シュツットガルト遠藤航への依存度が高くなりすぎている? 多岐にわたる仕事と多大な貢献…攻守を支える“オーガナイズ力”

徐々にW杯モードも目の前の試合に集中「できるだけ勝ち点を稼ぐ」

 攻撃においても遠藤のプレーはチームにとって重要だ。例えば前半28分、自陣ペナルティーエリア内でボールを奪った遠藤が相手のマークを振り切り前線へパスを預けて、すぐにダッシュで攻め上がろうとする素晴らしい動きを見せていた。

 このシーンでは、ほかの選手が付いてこなかったため、チャンスにはつながらなかったが、ただこのプレー以降少しずつシュツットガルトの動きが良くなってくる。各選手の動きが活発になり、サイドで上手く数的有利を作りながらゴールへ迫る動きが増えてきた。前半35分にFWティアゴ・トマスがペナルティーエリア内で鋭いターンから前を向き、右足で1点差に迫るゴールを挙げると、試合の流れは分からなくなってくる。

 後半に入ると遠藤がさらに攻守に好プレーを披露していく。相手のパスを読み切ってのインターセプトや鋭い出足でのボール奪取だけではなく、そこから相手が陣形を整える前に素早く通す前線の味方への縦パスや逆サイドスペースへの高精度ロビングボールがかなり効いていた。

「やっぱりボランチでプレーすると、攻守(の局面)で変わっていかなきゃいけない。自分の良さは立ち上がりから出せていたつもり。(味方の)ファーストタッチが決まっていればもしかしたらアシストになりそうなシーンもあったし、後半は特にカウンターで奪ったあと、(相手守備の)裏は常に空いていた。あそこで前の選手が上手く(ボールを)収めて決め切ればっていうところだった。自分のパフォーマンスはそんなに悪いと思っていないので、それを続けていくところ、プラスチームとしてさらにどうしたら点が取れるのか、立ち上がりでやられないところを考えていければ」(遠藤)

 11月1日にはカタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表メンバーに選ばれた遠藤。気持ちの高まりはある。だがその前にまだシュツットガルトでやるべきことがある。

「メンバーが決まって、いよいよっていうところなので、気持ち的にはもちろん少しずつW杯モードという感じはします。まだ試合も残ってますので、まずはそこでできるだけ勝ち点を稼ぐっていうところに集中していきたいと思います(11月8日のブンデスリーガ第14節ヘルタ・ベルリン戦で負傷交代)」(遠藤)

 大きな手応えとともに、W杯へ突き進んで行ければ最高だ。

(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)



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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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