行った。こういう取材の場合は対応する時間が短いため、最初に一通りさまざまな押さえておくべきことを聞くと、そこで大体対応が終わりそうになる。

 ただし、そこからが取材の勝負。ちょっと込み入った話になりそうな、もっと言うと聞きにくいことは終了間際にさらりと滑り込ませるのだ。森保監督が歩き出そうとした時に投げかけられた質問は、「スコットランドには行ったのですか?」だった。

 スコットランドでは、特にセルティックで5人の日本人選手がプレーしている。2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)のメンバーだった前田大然も出場を続けており、森保監督が視察してもおかしくないが、当然ながら質問に隠された意味は違った。

 それは今シーズン、リーグ戦だけで24点を挙げている古橋亨梧の視察に行かなかったのか、さらに言えば今後古橋を日本代表に招集するつもりはあるのか、ということが入っていたと考えられるだろう。

 森保監督も当然その意図を察し、名波浩コーチと前田遼一コーチが視察していて、手分けをして回ったのだと明かした。

 3月15日、新生森保ジャパンの発表の際にも「古橋亨梧選手、旗手怜央選手が選ばれていないのはほかの選手と比べて劣るものなのか、戦術的なものなのか、それとも、何か理由があるのか」という質問があった。

 そこで森保監督は「セルティックの試合もすべて見てますし、実際チャンピオンズリーグ(CL)も見に行かせてもらいました」「結果を出してるところ、そして、チーム内で存在感が上がってるところも見ています」とコメント。そして、招集外だったことを「絶対的な判断基準がすべてあるというわけではなくて、総合的に」と説明した。

 また、4月14日の出発前にも「結果を出してるとこいうところは見ていますし、いつでも日本代表の戦力としてプレーできるだけの価値がある選手」だと考えているとも語っていた。

22年6月以降は1トップとして出場も結果を残せず

 それでも、森保監督の中では古橋に「何度もチャンスを与えた」という気持ちがあるのかもしれない。2019年11月19日、親善試合のベネズエラ戦でデビューさせると、2021年には11試合、2022年は4試合で起用している。

 古橋はカタールW杯アジア2次予選の2021年3月30日ホーム・モンゴル戦(14-0)で2ゴール、6月7日のホーム・タジキスタン戦(4-1)で1ゴールを挙げて弾みをつけた。だが最終予選に突入すると沈黙する。そしてタジキスタン戦以降はゴールがなかった。

【2021年】
09月02日 H・オマーン(0-1) 出場/HT〜 シュート数0
09月07日 A・中国(1-0) 出場/〜後半5分 公式記録なし
10月07日 A・サウジアラビア(0-1) 出場/後半14分〜 公式記録なし
10月12日 H・オーストラリア(2-1) 出場/後半16分〜 シュート数0
11月11日 A・ベトナム(1-0) 出場/後半30分〜 公式記録なし
11月16日 A・オマーン(1-0) 出場/後半17分〜 公式記録なし
【2022年】
01月27日 H・中国(2-0) 招集外
02月01日 H・サウジアラビア(2-0) 招集外
03月24日 A・オーストラリア(2-0) 招集外
03月29日 H・ベトナム(1-1) 招集外
※H=ホーム、A=アウェー。

 古橋がW杯メンバーに入るには、そこからメンバー発表までの試合で結果を出さなければならなかった。チャンスがなかったわけではない。

06月02日 パラグアイ(4-1) 出場/後半37分〜 シュート数1
06月06日 ブラジル(0-1) 出場/〜後半22分 シュート数1
06月10日 ガーナ(4-1) 出場せず
06月14日 チュニジア(0-3) 出場/後半15分〜 シュート数1
09月23日 アメリカ(2-0) 出場せず
09月27日 エクアドル(0-0) 出場/〜HT シュート数0

 森保監督は古橋を当初左のウイングとして起用していた。だが、2022年6月以降はすべて1トップとして出場している。そこで結果を残せなかった。日本代表の戦術もあるのだろうが、ともかく古橋に合わせたパスが出てこない。

 代表チームは毎回メンバーが違い、短期間でコンビネーションを合わせなければいけない。その作業が上手くいかなかった。

 それでも古橋はまだ28歳。選手としてはこれから脂が乗るところだ。また今シーズンの活躍でさらなる成長も遂げている。日本代表としても抜群の得点力を生かしたいところだろう。

 古橋は今季の大活躍から移籍が噂されている。移籍するならば、新しい所属チームにいかに早く馴染み、ゴールを量産できるようになるか。そうすれば誰とでも合わせられるようになったという証明ができる。当然のこととして日本代表の1トップも信頼して任されるようになることだろう。

 そして、もしカタールW杯の前のように、森保監督が週に1回程度メディアと1時間ほど会話してくれるチャンスがあれば、この問題は監督からもっと明確に語ってもらえるに違いない。この話題のような火種がくすぶり続けるのは、日本代表にとっても森保監督にとってもあまりいい話ではないはずだ。

(森雅史 / Masafumi Mori)



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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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