横浜FM助っ人が見た「森保ジャパン」 “王国”ブラジル人アタッカーが提言…日本に足りない「必要なプロセス」とは?

横浜F・マリノスでプレーするマルコス・ジュニオール【(C) 1992 Y.MARINOS】
横浜F・マリノスでプレーするマルコス・ジュニオール【(C) 1992 Y.MARINOS】

【インタビュー後編】FWマルコス・ジュニオールが語る日本代表の印象

 Jリーグは今年で30周年の節目を迎えた。リーグのプロ化により、日本サッカーは紆余曲折を経て発展を遂げてきたなか、レベルの向上へ一役買ってきた存在として忘れてはならないのが、世界各国から日本にやって来た外国人助っ人たちだ。今回、「FOOTBALL ZONE」ではJリーグ助っ人特集として複数コンテンツを展開。2回に渡ってお届けする横浜F・マリノスFWマルコス・ジュニオールのインタビュー後編では、Jリーグ在籍5年目を迎えたブラジル人アタッカーに日本への愛着心や日本代表のポテンシャルに対する見解を語ってもらった。(取材・文=石川 遼/全2回の2回目)

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 J1王者横浜F・マリノスで背番号10を背負うFWマルコス・ジュニオールは2019年の加入から今年で5年目のシーズンを迎えた。Jリーグではこれまでに多くのブラジル人選手がプレーしてきたが、この30歳のFWにとってもブラジルのレジェンドであるジーコ氏の存在はやはり無視できないという。

 Jリーグ黎明期に活躍し、のちに日本代表監督も務めた“神様”ジーコの偉大さをマルコス・ジュニオールはこのように語っている。

「私が対戦経験のある選手でいえばフッキ(元東京ヴェルディ、川崎フロンターレ)やジョー(元名古屋グランパス)といった選手がいますが、“Jリーグでプレーしたブラジル人選手”といえばやはり誰もがジーコの名前を口にします。鹿島アントラーズはブラジルでも有名ですし、それはもちろんジーコという偉大な選手がいたからこそ。彼がいたからブラジルの人たちもJリーグのことを知っているんです」

 2023年でJリーグは30周年を迎えた。その間、ジーコ氏を筆頭にブラジル人選手とJリーグの幸せな関係は脈々と息づいてきた。マルコス・ジュニオールは自身が日本に適応するうえでもブラジル人選手の存在が大きなプラス材料になっていたと話している。異国の地でプレーするサッカー選手にとって、同胞の絆はやはり欠かせないものだった。

「私が日本に来る前にはジュニオール・ドゥトラ(元京都サンガF.C.、鹿島アントラーズ、清水エスパルス)やカイケ(元横浜FM)、アデミウソン(元横浜FM、ガンバ大阪)といった選手がアドバイスをくれました。そしてF・マリノスに加入した時にはすでにチアゴ(・マルチンス)がチームにいて、彼のサポートがあったからこそ素早く順応することができました。今は僕が新しく入ってくる選手にアドバイスをする立場になったし、今後もそういった流れは代々続いていくでしょう。F・マリノスに来た選手がチームにすぐ馴染めるのは、みんなが温かく迎え入れてくれるからこそだと思っています。きっともう少ししたらブラジルでも横浜FMの存在が広く知れ渡ることになると思います」

「死ぬ前に日本がW杯を優勝するところをぜひ見てみたい」

 日本での在籍歴が長くなったマルコス・ジュニオールにとっては、日本代表もブラジル代表と同じように身近な存在となった。カタール・ワールドカップ(W杯)でベスト16に進出した日本代表について世界と戦える十分なポテンシャルがあると感じているという。

「今の日本代表はタレント揃いで、個々の能力がすごく高い。欧州でも活躍している選手も何人もいる。だからこそ、そういった選手たちにはもっと求めたほうがいいと思います。あれだけのクオリティーを持った選手たちですから、そこにアグレッシブさとメンタルの強さが備われば、日本代表はもっといろいろなタイトルを取れるんじゃないかなと思います」

 日本代表は初のベスト8進出を目標に掲げてカタールW杯に挑んだ。グループリーグでドイツとスペインという優勝経験国を撃破して世界に驚きを与えたが、決勝トーナメント1回戦ではクロアチアにPK戦で敗れ、惜しくも目標達成は叶わなかった。

 マルコス・ジュニオールは代表チームがW杯でさらに先に進むために重要なことは「サッカー界をあげて育成に投資すること。W杯で目標を達成するためにはプロセスが大切です」と目標に至るまでの道のりの重要性を強調している。

「ブラジルのように育成年代から世界で戦うためのメンタルを持たせることです。プロとしての意識を小さい頃から持てれば、日本代表はW杯でも優勝争いができるような国になると信じています。私が死ぬ前に日本がW杯を優勝するところをぜひ見てみたい。そうなったら私も絶対に喜びますよ」

 カタールW杯が終わったばかりだが、日本代表はすでに3年後のW杯に向けて第2次森保ジャパンとして再始動した。初陣となった3月シリーズでは横浜FMの同僚DF角田涼太朗が初招集(負傷により辞退)を受けるなどJリーグからも新戦力が台頭してきた。Jリーグから今後日本代表入りが注目される選手についてマルコス・ジュニオールは「いいなと思う選手は何人かいます」と話す。「代表のサッカーにどういった選手がフィットするかは監督にしか分からないので、ここで私が名前を挙げるのは控えておこうかなと思います」と具体的な言及は避けたが「私が監督だったらF・マリノスの選手を全員招集します(笑)」と笑みをこぼした。

「契約を更新してもらえるなら、私はこのF・マリノスで引退したいと思っています」と日本と横浜FMへの愛情を隠そうとしないマルコス・ジュニオール。熱狂的なドラゴンボールファンとして知られ、ブラジルのフルミネンセ時代から“かめはめ波”パフォーマンスを披露してきた男は運命に導かれるようにして日本へやってきた。今やすっかり日本に馴染んだ頼れる“助っ人”は日本サッカーのさらなる発展を願っていた。

[プロフィール]
マルコス・ジュニオール/1993年1月19日生まれ、ブラジル出身。フルミネンセFCの下部組織からトップチームへ昇格しプロデビュー。2019年に横浜F・マリノスへ加入すると、リーグ戦で15得点をマークし、J1優勝に貢献。得点王とベストイレブンに輝いた。打開力を秘めたドリブル突破や決定力を持ち味とし、J屈指の助っ人アタッカーとして君臨する。

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)



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