U-21日本代表DF内野貴史、サッカー人生の転機は高校卒業後の渡欧 「どうしてもプロになりたかった」男が掴んだ“人生のチャンス”
【独占インタビュー】独2部デュッセルドルフDF内野貴史、プロ選手を目指して一大決心
ウズベキスタンで6月に開催されるU-23アジアカップに向けて、ブンデスリーガ2部デュッセルドルフのDF内野貴史がU-21日本代表のメンバーに選出された。ドイツ・ブンデスリーガ2部のデュッセルドルフでデビューを飾った内野は定期的にトップチームで練習し、週末は4部リーグに所属するセカンドチームでプレーすることが多い。果たして、どのような経緯でデュッセルドルフまでたどり着いたのだろうか。(取材・文=中野吉之伴/全4回の2回目)
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ジェフユナイテッド市原・千葉U-18でプレーをしていた内野の元に吉報は届かなかった。ジェフトップチーム、そして他のJクラブからも声はかからなかった。これからどうすべきか。人生の岐路に立たされることになる。
「僕はめちゃくちゃプロサッカー選手になりたくて。高校卒業後の数年間って、ラストチャンスだと思ったんです。だからこのラストチャンスにすべてを懸けて、本当にサッカーだけに取り組んで、それでダメだったら諦めようって。高校3年生の僕とプロとの距離を考えた時に、普段どおり順調にサッカーを続けていたらそのうちプロになれるなんて距離ではなかった。でも本当にどうしてもプロになりたかったから」
そんな時、相談に乗ってくれたのが、千葉のアカデミーでコーチをしている元Jリーガーの坂本将貴だったという。ドイツでプレーという可能性を聞いた内野はそこに活路を見出した。
「正直、海外は行きたくなかったんです(苦笑)。でも本当にプロになるにはそれしかないなって。覚悟を決めて、親に自分の思いをぶつけました。大学のために準備してもらってあった4年間分のお金で、2年間だけサポートしてほしいって。バイトをせずに向こうで本当にサッカーのことだけに集中して、いつでも100%のパフォーマンスが出せるように準備して、チャレンジしたいというのを自分の言葉で家族に伝えました。親には本当に感謝しています。応援するといってもらえました。自分は恵まれているなって本当に思います。自分が言ってサポートしてもらったんだから、言い訳も甘えも許されない。本気でやらないと、という責任感もすごくあるなかで取り組んできた」
ドイツに渡った内野は最初U-19・2部に所属するチームでプレーすることになる。とある公式戦でU-19・1部アレマニア・アーヘンのスカウトの目に留まる活躍を見せたことで移籍話が進み、翌シーズンにはU-19・1部でプレーすることに。アーヘンのトップチームは経営難で4部まで降格したものの、かつてブンデスリーガの常連だった古豪クラブだ。ホームスタジアムは3万人以上のキャパを誇る。
「それにU-19・1部ということは、それこそドルトムントやシャルケのU-19チームと同じリーグなので、いろんな人が見に来るだろうなと思いました。そこに行けなかったら今の僕はなかったかなと。そこで1年やったあとは、アーヘンのトップに上がることになりました。そして運良くというか、シーズン最初に両サイドバック(SB)のレギュラーが怪我して、僕は左SBとしてデビューすることができました。その後も継続して起用してもらえてたんですが、同じリーグにいたデュセルドルフのU-23から話をいただいて、移籍することになったという感じです」
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。