白熱必至の横浜ダービー、FW西村拓真が“推す”生観戦の醍醐味 「本当にバチバチになる」
【インタビュー】FW西村拓真が語った自身初となる横浜ダービーへの思い
J1に横浜ダービーが帰ってくる。4月8日、昨シーズンのJ1王者である横浜F・マリノスは、J1に復帰した横浜FCをホームの日産スタジアムに迎える。2年ぶりとなる横浜ダービーを前に、日本代表にも招集され、3月24日のウルグアイ戦(1-1)で第2次森保ジャパンのファーストゴールを決めたFW西村拓真に、自身初となる横浜ダービーへの思いを訊いた。(取材・文=河合 拓)
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今シーズンのオープニングマッチで、横浜FMは川崎フロンターレに2-1と快勝して、連覇に向けて好スタートを切った。シーズン開幕前、昨季のリーグMVPであるDF岩田智輝がスコットランド1部セルティックへ移籍。2019年のMVPと得点王であるFW仲川輝人(→FC東京)、FWレオ・セアラ(→セレッソ大阪)と主軸が新天地を求めた。
そのなかで、チームの攻撃を牽引する働きに期待が寄せられているのが西村だ。川崎とのシーズン開幕戦では、オープニングゴールとなる先制点を決めると、続く第2節の浦和レッズ戦でもFWヤン・マテウスのゴールをアシスト。さらに今季ここまでの走行距離ではJ1トップとなる14.38キロを記録している。
開幕2連勝を飾った横浜FMだったが、第6節を終えての成績は3勝1分2敗で6位となっている。西村は「もちろん満足いく内容と結果ではない」と言い、「去年から違うメンバーになったこともありますし、相手が戦い方を変えてくることで難しさもありますが、もっと攻撃的に行きたい。僕個人のパフォーマンスを含めて、まだまだチームに貢献できていない。もっと自分たちを高める必要がある」と、シーズン序盤の難しさを口にした。
今季の横浜FMはJ1のディフェンディングチャンピオンだ。周囲からJ1王者として見られるなか、西村は「緊張感は常にありますし、1戦1戦に対して『この試合で人生が変わる』と思って臨んでいるので、そんなに昨年と変わりません。チームにも、リーグチャンピオンという意識もなければ、慢心する雰囲気もない。とにかく自分たちを高めていくことしか意識していません。シーズンを通して良くなっていけたらなと思います」と、高い向上心を持ち続ける。
貪欲なまでに成長を求める西村の姿勢に変わりはないが、今季のスタジアムには大きな変化がある。Jリーグがスタジアムでの応援を全席解禁し、ファン・サポーターの声援が戻ってきたのだ。「本当にやっと戻ってきてくれて嬉しい」と笑顔を見せた西村は、さらに「プロサッカー選手として、ああいう舞台でできることは当たり前じゃないと思うとともに、声援が戻ってきた今、自分がプロサッカー選手であることを強く感じている」という。コロナ禍の声援がないスタジアムでプレーする経験をしたことで、かつての日常がいかにありがたいものかを感じながらプレーしているようだ。
そうした声援が、最高潮になる舞台の1つが同じ横浜に本拠地を置く横浜FCとのダービーマッチだろう。今回が自身初の横浜ダービーとなる西村は、「正直に言うと、まったく印象がないんです」と明かす。それも無理はない。2007年に初めて行われた横浜FMと横浜FCの横浜ダービーだが、所属カテゴリーの違いがあったため、実は過去リーグ戦では6試合しか行われていない。いずれも横浜FMが勝利した3度の天皇杯を含めても、公式戦で通算9試合しか行われておらず、通算成績は横浜FMの6勝1分2敗となる。
それでも初の横浜ダービーに向けて、西村は言う。「やっぱり同じ町に2つのサッカーチームがあれば、どちらかを選ぶ。横浜FMを選ぶ人もいれば、横浜FCを選ぶ人もいるでしょう。両方が好きっていう人は、あまりいないと思うんです。そのなかでのぶつかり合いですし、サポーターも含めてのぶつかり合いになるはずです。本当にメンタル的に高まる試合ですし、1シーズンのなかの1試合ではありますが、特別な一戦なのでよりこの試合に向けた思いは強いですね。F・マリノスとして負けられません」。横浜FMを選び、ともに戦ってくれるサポーターと味わう勝利は、格別なものになるだろう。
「自分たちのサッカーがあるので、それを表現できれば勝てる」
日本代表でも活躍した西村を見たいと、スタジアムに足を運ぶファンもいるはずだ。「戦う姿勢、どんどんゴールに向かう姿勢を見てほしい。F・マリノスのアタッキングフットボールをしっかり見せたいし、『横浜と言えば、やっぱりF・マリノス』と言われるようなサッカーがしたい」と意気込む。
対戦相手の横浜FCは、ここまで2分4敗で未勝利となっている。シーズン初勝利を横浜ダービーで挙げることになれば、一気に勢いづくかもしれない。それでも西村は「どこが相手であっても、対相手というよりも、対自分たちと思って毎試合、毎試合戦っています。すべては自分たちのパフォーマンス次第。どことやるにしても、自分たちのサッカーがあるので、それを表現できれば勝てると思っています」と誓った。
勝利をものにするためには、相手にゴールを許さないことも重要になる。17位に沈む横浜FCで、ここまでチームの全6得点のうち5得点を挙げ、得点ランクのトップタイに立つFW小川航基を活躍させないことは、横浜FMの守備面のポイントだろう。
ここまでの小川の活躍について、「日本人選手で1トップを任されていて、かつ結果を残しているところは、本当にすごいと思う」と言う西村だが、「ピンチになる場面を作られることもあると思いますが、僕らのディフェンスを本当に信頼している。守備でも、対相手、対小川選手に考えを置かずに、自分たちのやるべきことをやる。そうすれば、どの局面でも勝てると思います。とにかく自分たち次第」と繰り返した。
西村は「本当に熱い、バチバチした戦いになると思います。応援や声援であったり、一体感はその時、その場所でしか感じられないものです。ぜひスタジアムに足を運んでください」と呼びかける。公式戦で通算10試合目となる今回の横浜ダービー。両チームの意地がぶつかり合う熱き戦いは、きっと特別な戦いになるはずだ。
[プロフィール]
西村拓真(にしむら・たくま)/1996年10月22日生まれ、愛知県出身。2015年に富山第一高校からベガルタ仙台へ入団。4シーズン在籍後、CSKAモスクワ(ロシア)、ポルティモネンセ(ポルトガル)、仙台復帰を経て、2022から横浜FMへ加入した。豊富な運動量と決定力の高さを武器に、攻撃の主軸として活躍を続ける。
(河合 拓 / Taku Kawai)