悪いニュースを吹き飛ばす開幕の空気 中国リーグ、バブルフェーズからの再起の可能性
【中国サッカー考察コラム#14】上海申花vs山東泰山のチケットは開始5分で完売
日本のサッカーファンのみなさま、こんにちは。中国サッカーメディアにて活動をしています久保田嶺です。いよいよ中国サッカーも2023年シーズンのリーグ戦が開幕しました。4年ぶりのホーム&アウェー方式、つまり通常のリーグ戦開催となります。ようやく日常が帰ってきたという中国サポーターの熱気、期待をひしひしと感じています。私もさっそく4月16日のリーグ開幕戦、上海申花vs山東泰山の試合をスタジアムへ見に行きましたので、現地の熱狂をお伝えいたします。
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「もう完売!? まだ5分も経っていないぞ」
4月16日に行われた開幕戦の4日前、4月12日18時に上海申花vs山東泰山のチケット販売が開始されました。私も19時頃に販売サイトを確認しましたが、すでに売り切れ、あまりの即完ぶりにインターネット上でも「誰が買えるんだ」「5分で売り切れたぞ」など、驚きとどこか嬉しそうなサポーターの声があふれていました。しかし、この即完売には少しからくりがあり、上海のサッカーアカデミー「TWL football club」で働き、自身も上海申花を20年応援する周さんがこう教えてくれました。
「これには理由があります。1つは本当に皆が待ちわびていたということ。これは間違いないです。もう1つは、今シーズンから上海申花のホームスタジアムとして使用される上海体育場はサッカー専用スタジアムに改修され、8万人を収容できる新巨大スタジアムとなりました。従来のトラック部分に観客席を作り、天井屋根には煌びやかなLED照明を設置して素晴らしい空間になっています。しかし、現在スタジアム近隣の建物も改修工事を行なっており、安全のため人流が制限されています。従って今回のチケットも半分以下しか販売されていません。しかし、嬉しいですね。数万のチケットが完売というのは間違いありませんので。当日が楽しみです」
上海申花が1-0で山東泰山に勝利
試合は1-0でホームの上海申花が勝利、来場客数は2万4000人でした。終始アウェーチームの山東泰山が元ベルギー代表MFマルアン・フェライニを中心に試合をコントロールしましたが、上海申花が前半に挙げた1点を守り切り開幕戦、そして新スタジアムのこけら落としを見事に飾りました。上海申花を20年応援する周さんはこのように語っています。
「同じく新スタジアムのこけら落とし、およびリーグ開幕セレモニーをした北京国安の初戦が4万6000人でしたので、制限がなければ今日は本当に8万人入っていたかもしれません。しかし、それよりもまず4年ぶりにホームスタジアムでたくさんのサポーターとともに応援できたことが嬉しいです。サッカー協会の不祥事やチーム解散など暗いニュースが多かったですが、やはり通常のリーグ戦が始まると中国サッカーの空気が変わる気がします。また本来なら中国で開催される予定だったアジアカップのため、各地で新しいサッカー専用スタジアムが建設されたのもポジティブな要素だと思います」
私も開幕戦をスタジアムで実際に観戦しましたが、試合内容うんぬんよりもこのお祭りを楽しもう、新しいスタートを祝福しようというサポーターの高揚を感じました。2010年代はサッカーバブルの元、ここ上海申花でも元コートジボワール代表FWディディエ・ドログバや元フランス代表FWニコラ・アネルカがプレーして歴史を作ってきました。
そのバブルフェーズが終わりを告げ、まさにゼロからの再スタートとなっている中国サッカーですが、今回の全国各地での開幕戦の盛り上がりを通じ、サッカーは中国の国民的スポーツだということを私自身改めて感じました。これからどのように中国サッカーが前に進んでいくのか、引き続き注目していきたいと思います。
(久保田嶺 / Rei Kubota)
久保田嶺
1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。