長谷部誠も太鼓判の“復活力” “ELの申し子”鎌田大地に寄せられる究極の夢への“先駆者”の期待

鎌田にとってELはプライドと自信を培養できるかけがえのない大会

 フランクフルトは続く2019-20シーズンのELでも、希望に満ちた戦いを展開した。この時にチームを頼もしく牽引してサポーターから大いなる信任を受けたのが鎌田大地だった。

 この年の鎌田はベルギーのシント=トロイデンへの期限付き移籍から勇躍帰還し、着実に成長を遂げていた時期だった。特にELでの活躍は目覚ましく、グループステージ第5節のアーセナル(イングランド)戦で2ゴールをマークして“ガナーズ”の野望を打ち砕いたのを皮切りに、ラウンド16ではブンデスリーガで後塵を拝していたRBライプツィヒを相手に第1戦でハットトリックを達成。最終的にはライプツィヒを下したあとの準々決勝でバーゼル(スイス)に敗れるまで、鎌田はELで10試合6ゴールをマークして完全なるチームの中核として君臨した。

 また、興味深いことに、鎌田はELでの躍進と呼応して国内のブンデスリーガでも着実に結果を積み上げていった。当初はブンデスリーガ特有の激しいフィジカルコンタクトや目まぐるしい攻守転換の応酬となるスピーディーな展開に戸惑う姿もあったが、ヨーロッパの舞台での経験を糧に、鎌田はドイツの環境にもしっかりアダプトしていったのだ。結局、このシーズンの鎌田はブンデスリーガで2得点とどまったものの、出場試合は34試合中28試合と誇るべき数字を刻んだ。

 鎌田にとってELは、自身のプライドと自信を培養できるかけがえのない大会である。それは2シーズンぶりに出場を果たした今季のELでの戦いでも、如実に示されている。鎌田はグループステージ6戦、そして今週ミッドウィークに開催されたラウンド16第1戦・ベティス戦の全7試合に出場して4ゴールをマークし、まさに“ELの申し子”としての面目を躍如している。特に、下馬評不利と言われたベティスとのアウェー戦で決めたゴールは、1-1の状況から相手の戦意をそぐ絶好の加点で、これでフランクフルトは一気に優位に立った。

 イェスパー・リンドストロームからの右クロスを受ける寸前、鎌田は相手DFがゴール方向へ後退するのを確認して一旦立ち止まり、味方クロスをノーマークで迎え入れる態勢を整えた。その挙動は生粋のストライカーの如し。その華麗な立ち回りに、地元地方紙のフランクルト番記者のインゴ・デゥルステヴィツ氏は「“ユーロ・鎌田”が帰ってきた!」と称え、「彼は国際舞台に燦然と現れ、巧妙なアイデアで光り輝いた」と絶賛した。

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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