遠藤航は“感情的”長谷部と真逆の主将 冷静な男が熱くなった最終節までの“舞台裏”「まだ終わってないぞ」

主将の威厳と全体を俯瞰する力 「危機感は大事」

 惜しみない献身も平然とこなす。スピーディーなカウンターが発動してFWチアゴ・トーマスがひとりで持ち込もうとしたとき、ほぼ最後尾に居た遠藤が全力疾走でフォローした。結局チアゴは遠藤を視認しつつも自らシュートを放ってGKの手にボールを当てた。それでも遠藤は特に反応を示さず、淡々と自陣方向へジョギングしていった。

「それも1つの判断だよね」

 普段の言動から推察するに、おそらくこのときの彼はそう諦念して再び自らの職務へと戻っていったと思う。

 ピッチ外の遠藤は良い意味で忌憚のない意見を発する。ときには言い難い苦言を呈すこともあり、それがキャプテンの威厳として表れてもいる。遠藤と並んで絶対的な主軸と目されたMFオレル・マンガラが一時レギュラーを外された後に発奮してゲームで活躍したとき、遠藤はチーム全体を俯瞰してこんな意見を述べていた。

「絶対にレギュラーから外されないという環境ではチーム全体がレベルアップしないと思う。それは自分も含めてですけどね。チーム内でも危機感を持って、そのうえで良いプレーを発揮できたら言うことはないじゃないですか。今のシュツットガルトは若い選手が多いから、なおさらチーム単位、そして個人単位の危機感は大事だと思っている」

 今季の遠藤は東京五輪、そしてカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選と、代表での活動も多岐に渡り、コロナ禍の中で多大な長距離移動を強いられた。フィジカルに絶大な自信を持つ彼であっても当然コンディション調整には苦しみ、ブンデスリーガのゲームでは低調なプレーが散見されることもあった。しかし、それでもマテラッツォ監督は彼をチームの中心に据え続け、チームリーダーとして全幅の信頼を寄せた。しかし遠藤は、その境遇に甘えない。少しでも気を抜けば今の座を剥奪される。身をもってそれを示しているからこそ、仲間も疑う余地なく彼に追随する。

 それでも傍目から見た遠藤はやはり冷静沈着さが目立ち、チーム成績が低迷したことも相まってサポーターの中には彼のキャプテンシーを懐疑的に見る向きもあった。

 理想のキャプテン像とは? 結果を果たすためにすべきことは? 自問自答する中で導き出した答えは明快だった。それは「自分らしくあること」。前節のバイエルン・ミュンヘン戦で2-2のドローに持ち込んで瀬戸際で残留の可能性を残したとき、遠藤はこんなメッセージを送ってきた。

「まだまだ他力ですけど、最後しっかり勝ちます!!」

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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