PSGに6万人、J1に5万人、日本代表に5000人…歴然とした人気格差 “満員終焉”は日本サッカーが成熟した証と言える

PSG対川崎戦の国立競技場と日本対香港のカシマスタジアムの観客数に注目【写真:Getty Images & 髙橋 学】
PSG対川崎戦の国立競技場と日本対香港のカシマスタジアムの観客数に注目【写真:Getty Images & 髙橋 学】

【識者コラム】結局のところ、ネームバリューに尽きるのではないかと思う

 パリ・サンジェルマン(PSG)vs川崎フロンターレは国立競技場に6万5000人を集めた。埼玉スタジアムの浦和レッズ戦も6万人超え。川崎戦を前に行われた公開練習には1万3370人が集まった。この公開練習は有料で4500円、小中高生でも2000円である。

 一方、E-1初戦の日本代表と香港代表の試合は4980人だった。PSGの有料公開練習の半分以下。この差はいったい何を意味しているのだろう。

 国立競技場とカシマスタジアムのアクセスの違いはある。ただ、国立のPSGの試合も前もって高いチケット代を払ったファンが来ているわけで、近いからフラッと立ち寄ったという人はいない。アクセスの差はあるにしても、当然それだけが理由ではないはずだ。E-1の意義付けがはっきりしないというのもあるかもしれないが、それを言うならPSGのほうはただの集金親善試合である。

 結局のところ、リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・ムバッペのネームバリューに尽きるのではないかと思う。

 もちろん彼らは凄い選手だ。ただ、6万人のすべてがその凄さを理解しているわけではない。何か凄そうだ、凄いらしいということで見に来た人も多かったのではないか。凄い選手ということなら日本代表選手だってそれなりの凄いのだが、そこはもう世界的に凄いと認められている選手とのネームバリューの差は歴然としている。

 私事で恐縮だが、サッカーに興味を持つきっかけになったのは来日して日本代表と試合をしたバイエルン・ミュンヘンだった。たまたま訪問していた家のテレビで試合をやっていて何となく見ていたら、実況が「ここまでのシュートは日本の釜本が3本、バイエルンのベッケンバウアーが3本」と言っていた。

 小学生だった私はサッカーに何の興味もなく、「ベッケンバウアー」という名前も聞いたことがあるような、ないようなという程度だったのだが、「どれがベッケンバウアーなのかな?」と気になって見てみたら、どうもずいぶん後ろのほうにいる。「リベロ」というポジションらしい。ベッケンバウアーはほかの選手とは何かが違って見えた。何が違うのかは分からないが、なんか凄そうだと思った。

 それから数か月後には、西が丘に古河電工vs永大産業を見に行くまでになっていた。ものの見事にサッカー沼にはまったわけだ。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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