レアルの“体質”に隠された「勝負強さ」とは? 理詰めの宿敵バルセロナと似て非なるもの
【識者コラム】CL16強でPSGに2戦合計3-2勝利、勝負強さを発揮したレアル
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦をレアル・マドリーが逆転で勝ち抜けた。パリ・サンジェルマン(PSG)とのファーストレグを0-1で落とし、ホームのセカンドレブもキリアン・ムバッペの得点で0-1のビハインドになったが、後半にカリム・ベンゼマのハットトリックでひっくり返している。2試合合計3-2だった。
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かつてバルセロナのシャビ・エルナンデスが「レアルは理由なく勝つ」と言っていたが、今回も勝負強さを遺憾なく発揮したと言える。最初のゴールが生まれるでは、勝てそうな流れではなかったのだ。ハイプレスはハマらず、2点とらなければいけないのに攻めあぐねていた。
ところが、ベンゼマのGKへのプレスから1点を返すと一気に流れが変わり、後半30分、同33分と立て続けのゴールでベスト8への扉をこじ開けた。1点目の前に2人の選手交代をしているが、それが劇的な効果を挙げたとも言える、1点とった後に急に勢いづいている。逆にPSGはその時点でまだ2試合合計2-1とリードしていたにもかかわらず、1点取られただけでなんだか蛇に睨まれたカエルのようになってしまった。
舞台がサンチャゴ・ベルナベウということはあっただろう。リオネル・メッシ、ネイマール、ムバッペを前線に並べた構成から、ちょうど守備の強度が落ちる時間帯だったのかもしれない。ただ、レアルの逆転はむしろ説明がつかない部分のほうが大きいと感じる。
レアルは国内リーグ優勝最多34回の名門中の名門だ。CL優勝13回も最多である。ところが、国内リーグ優勝とCL優勝が重なったのはわずか3回しかない。対照的なのがライバルのバルセロナで、CL優勝した5シーズンはすべて国内リーグも制している。国内リーグの優勝回数で31回とレアルに近いバイエルン・ミュンヘンはCLも6回獲っている。そしてそのうち4回は両方とも優勝している。
CLで優勝できるぐらい強ければ、国内リーグも制していてむしろ不思議ではない。ところがレアルは優勝回数が多いわりには重なりがなく、つまりそんなに状態が良くなくてもCLで優勝できるチームなのだ。16回のCL決勝で負けたのも3回しかなく、勝率約81%というのも抜群である。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。