川崎DFジェジエウの退場は「教科書的な判定」 VAR介入→レッドカード…“DOGDO”適用シーンを元主審・家本氏が解説
【専門家の目|家本政明】PKからフリーキックに判定変更、川崎DFジェジエウのファウルシーンを考察
2月17日に行われたJ1リーグ開幕戦・川崎フロンターレ対横浜F・マリノスの一戦は、昨季王者・横浜FMが2-1と勝利。敗れた川崎は、後半途中に守備の要であるDFジェジエウがビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)介入の末、レッドカードで退場となったが、このシーンについて元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は「これまでの教科書的な判定事象」と紹介している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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問題のシーンが起きたのは、2-0で横浜FMがリードして迎えた後半39分だった。センターサークル付近でファウルを受けた横浜FMは、直後にMF西村拓真がリスタート。中央のスペースにFWマルコス・ジュニオールが抜け出すと、背後からジェジエウがスライディングタックルを仕掛けたことでM・ジュニオールが転倒した。
山本雄大主審はまず、ペナルティーエリア(PA)での事象と判断。横浜FMにペナルティーキック(PK)を与え、DOGSO(通称ドグソ/Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity/決定的な得点機会の阻止)のジェジエウにはPA内でボールへのチャレンジの点が考慮(3重罰の回避)されイエローカードが提示された。
しかし、ここでVARが介入。ファウルの位置がPA外だったと確認され、判定がフリーキック(FK)に変わる。またボックス外での事象だったため、ジェジエウのプレーがレッドカードの対象となり一発退場に変更された。
この事象について家本氏は「DOGDOなどがファン・サポーターに浸透してきているなかで、これまでのスタンダードの教科書的な判定事象だ」と述べ「審判団のいいコミュニケーションで、時間もわりとスムーズに行われた正しい判定」と評価している。
「ジェジエウ選手は、マルコス選手と接触してしまったのは自覚している。スライディングの際に、マルコス選手の左足とジェジジエウ選手の脇腹が当たりコンタクトを受けて倒れているので、反則は間違いない」
家本氏はファウルの判定について、山本主審の判断が間違っていないことを指摘。そのうえで、「VARが確認し事象がPA外だった。ファウルの判定はすでに決まっているので、場所だけが変わった」とFKに変更された流れを明かしている。
また、「ジェジエウ選手は元々DOGDO対象だったが、ペナルティーエリア(PA)内なので一段下がってイエローになっていた。VARチェックによってPA外だと分かり、レッドカードが代わりに出されている」と今回の件は正しいVAR介入の一例だとしている。
開幕戦でいきなり起こったVARでの退場案件。DOGDOも関わる大きなシーンだったが、しっかりと審判団が判断した“好例”でもあったようだ。
なお、DOGSOが適用される4要件は以下のとおり。
※4つすべてを満たすことが必要
(1)反則とゴールとの距離
(2)全体的なプレーの方向
(3)ボールをキープ、またはコントロールできる可能性
(4)守備側競技者の位置と数
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。