町田新助っ人デューク、“W杯歴史的弾”が生んだゴールへのこだわり 「日本でプレーしている限り名声を残したい」

デュークは新天地のFC町田ゼルビアでJ1昇格のために全力を注ぐ【写真:(C)FCMZ】
デュークは新天地のFC町田ゼルビアでJ1昇格のために全力を注ぐ【写真:(C)FCMZ】

【インタビュー】黒田新監督との相性に手応え「私の強みにフィットしている」

 J2のFC町田ゼルビアは、高校サッカー界の名門である青森山田高を率いた黒田剛監督を新たな指揮官に迎え、悲願のJ1昇格を目指す。そのなかで、期待の新戦力が来日通算7年目を迎えるFWミッチェル・デュークだ。オーストラリア代表の一員として出場した昨年のカタール・ワールドカップ(W杯)でゴールも決めたアタッカーは、新天地での活躍に燃えている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)

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 2015年に来日したデュークは、清水エスパルスで4年間プレー。その後、母国のウェスタン・シドニー・ワンダラーズ、サウジアラビアのアル・タアーウンを経て、21年夏にファジアーノ岡山へ移籍。昨季はJ1昇格争いを繰り広げた岡山で、J2リーグ戦36試合8ゴールをいう成績を残した。

 カタールW杯での活躍で去就が注目されたなか、昨年末にFC町田ゼルビアへの移籍が決定。デュークは「W杯後にたくさんの選択肢、可能性がありました。そのなかで、私は日本が好きですし、引き続き日本でプレーしたかった。岡山からライフスタイルを変えて、東京のほうに住みたいと思い、FC町田ゼルビアを選びました。このチームJ1に昇格するというモチベーションの高さにも惹かれました」と、新天地を求めた理由を明かす。

 ファジアーノ岡山時代、対戦相手として見ていたFC町田ゼルビアの印象は「フィジカルに強い選手がいて、いいチーム」。それは、自分が実際に所属選手になっても変わらないという。

「選手の入れ替わりはありましたが、充実したプレシーズンを送れましたし、本当にいいチームだと思います。私自身、W杯出場後に少し長めの休みをもらったので、100%のコンディションに近づけるように努力しています」

 FC町田ゼルビアは、今季から青森山田高を指揮していた黒田剛監督を招聘。ボールを保持でき、1対1の強度でも負けない、ショートカウンターやリスタートからでも得点を奪える総合力の高いサッカーを目指す。Jリーグ初采配に挑む指揮官の下でのプレーは、デュークの目にはどのように映っているのか。

「(黒田)監督にとっても、プロのチームを率いるのは初めてのこと。私も2011年からプロキャリアを歩み、さまざまな監督と一緒に仕事をしてきましたが、監督のサッカーが私の強みにフィットしていると思います。具体的な話をしたわけではありませんが、私もオーストラリア代表でプレーし、ワードカップにも出場した人間なので、ある程度アドバイスを送れるような立場にはある。リーダーとして、若い選手たちのお手本にならないといけません。個人の目標としては(J2)得点王、チームとしては少なくともJ2で優勝してJ1に昇格したいです」

デュークは個人の目標として「J2得点王」を掲げる【写真:(C)FCMZ】
デュークは個人の目標として「J2得点王」を掲げる【写真:(C)FCMZ】

J1昇格への鍵は「チーム全体のバランス」

 デュークが目標として「得点王」を挙げる理由の1つには、カタールW杯での経験があるという。グループリーグ第2戦チュニジア戦で決めたヘディング弾は、J2に所属している外国籍選手としてW杯初ゴールにもなった。

「国を代表するチームで、しかもW杯で得点できたことはいい経験になりましたし、大きな自信を与えてくれました。その経験を生かして、町田でもしっかりゴールを決めていきたい。そうすれば、チームの勝率は必然的に上がっていきますから」

 デュークはJ1、J2のどちらも経験。昨季はファジアーノ岡山でレギュラーシーズン3位、J1参入プレーオフに出場し、1回戦でモンテディオ山形に0-3と涙をのんだ。“魔境”の異名を持つJ2の戦いを制するには何が必要になるか。

「チーム全体のバランスが必要ではないかと思います。FC町田ゼルビアは若い選手が多いので、そのエネルギーをどう使っていくか。あとは、やはり守備です。守備がしっかりしていてこそ勝率も上がってくる。昨年のファジアーノ岡山もそうでした。守備をしっかり構築して、失点しないことが求められます。もちろん、攻撃でしっかり得点を取ることも重要です。ファジアーノ岡山はマルチプレーヤーが多く、6人ほど得点を取れる選手がいました。得点の選択肢を多く持ち、実際にゴールを奪うことで、勝率を上げられると思います」

 今年1月で32歳となったデューク。初めて出場したW杯でゴールも挙げ、今が最も脂の乗っている時期と言っていい。新たな挑戦の場に選んだFC町田ゼルビアのファンに、このようにメッセージを送る。

「私の強みはハイプレス、ヘディング、運動量、周りを動かせることなど、いろいろあるので、ぜひそこをFC町田ゼルビアのファンの方に見てもらいたいです。オーストラリア出身で、日本でこんなに長くプレーする選手は、ほとんどいなかったと思います。Jリーグはすごく競争力が高く、そこで生き残っていくことは簡単ではないので、半年や1年で帰国してしまうこともある。そのなかで、私は日本の生活を楽しみながら、プレーできています。選手として必ず引退の時は迎えるもので、いつかオーストラリアに帰る日も来ると思いますが、日本でプレーしている限りは『ミッチェル・デュークは、得点もできる本当にいい選手だった』と名声を残したい。日本のみなさんの印象に残るように、頑張りたいと思います」

 悲願のJ1昇格を目指すFC町田ゼルビアにとって、デュークの存在は大きな力になるのは間違いない。

[プロフィール]
ミッチェル・デューク/1991年1月18日生まれ、オーストラリア出身。セントラルコースト―ブラックタウン・シティ―セントラルコースト(すべてオーストラリア)―清水―ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(オーストラリア)―アル・タアーウン(サウジアラビア)―ウェスタン・シドニー・ワンダラーズ(オーストラリア)→アル・タアーウン―岡山―町田。J1通算82試合2得点、J2通算57試合12得点。高さと強さを兼備するだけでなく、ハードワークも厭わないアタッカー。オーストラリア代表の一員として出場した昨年のカタール・ワールドカップでは、グループリーグ第2戦チュニジア戦で決勝点を挙げ、J2に所属している外国籍選手としてW杯初ゴールを刻んだ。

【試合情報】
開催日:2023年2月19日(日)
カテゴリー:J2リーグ第1節
対戦カード:FC町田ゼルビア vs ベガルタ仙台
キックオフ時間:14:00
試合会場:町田GIONスタジアム

(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)



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