長谷部誠も太鼓判の“復活力” “ELの申し子”鎌田大地に寄せられる究極の夢への“先駆者”の期待

ファン・サポーターを引き込む鎌田の確固たる足跡

 デゥルステヴィツ記者が『帰ってきた』と記したのには理由がある。それまでの鎌田は今季のオリバー・グラスナー監督新体制下でなかなか持ち味を発揮できず、最近のゲームでは途中出場が増えていた。しかし、ベティス戦の直近に行われたブンデスリーガ第25節ヘルタ・ベルリン戦で3試合ぶりに先発して1アシストを挙げてチームの4-1大勝の一翼を担って復活の兆しを見せ、件のベティス戦に向けて着々と牙を研いでいた。

 EL決勝トーナメント開催時期に、鎌田のバイオリズムが上昇曲線を描くのは例年通りだ。ちなみに鎌田のそばであえて遠巻きに見守る同僚の長谷部誠は、頼もしき後輩の行末をこう予見していた。

「ここ3、4試合の大地はあまり上手くプレーできていなかったと思います。でも、彼はすぐに本来のパフォーマンスを発揮できる。僕はそう信じています。彼にはすでにその能力が備わっているのだから」

 苦境に陥っても平静さを保つ。これが鎌田特有のパーソナリティーだが、喜怒哀楽を表に示すことでコミュニケーションを図るヨーロッパの土壌では、彼のキャラクターが十全に理解されない風潮も感じていた。しかし、今は思う。ベティス戦でゴールを決めた直後に両膝からピッチへ滑り込み、仲間の祝福を受けて満面の笑みを浮かべる彼はどこまでもエモーショナルだ。そして、そんな彼の姿を観たファン、サポーターが歓喜に打ち震える。激烈なヨーロッパの戦いで、鎌田は確固たる足跡を刻んでいる。

 シーズン終盤戦に向けて期待が高まる。日本人選手でUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、そしてELなどの各種ヨーロッパタイトルを獲得したのは2001-02シーズンのUEFAカップ(現EL)で当時フェイエノールト(オランダ)に所属した小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)が唯一だ。フランクフルトでELラウンド16に勝ち残っている鎌田大地と長谷部誠は今、リバプール(イングランド)でインテルを下してベスト8へ勝ち上がった南野拓実とともに、再びのはるかなる頂へ挑む。

 そして、少なくともフランクフルトの街の住人は、“ELの鎌田”が究極の夢へ誘う先駆者であると信じている。

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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