森保ジャパンの10番・南野拓実、“不要論”は妥当か 戦力的価値を考察、欧州遠征でシビアに見極めるべきポイントは?
【識者コラム】日本代表の4-3-3にミスマッチ? 南野の起用法に焦点
日本代表の10番を背負う南野拓実だが、一部で“不要論”が起こる理由は大きく2つある。一つは前所属のリバプール(イングランド)でなかなかリーグ戦の出番を得られず、移籍先のASモナコ(フランス)でも、ここまで十分なチャンスを得られていないこと。もう一つは森保一監督がカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の途中から採用した4-3-3(4-1-4-1)において明確にはまるポジションがないからだ。
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森保監督はこのシステムの左サイドで南野を起用しているが、縦に突破できるタイプではなく、交代で入ってくる三笘薫(ブライトン)のほうが、個人で違いを作りやすい。右の伊東純也(スタッド・ランス)にしてもそうだが、チームがいかなる状況でもボールを持って前を向けばドリブルでチャンスを作り出せる。要は武器が分かりやすいわけだ。
南野にしても2次予選のようにボールを常に持って主導権を握れる時間が長ければ、鎌田大地(フランクフルト)と近い距離感でバイタルエリアを崩したり、ボックス内で絡みやすい。森保監督が2列目の右に伊東、中央に鎌田、左に南野という並びを継続的に使った時期もあった。
しかしながら、そのシステムを機能させるキーマンである大迫勇也(ヴィッセル神戸)がコンディションなどの理由で常時選ばれなくなり、代わりに浅野拓磨(ボーフム)や古橋亨梧(シュツットガルト)など、裏抜けを得意とするFWを1トップに起用する形を取り出した関係から、2列目や中盤の並び、役割に変化が出てきた。
そうした状況下で、南野のプレーがボヤけてきているのも確かだ。ここ最近はゴールという結果がなかなか出ていないこともあり、南野の起用にこだわる必要はないという声が出るのは筋違いでもない。ただ、ドイツ、コスタリカ、スペインと対戦するW杯本大会で、その才能をうまく生かせないのは勿体ないと考えている。
まず、新天地のモナコでは加入当初から厳しいフィジカルトレーニングを課していることをフィリップ・クレマン監督が説明してくれた。もともと伊東がベルギーのヘンクに加入した当時の恩師で、その後はクラブ・ブルッヘでもリーグ優勝のタイトルを獲得したクレメント監督は昨シーズン途中からモナコを率いている。
クレマン監督が掲げるハイプレスとモビリティーの高いサッカーで、南野が90分出るためのトレーニングに慣れるには少し時間がかかるし、実際に疲れが出ていたという。それがようやく解消されてきたところで、伊東との日本人対決ともなったランス戦では途中出場ながら、4-4-2の右サイドから1得点1アシストを記録した。
ランス戦後、クレマン監督に「タキはドリブラーではないけど、サイドでどう生かせるか」を聞くと「その通りだね。周りとの連係が重要だと会見でも話したところだ」と回答してきた。
「アタッカーが新天地に加入した時には連係面はとても大事。お互いが理解して、何を求めているか、どうすればもっとよくなるかを知り合うことに時間がかかるし、徐々に適応していくと思う。それはノーマルなことだ」
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。