三笘薫の無双ドリブル、世界的にオリジナル型? 守備者が「気付けば抜かれる」特異技を考察
【特集|三笘薫“解剖”/識者コラム】プレースタイルを基にオリジナリティー性に焦点
今季プレミアリーグで大ブレイクを遂げた三笘薫は、英国中に衝撃を与えた。昨年のカタール・ワールドカップ(W杯)を経て、世界最高峰リーグで輝きを放つ日本人アタッカーは一体、何が凄いのか。「FOOTBALL ZONE」では、さまざまな角度から三笘の“現在”に迫るべく特集を展開。このコラムでは守備者を翻弄させる三笘独自のプレースタイルを改めて考察し、オリジナリティー性に焦点を当てる。
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プレミアリーグのブライトンで躍動する三笘薫。第22節ボーンマス戦で1-0の勝利に導く決勝ゴールを挙げ、直近の公式戦7試合で5得点と結果を残している。最近はヘディングでのゴールも話題になっているが、三笘と言えば左からのドリブル突破が最大の武器であることに疑いはない。
イギリスの「デイリー・メール」紙やスペイン大手の「マルカ」紙でも、筑波大学で書き上げた卒業論文「サッカーの1対1場面における攻撃側の情報処理に関する研究」が取り上げられるなど、その当時から1対1に着目して、徹底的にそのスキルを磨いていたことは日本では周知の事実だ。
簡潔に結論を言えば、いかに相手の重心をずらして逆を取るかいうことになるが、ピッチ上でそれを体現することはもちろん、容易ならざることだろう。ここのところ対戦相手も三笘を止めるための対策を講じてきていることが守備の姿勢からも伝わるが、それすらも逆利用されているところがある。
ボーンマス戦の前半35分に興味深いシーンがあった。右サイドの攻撃からMFソリー・マーチがグラウンダーで流したボールを左サイドで三笘が受けた。ボックス内にポジションを取っていた相手サイドバック(SB)のDFアダム・スミスと三笘の1対1になったが、スミスが3メートルほど手前に立ち、さらに2人の選手とGKのネトがゴール前のニアを埋める体勢となった。
そこで三笘は右足のアウトでインに突っ込むと見せかけて、まさにスミスの重心が進行方向に傾いた瞬間に、右足のインで縦に切り返しながら残した左足に当てて、スミスの左側からいわゆる「ニアゾーン」を攻略した。これにより、同時にうしろのDFクリス・メファムとコロンビア代表MFジェフェルソン・レルマも逆を取られる形となった。
三笘はディフェンスとGKの間から中に左足で速いショートクロスを入れるが、勢いよく飛び込んできたMFパスカル・グロスへはわずかに合わず、ゴールはならなかった。しかし、ブライトンとしての狙いは完璧で、ディフェンスを総崩れさせる三笘のプレーもここはパーフェクトだった。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。