英記者、森保ジャパンの6 月シリーズ総括 W杯へ保守的采配を懸念「プランAは恥ずべき形で崩壊した」

左サイドでインパクトを残したMF三笘薫【写真:高橋 学】
左サイドでインパクトを残したMF三笘薫【写真:高橋 学】

「森保監督は三笘の起用を限定的なものにしたいようだ」

 森保監督は、変化を好まない。東京五輪では、そのことを見せつけられ、日本は大会を戦い抜くエネルギーとアイデアが枯渇した。その要因は、監督が最も信頼した選手たちに固執したからだった。彼はリスクを冒す準備ができていなく、その結果、日本はメダルを逃すこととなった。

 さらに腹立たしいのは、当時の五輪代表チームが、ほとんどずっとハンドブレーキを解除することなくプレーしていたことだ。すべてが管理され、予定されていた。溢れんばかりの才能に満ちた選手たちは、背中に重りを付けたままプレーさせられているようだった。ようやく日本が勢いづいたのは、銅メダルを逃したメキシコ戦で、三笘が登場してからだった。

 若いウイングをどのように使いこなせばいいかは、森保監督にとって悩みの種となっている。三笘はエキサイティングで、試合の流れを変える才能のある存在であり、チームにプラスアルファをもたらせる存在だ。ところが、監督は彼の起用を限定的なものにしたいようだ。だが、パラグアイ戦、ガーナ戦で証明したように、彼は対峙するDFに恐怖を与えて、チームメイトに好機を作り出すことができる。

 この2週間で、我々は森保監督が、プランAとプランBを採用する場面を見てきた。プランAは過去4年間、実績があり、信頼を寄せてきた選手たちを起用したが、失敗に終わった。彼らは2つの試合に敗れ、最初のブラジルとの試合では何もできずに、最後のチュニジアとの試合では、恥ずべき形で崩壊した。

 プランBは、パラグアイとガーナを相手に機能した。対戦相手が同じレベルではなかったことを考慮しなければいけない。だが、こちらの試合に起用された選手たちは、両方の試合で、より自由にプレーし、まったく異なる雰囲気を漂わせていた。結果だけでなく、彼らがどのようにその結果を得たかは、大きな意味を持っている。

 この2週間の利点は、すべてのことが監督の目の前で起きたことだ。森保監督は我々が目にしたのと同じものを見ていたはずだ。それは、日本の若い選手たちは、求められた時に要求に応えることができるということである。

 こうした若い選手たちのほとんどは、コパ・アメリカと東京五輪というハイレベルな世界大会を経験している。彼らは信頼に足る選手たちであり、信頼を寄せなければいけない。森保監督は、これまでの保守的な性質を振り払わなければいけない。6月シリーズで示されたのは、彼がそれを実行した時、日本がこれまで以上の力を発揮するということだ。

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マイケル・チャーチ

アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。

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