シュツットガルト原口元気「やっぱ楽しいなって」 移籍の意味と確かな手応え「メンタル的にはしんどいけど…」【現地発コラム】

ウニオン・ベルリンに所属するMF原口元気【写真:Getty Images】
ウニオン・ベルリンに所属するMF原口元気【写真:Getty Images】

新天地シュツットガルトで見せるポジティブな側面、攻撃の起点になる原口

「1枚剥がすというのがキーワードの1つ」

 ウニオン・ベルリン時代にMF原口元気(※編集部注:2023年1月にウニオン・ベルリンからシュツットガルトへ完全移籍)がそんなふうに口にしていたことがある。中盤でボールを引き出すだけではなく、そこで攻撃の起点を作り出す。パスを受けて終わりではなく、相手のマークをはがして、前を向いてチャンスへ結び付ける。そんなプレーがどんどんできるようになったら、それが自身の成長につながっていくと原口はイメージしていた。

 移籍先のシュツットガルトではまさにそうしたプレーが求められてる。ブルーノ・ラッバディア新監督の下、ビルドアップを丁寧にしながらボールの出口を見つけ出し、攻撃へと転じようとはしているが、上手く相手守備を攻略できずに、軽率なミスからピンチにというシーンがまだ少なくない。

 そうしたなか、原口のところで相手のプレッシャーを外して、ゴール方向へ仕掛けていける場面が少しずつ増えてきているのはポジティブな側面だろう。

 20節のフライブルク戦(1-2)では、前半29分に上手く相手との間に身体を入れながら日本代表MF遠藤航(シュツットガルト)へパスを渡し、そこからの攻撃が左サイドへ展開されチャンスへつながったシーンがあった。後半21分には、インターセプトを狙いに来た相手の動きを逆手に取り、上手く前を向いてボールを受けると、ドリブルから右サイドに展開して攻撃の起点を作り出した。効果的に攻撃へつながるプレーができていることで、この試合だけではなく、ほかの試合でも原口の動きを味方が感知してパスが集まる傾向が強まっている。

「前回の試合(ブレーメン戦)では、65タッチぐらいしてた。ウニオンだったら大体30タッチぐらいだから。今日のほうが(ボールタッチは)少なかったと思うけど、やっぱ楽しいなっていう感じだから。これで勝てるようにしていけたら、来た意味があるなと思う。(勝てていないので)メンタル的には少ししんどいですけど、個人に向けるといいなと感じています」(原口)

見えてきた課題「運んで、チャンスを作れている。ただ…」

 中盤でボールは集まってきている。そこからチャンスになりそうな場面も増えている。ウニオンでプレーしていた時期に「すごいプレッシャーが強いなかで、どれだけ剥がしていけるかだと思うので。そこに対する改善もドリブル練習やったり、身体のことも変えたりしようとしてる」と話していたような効果が見られている。

 だからこそ、そこから確かなゴールチャンスを作り出するために何ができるかが重要になる。原口としては、パスを預けたあとにもう一度ボールに絡めるようにしていきたいと考えているようだ。

「そうですね。航もですけど、僕と2枚で結構(ボールを)運んで、チャンスを作れている。ただそこから先で(味方が)そのまま行っちゃうんでね。1本すごいのを決めてくれましたけど。もうちょっと一度スピードダウンしてくれれば、もう1回(僕らが)絡めるんですけど」(原口)

 この日の得点機が左サイドのクリス・ヒューリッヒによるミドルシュートやドリブルなど単発的な仕掛けが多くなってしまったのは、良くもあり反省材料にもなる。ここまで6ゴールで、チーム内得点王であるギニア代表FWセール・ギラシが負傷のために、数週間の離脱を余儀なくされる。得点機をチームとしてどのように創出するかは極めて重要なテーマだ。

 2023年に入ってまだ勝ち星のないシュツットガルト。とはいえ、チームとしての出来が極端に悪いわけではない。原口自身も手応えは感じている。それだけに、勝ち点3という目に見えた結果へとつなげていく活躍が期待される。簡単なことではない。だが、そのために原口は新しい挑戦を決断し、ここへ来たのだ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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