日本代表の2トップ導入案は得策か 1トップへの固執は勿体ない?…“FW問題”&「久保システム」の可能性を検証
【識者コラム】2トップ起用に適応する久保&伊東の現状から、日本代表の2トップ導入案にフォーカス
“ラ・レアル”ことレアル・ソシエダ(スペイン)で、これまで何度か使われている4-4-2のFWに久保建英を配置するシステムだが、日本代表が抱える“FW問題”も相まって、森保一監督の取材でもメディアから質問が上がった。それに関連して筆者も森保監督に質問したが、伊東純也が同じく新天地のスタッド・ランス(フランス)で同じく2トップの一角に起用されていることもあり、久保や伊東を前線の中央で生かすプランも可能性としてはありそうだ。
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久保はUEFAヨーロッパリーグ(EL)のマンチェスター・ユナイテッド戦でも同ポジションで輝きを放った。試合を決定付けるPKにつながった、元スペイン代表MFダビド・シルバへの絶妙なパスはCKの流れからだったが、久保の特長は右サイドや中央の2列目よりも生かしやすいのは確かだ。“ラ・レアル”ではシルバの代わりにトップ下を担うこともあるが、2トップほど存在感を発揮できていないという現状もある。FWと言ってもスタートポジションで、実際は中盤に下りることもあれば、サイドに流れることもある。そうした動きが監督から許容されているからこその輝きだろう。
現在の日本代表も大迫勇也(ヴィッセル神戸)のコンディションがなかなか万全にならない状況で、ベルギーで奮闘する上田綺世(セルクル・ブルージュ)に期待は懸かるが、彼ももともと1トップより2トップのほうがフィニッシャーの特性を生かせるタイプではある。E-1選手権で3得点をマークし、26人枠のラストピースに名乗りを上げている町野修斗(湘南ベルマーレ)にしても同様だ。
古橋亨梧(セルティック)や浅野拓磨(ボーフム)は裏抜けをメインとする1トップは務まるが、本質的には2トップの一角で生きるタイプだ。フライブルクで好調の堂安律も右サイドが定位置になっているが、2トップならFW起用でも十分に力を発揮できる。ASモナコで起用法が定まっていない南野拓実にしても、2トップならFWとして生かしやすい。そうなると2トップは熾烈な競争になるが、それはそれでポジティブだ。
そうした人的なリソースを考えると1トップに固執するのが勿体ないようにも思える。もちろん、これまで森保監督がアジア予選で採用してきた4-2-3-1と4-3-3(4-1-4-1)はチームとして慣れているので、もう準備期間も限られる状況で、これまでのコンセプトを浸透させやすいメリットはある。
しかし、言い換えればグループリーグの対戦相手はアジア予選や6月の代表戦を情報源としているはずで、スカウティングが1つの会議になるワールドカップ(W杯)において、直前のシステム変更というのは1つの有効手段になり得る。A代表と同じ基準では語れないが、先日のU-20女子W杯で準優勝を果たした“ヤングなでしこ”の池田太監督が、直前に5-3-2を導入して躍進に導いたエビデンスは森保監督にも当然伝わっているだろう。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。