アセンシオと家長昭博 デビュー前夜の衝撃…11年前に分かれた明暗 マジョルカ元同僚が明かした名手の凄み

マジョルカ時代に共闘したマルコ・アセンシオ(左)と家長昭博(右)。(写真は2013年11月時のもの)【写真:島田徹】
マジョルカ時代に共闘したマルコ・アセンシオ(左)と家長昭博(右)。(写真は2013年11月時のもの)【写真:島田徹】

【スペイン発インタビュー】ジダン氏もアセンシオを絶賛「メッシを除けば最高の左足」

 スペイン1部レアル・マドリードのスペイン代表FWマルコ・アセンシオ。所属クラブではブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールとFWロドリゴ・ゴエスに出場機会を奪われる形でベンチを温めているとはいえ、イングランドなど複数クラブが獲得に関心を示し、移籍市場が閉じたあとも来年以降の去就が取りざたされるなど、欧州トップクラブがその動向を追っている。

 東京五輪準決勝では日本の決勝進出の夢を打ち砕くミドルシュートを決め、カタール・ワールドカップ(W杯)でも行く先に立ちふさがる可能性がある。そんな選手のプロデビュー当時のチームメイトで、2部時代のマジョルカで70試合、プロ通算140試合に出場したDFビエル・コンパニー氏に当時の様子、同時期に一緒にプレーしていた元日本代表MF家長昭博との違いなどを聞いた。(取材・文=島田徹)

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 コンパニー氏から見て4歳年下のアセンシオに初めて会ったのはマジョルカBでの練習だった。「彼は下のカテゴリーで活躍していてBチームの練習に昇格していた。そのなかで1対1をする機会があったんだけど、2、3回ドリブルで圧倒された。普段僕はこういうプレーを得意にしていただけにびっくりした。チームメイトからは『ユースの選手にやられたな』って冷やかされた」と言う。

 選手としての特徴については「左足のキックが素晴らしい。以前、(ジネディーヌ・)ジダン監督も『(リオネル・)メッシを除けば、自分が見た中で最高の左足を持っている』と言ったこともある。あとは試合の流れを読む力と縦への動き。いったんスピードに乗ったら簡単に2、3人を抜いて行く」と評している。

 もっともコンパニー氏から見てアセンシオ一番の強みは、どんな状態でも平常心でいられる精神面だと言う。「彼は幼くして母親を亡くしたことで苦しんだ。その経験から一番大事なのは健康だと考えている。彼にとってサッカーはゲーム(遊び)でしかなく、だから神経質にならない。それにしっかりとした自信があり、ほかの人たち、ファンが自分のことをどう考えているのかを気にせず、純粋にプレーを楽しんでいる」。

 常に自然体でいる姿勢はプロデビューの前から変わらない。

「彼のデビュー戦を前に僕らはホテルで同室だった。先にトップチームでデビューしていた僕は彼に『マルコ、緊張しないでいつもどおりやればいいから』ってアドバイスしたんだ。でも『僕はいつも落ち着いてるよ。プレーしたい気持ちは強いけど試合前にナーバスになったことはない』って返された。17歳の少年にそんなこと言われて驚いたのを覚えている」

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島田 徹

1971年、山口市出身。地元紙記者を経て2001年渡西。04年からスペイン・マジョルカ在住。スポーツ紙通信員のほか、写真記者としてスペインリーグやスポーツ紙「マルカ」に写真提供、ウェブサイトの翻訳など、スペインサッカーに関わる仕事を行っている。

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