“パリ五輪世代” のU-21日本代表「序列考察」 荒木、鈴木、“飛び級招集”の18歳松木らタレント集結、3つのシステム次第で配置転換も

斉藤、荒木、鈴木という攻撃の中心を担える3人の競争と共存に注目

 アタッカーもシステム次第で配置が変わりそうだ。MF荒木遼太郎(鹿島アントラーズ)は左サイドのイメージが強い。ただ、もともとインサイドのポジションを得意とする選手なので、今回のメンバー構成だと4-2-3-1でもトップ下の候補になるかもしれない。その場合、FW鈴木唯人(清水エスパルス)との競争が発生してくる。

 欧州組として注目されるMF斉藤光毅(ロンメルSK)も荒木、鈴木と同じく左右のサイドとFWをこなせるので、こうした選手の配置や組み合わせはトレーニングで見極めるところもあるだろう。彼らに比べるとドリブルの打開力に優れるMF甲田英將(名古屋)や縦へのスピードに秀でるMF松村優太(鹿島)はより特長がはっきりしている。松村はA代表のMF伊東純也(ヘンク)を参考にしているようで、右のスペシャリストとして覚醒的な成長が期待される。

 前線でスタメンを争うのは、FW藤尾翔太(徳島ヴォルティス)、FW細谷真大(柏)、FW小田裕太郎(ヴィッセル神戸)の3人。典型的なセンターフォワードは藤尾だけだが、細谷は代表で1トップもこなし、最近の柏では2トップでもプレーしているので、そうしたポジションに馴染んできているのはあるだろう。それは小田も同じで、もともと左サイドで使われることが多かったが、神戸で2トップを経験することで、持ち前の突破力だけでなく、体格を生かしたポストプレーの意識も見られる。

 それぞれのポジションで競争はあるが、大会前の時点で明確な序列はないなかで、試合でしっかりとアピールすることが今後につながる。その意味で特に注目したいのが斉藤、荒木、鈴木という攻撃の中心を担える3人の競争と共存だ。それぞれ個人でもコンビネーションでも打開できる能力があり、キッカーとしても優秀だ。3人揃った布陣も見てみたいが、守備や特長のバランスもあるので、競争のホットゾーンになるかもしれない。

 そしてボランチもシステムで多少変わってくるが、この世代は特にポテンシャルの高い選手が多い。今回は怪我で離脱中のMF松岡大起(清水エスパルス)というこの世代の大黒柱が不在となるなかでも、MF田中聡(湘南ベルマーレ)、川﨑、MF藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)、MF山本理仁(東京V)、松木がどういうパフォーマンスを発揮していくか。川﨑は「松岡選手、田中聡とか僕よりJ1でずっと出てる選手が多いなかで、ピッチで何ができるか」と意気込みを語る。

 また大岩監督が比較的、薄いポジションと見ているSBやCBでも軸になる選手を見極める大会でもあり、ここで大きくアピールした選手は今後も継続的に招集されていくことになるだろう。無論、チーム事情でそういった選手を招集できない大会も出てくるのがこの年代であり、海外移籍がますます増えるなかでそれは強まりそうだ。大岩監督はそうした状況もウェルカムと考えているようだが、軸を見極めると同時に選手層が広がる機会になることも期待される。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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