森保ジャパン「ビッグ4」誕生の予感 新生・日本代表のポジション別“人材プール”…中心を担う三笘、久保らの存在
【識者コラム】15日に最初のメンバー発表を控える日本代表の人材をポジション別にリスト化
森保一監督率いる日本代表の再スタートが近づいている。「FOOTBALL ZONE」では3月のキリンチャレンジカップ(杯)でウルグアイ代表とコロンビア代表と対戦する“森保ジャパン第2次政権”について特集。メンバー発表が3月15日と迫っている日本代表の人材リストを識者が紹介していく。(文=河治良幸)
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【本文内の記号】
◎=主軸候補
〇=準レギュラー候補
△=その他検討候補
■GK
◎シュミット・ダニエル(シント=トロイデン)
〇中村航輔(ポルティモネンセ)
〇権田修一(清水エスパルス)
〇大迫敬介(サンフレッチェ広島)
△谷 晃生(ガンバ大阪)
△川島永嗣(ストラスブール)
△早川友基(鹿島アントラーズ)
カタールW杯では権田修一(清水エスパルス)が4試合フル出場してベスト16に貢献したが、新たなサイクルということで、所属チームでの立ち位置は重視されるはず。現状、ベルギー1部のシント=トロイデンで守護神を担うシュミット・ダニエルが筆頭。続くのはポルトガル1部のポルティモネンセでレギュラーを掴み、驚異的なシュートセーブを見せる中村航輔か。
もちろん権田修一もJ2の清水でチームを支えているが、J1サンフレッチェ広島のゴールマウスを守る大迫敬介の充実ぶりが目を引く。ブレイクを果たし湘南ベルマーレからガンバ大阪に復帰した谷晃生は、J屈指の実力者である東口順昭との競争を続けながら、開幕3試合で起用されたが、3試合で7失点。もちろん谷1人の責任ではないが、第4節は東口にチャンスが与えられており、今回の代表選考にはやや割引き材料になるかもしれない。
大ベテランの川島永嗣(ストラスブール)は今招集する必要はなく、所属チームでの状況も見ながら必要な時にという扱いになると予想。ポテンシャル枠としては鈴木彩艶(浦和レッズ)や佐々木雅士(柏レイソル)もいるが、パリ五輪代表はともかく、A代表に関しては自チームでポジションを確保することが先決なので、今回は心を鬼にして無印とする。
それよりも東京五輪ではラージグループ外ながら、鹿島アントラーズで試合に出続けている早川友基がジャンプアップか。日本国籍を取得した朴一圭(サガン鳥栖)や横浜F・マリノスからメジャーリーグサッカー(MLS)のバンクーバーに移籍した高丘陽平も、今後の活躍次第ではリストに載ってくるかもしれない。
予想が難しい両SB、中央には冨安と板倉の不動2人
■DF
《右サイドバック》
◎山根視来(川崎フロンターレ)
◎酒井宏樹(浦和レッズ)
〇菅原由勢(AZアルクマール)
〇橋岡大樹(シント=トロイデン)
△室屋 成(ハノーファー)
△常本佳吾(鹿島アントラーズ)
△中村帆高(FC東京)
△森下龍矢(名古屋グランパス)
△半田 陸(ガンバ大阪)
△小池龍太(横浜F・マリノス)
《左サイドバック》
〇伊藤洋輝(シュツットガルト)
△長友佑都(FC東京)
△バングーナガンデ佳史扶(FC東京)
△東 俊希(サンフレッチェ広島)
△佐々木翔(サンフレッチェ広島)
△中山雄太(ハダースフィールド)
△永戸勝也(横浜F・マリノス)
△中野伸哉(サガン鳥栖)
△安西幸輝(鹿島アントラーズ)
《センターバック》
◎冨安健洋(アーセナル)
◎板倉 滉(ボルシアMG)
〇吉田麻也(シャルケ)
〇谷口彰悟(アル・ラーヤン)
〇中谷進之介(名古屋グランパス)
△大南拓磨(川崎フロンターレ)
△植田直通(鹿島アントラーズ)
△瀬古歩夢(グラスホッパー)
△角田涼太朗(横浜F・マリノス)
△荒木隼人(サンフレッチェ広島)
△渡辺 剛(コルトレイク)
△藤井陽也(名古屋グランパス)
左右のサイドバック(SB)は現在、最も読みにくいポジションだ。カタールW杯の主力だった酒井宏樹が32歳、長友佑都が36歳で、酒井は浦和でキャプテンを担うが、別メニューでの調整を入れながら試合に出ており、3月シリーズは新しい選手をテストする意味でも招集するメリットが少ない。長友はFC東京で4試合中3試合が途中出場となっている。
右SBは欧州組の菅原由勢(AZアルクマール)と橋岡大樹(シント=トロイデン)をはじめ、Jリーグでも活躍が目立つ選手はいるので、森保監督がどう言うチョイスをしていくか。
左SBはカタールW杯組の伊藤洋輝は確実にしても、シュツットガルトではセンターバックを担っている。また本来の有力候補である中山雄太(ハダースフィールド)はアキレス腱の負傷から復帰できておらず、3月に招集されないのは確実だ。今回は左右をこなせる菅原が左に回るプランも考えられるが、スペシャリストの台頭が待たれる。
FC東京で長友とポジションを争うバングーナガンデ佳史扶、広島で左ウイングバックながら、守備の強度に成長を感じさせる東俊希、”森保ジャパン”経験者である安西幸輝(鹿島)にもチャンスがあると見る。
センターバック(CB)は冨安健洋(アーセナル)と板倉滉(ボルシアMG)が鉄板。ただし冨安はアーセナルで右SBの起用が続いており、もう1枚信頼できる若手・中堅のCBが台頭すれば“酒井宏樹の後継者”として、代表でも右SBがメインになる可能性も。34歳の吉田麻也はドイツ1部シャルケでフル出場を続けている。3年半後となると少し遠い目標になるが、来年1月に予定されるアジアカップまでに森保監督がどう編成するかで、見えてくる部分もありそうだ。
カタールのアル・ラーヤンに移籍した31歳の谷口彰悟も引き続き候補だが、好調の名古屋グランパスで3バックのリベロを担う中谷進之介を筆頭に、欧州組の瀬古歩夢(グラスホッパー)やJ1王者の横浜FMでレギュラーCBに定着している左利きの角田涼太朗などがチャンスを得てもいいだろう。
三笘、久保ら人材豊富な中盤ではW杯活躍の田中がメンバーから漏れる可能性も
■MF
《ボランチ》
◎遠藤航(シュツットガルト)
◎守田英正(スポルティング)
◎鎌田大地(フランクフルト)
〇田中 碧(デュッセルドルフ)
△柴崎 岳(レガネス)
△橋本拳人(ウエスカ)
△川辺 駿(グラスホッパー)
△齊藤未月(ヴィッセル神戸)
△三竿健斗(サンタ・クララ)
△野津田岳人(サンフレッチェ広島)
△岩田智輝(セルティック)
△佐野海舟(鹿島アントラーズ)
△渡辺皓太(横浜F・マリノス)
△稲垣 祥(名古屋グランパス)
△橘田健人(川崎フロンターレ)
△伊藤敦樹(浦和レッズ)
△高 宇洋(アルビレックス新潟)
△藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)
《2列目》
◎三笘 薫(ブライトン)
◎堂安 律(フライブルク)
◎久保建英(レアル・ソシエダ)
◎伊東純也(スタッド・ランス)
〇相馬勇紀(カーザ・ピア)
〇旗手怜央(セルティック)
〇中村敬斗(LASKリンツ)
△南野拓実(ASモナコ)
△原口元気(シュツットガルト)
△斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)
△満田 誠(サンフレッチェ広島)
△西村拓真(横浜F・マリノス)
△伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)
△岩崎悠人(サガン鳥栖)
△脇坂泰斗(川崎フロンターレ)
△森島 司(サンフレッチェ広島)
△藤本寛也(ジル・ビセンテ)
三笘薫(ブライトン)、堂安律(フライブルク)、久保建英(レアル・ソシエダ)、鎌田大地(フランクフルト)の4人は欧州で高いパフォーマンスを維持しており、年齢的にも3年半後に脂が乗ってくる意味で“新生・森保ジャパン”の「ビッグ4」になっていきそうだ。鎌田に関しては2列目の候補でもあるが、フランクフルトでボランチの起用も増えており、三笘、堂安、久保と併用する意味でボランチとした。
無論、4-3-3ならインサイドハーフの一角を担うことになるだろう。そこにカタールW杯の主力で、30歳ながらフランス1部のスタッド・ランスで安定したプレーを続ける伊東純也、吉田に代わるキャプテン候補としても期待される遠藤航(シュツットガルト)、ポルトガル1部のスポルティングで中盤の主力に定着している守田英正の7人を◎とした。
MFは日本のストロングでもあるだけに、彼らを全て招集したら大半が埋まってしまう。カタールW杯のスペイン戦でMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いた田中碧も有力だが、ドイツ2部デュッセルドルフでサブに回るケースもあり、欧州やJ1で活躍が目立つ選手を入れるなら代わりに外れる可能性もある。
2列目の有力候補として相馬勇紀(カーザ・ピア)、旗手怜央(セルティック)、そして急上昇中の中村敬斗(LASKリンツ)をあげるが、FWの選手がサイドハーフに回ってくる選択肢も考えると、フルメンバーの代表で一気に招集するのは難しいかもしれない。カタールW杯で10番を背負った南野拓実は所属のフランス1部ASモナコでの状況を考えると、有力候補に入れるのは無理がある。
カタールW杯のメンバーからまさかの選外となった原口元気は森保監督が、欧州視察で直接陳謝したことを報告しており、新天地のシュツットガルトでスタメン出場を続いけていることからも招集もあり得るはず。31歳ながら徹底した体調管理で知られるだけに、3年半後のリベンジも不可能ではないだろう。
そのほか、満田誠(広島)など前回E-1に招集された選手や欧州の所属クラブで活躍が目立つ選手をリストに入れたが、無類の“ボール回収力”を見せる佐野海舟(鹿島)、変幻自在の仕掛けと決定力を誇る伊藤涼太郎(アルビレックス新潟)は欧州組にも負けないスペシャルな個性を持つタレントとして未招集から特選した。
軸と呼べる選手がいないFW、やはりファーストチョイスは前田か
■FW
〇前田大然(セルティック)
〇上田綺世(セルクル・ブルージュ)
〇古橋亨梧(セルティック)
〇浅野拓磨(ボーフム)
△町野修斗(湘南ベルマーレ)
△細谷真大(柏レイソル)
△西村拓真(横浜F・マリノス)
△大迫勇也(ヴィッセル神戸)
△林 大地(シント=トロイデン)
△小川航基(横浜FC)
△オナイウ阿道(トゥールーズ)
△田川亨介(サンタ・クララ)
現状、軸と呼べる選手がいないが、セルティックの前田大然はスペシャリティを考えても限りなく◎に近い存在だ。ベルギー1部セルクル・ブルージュで13得点を記録している上田綺世は三笘、久保、堂安といった東京五輪の仲間が2列目の主力に定着することで、代表でも得点力を発揮しやすくなれば、新エースとして近い将来の◎になるポテンシャルは十分にある。また、セルティックでゴールを量産する古橋亨梧の決定力は誰もが認めるところだろう。森保監督のスタイルとの相性が問題にあがるが、新たなサイクルのスタートから絡むことで、前田や上田とともに、ソリューションを見出すかもしれない。
浅野拓磨(ボーフム)は1トップもサイドハーフもこなせる選手という意味で、本質的には前田と重なる部分もある。追加招集でカタールW杯メンバーに選ばれながら、出番の無かった町野修斗(湘南)も23歳の伸びしろを買われて、最初の活動に招集されるか。
パリ五輪世代のエース候補である細谷真大(柏レイソル)が割って入る余地は十分あるが、同時期に大岩剛監督が率いるU-22代表の欧州遠征があることを考えると、MFでリストにあげた斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)らと、3月はそちらの活動に招集される見込みが強い。横浜FMの西村拓真はMFともFWとも言えるので、こちらにも△で入れた。FWはゴールという分かりやすい数字がそのまま評価につながるポジションでもある。今回はリストに入れてない選手が数か月後には有力候補になっているかもしれない。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。