ソシエダ久保建英の“FW起用”は続く? 「逆に裏を狙え」イマノル監督に引き出されたスペイン4季目の新境地

試合が行われたスタジアム正面【写真:高橋智行】
試合が行われたスタジアム正面【写真:高橋智行】

中盤の上質なタレントが揃うソシエダ、久保に得点力不足解消が求められる可能性

 昨季の久保は残留を目指して守備に奔走するチームに所属していたため、積極的に相手ペナルティーエリア内に足を踏み入れる機会は少なかった。一方、今季は突如FWで起用されたにもかかわらず、マジョルカでの初年度を彷彿とさせる素晴らしいパフォーマンスを披露し、すぐさま監督の期待に応えたことは見事としか言いようがない。

 スペイン各紙はそんな久保を高評価。なかでも「AS」紙やソシエダの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は最高点を付けていた。しかし久保は完全には満足していない。「外から見るよりもはるかにやりづらかった」と話したように、まだ改善の余地があることを認めていた。また、ボールロスト数がいつもより多く感じたが、それはこれまでよりもゴールに近い位置でプレーしたため致し方ないことだろう。

 中盤にMFマルティン・スビメンディ、メリーノ、MFブライス・メンデス、MFダビド・シルバといった新旧のスペイン代表経験者が揃うため、久保は今後もFWでプレーする場合、今回のように上質なパスを受けることが期待できそうだ。

 また、いきなり高い決定力を示した久保に対し、得点力不足解消の役割が求められるかもしれない。なぜならソシエダは昨季、リーガを6位で終えたにもかかわらず、総得点は20チーム中11番目の40ゴールと少なく、プレシーズンでも同様にゴール欠乏症に陥っていたためである。さらにそれを解決する鍵となる長期離脱中のエース、MFミケル・オヤルサバルの復帰が来年に持ち越される可能性が高くなっている。

 久保が今後もずっとFWで起用されるのかは分からないが、もしこのまま同ポジションで活躍した場合、分析力に優れたリーガのチームがそのまま放っておくわけはないだろう。これまで以上に激しいマークを受けることが予想され、久保は新たな課題に挑むことになると思うが、どのように対処して乗り越えていくのかを見るのが非常に楽しみである。

 初戦で勢いに乗った久保は、21日にホーム開催となる次節で、少年時代に所属したバルセロナと対戦する。久保は古巣の印象について、「今までと違って明らかな格上ではない」と自分たちのチーム力に自信を伺わせ、「同じ土俵かと言われたら分からないが、僕たちの方が順位も上だし、ホームなので可能性も5割以上ある」と勝利への意気込みを語っていた。

 これまではどちらかというと右サイドを起点としたドリブル突破を武器にクロスやスルーパスを狙うなど、チャンスメイクの役割が多かった久保だが、今季はイマノル監督によって引き出された新境地で、さらにステップアップする姿を見ることができそうだ。スペイン4季目を迎え進化を続ける久保に日本中が大きな期待を寄せるワールドカップ開催の新たなシーズンが幕を開けた。

高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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