日本サッカー飛躍の鍵は「誰もが認める選手」 ドイツ人指導者と考えるW杯攻略法「出現が待ち遠しい」
【インタビュー#4】現地指導者が見た日本代表「戦術での成長ぶりが見事」
ドイツのケルンでさまざまな年代の育成指導者を歴任し、U-14までの育成統括部長を務めていたドイツ人指導者クラウス・パプストを取材。現在もケルンで育成指導者として数多くの選手と向き合っているパプストとともにカタール・ワールドカップ(W杯)を振り返る。第4回のテーマは「日本代表」だ。(取材・文=中野吉之伴/全4回の4回目)
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指導者講習会のため日本を何度も訪問した経験を持つパプストは、日本人の心構え、義務感、献身性、細部へのこだわりを持った取り組みなどを高く評価している。
そんなパプストが、今後ペナルティーキック(PK)戦までもつれ込んだ際に勝ち抜くうえで大切なこと、そしてW杯決勝トーナメントでベスト8の壁を破るためのポイントについて語っている。
「僕は日本代表の内部のことまで知っているわけではない。だから外から好き勝手なことを言うのは避けたほうがいい。あくまでも日本代表の戦いぶりを見て、僕個人が感じたことを伝えたいと思う。
日本代表に関してはこれまで、その技術レベルは高く評価されながらも、戦術的な部分で問題を抱えていたと思われていた。だが、今大会ではそこ(戦術)での成長ぶりが見事だった。ドイツ、スペインを相手に勝利しての決勝トーナメント進出は、誰でもできることではない。素晴らしいことだ。
決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に負けたのは残念だ。PK戦は簡単ではない。そこからさらに進むためには、やはり強靭なメンタリティーが必要になってくる。
今大会ではグループリーグで敗退となったドイツ代表だが、かつてはローター・マテウス、シュテファン・エッフェンベルク、パウル・ブライトナーという凄い選手がいた。彼らはPK戦となってもまるで動じない。平常心で決めてしまう。
例えば、1982年スペインW杯準決勝、ドイツ対フランスのPK戦ではホルスト・ルベッシュが最後のキッカーだった。決めたら決勝進出というシーン。ボールはすでにPKスポットに置かれていたのだが、ルベッシュはボールを置き直したり、深呼吸をしたりすることもなく、何食わぬ顔で助走を取り、見事にゴールネットを揺らした。蹴る前から『自分は間違いなく決める』と心の底から確信していた。
今大会においても、上位進出した国にはそうした選手がいた。フランス代表のキリアン・ムバッペは決勝戦でPK戦も含めてPKを3本も決めたのは、技術レベルもそうだが、尋常ではない強靭なメンタリティーを持っていることの表われだ」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。