Jリーガー大津祐樹、「生きるか、死ぬか」で芽生えた問題意識 社会貢献に懸ける想い「行動で示したい」

磐田FW大津祐樹(写真は昨季のもの)と浦和DF酒井宏樹【写真:高橋 学】
磐田FW大津祐樹(写真は昨季のもの)と浦和DF酒井宏樹【写真:高橋 学】

【独占インタビュー】浦和DF酒井宏樹とともに活動「困っている人たちを少しでも助けたい」

 ジュビロ磐田のFW大津祐樹は、浦和レッズのDF酒井宏樹とともに「スポーツの価値を最大化する」をテーマとしたプロジェクト「Football Assist」を立ち上げ、大学生支援をはじめとしてさまざまな活動を行ってきた。2021年12月25日から28日にかけては、東日本大震災の復興支援の一環として福島県相馬市で少年・少女向けのサッカー大会「Football Assist CUP」を開催した。

 大会には被災した地域の子供たちだけでなく、全国各地から29チーム計400名以上が参加。U-8男子の5人制サッカー、U-12男女の8人制サッカーの形式で実施された。大津と酒井も現地に足を運んで子供たちと直接交流し、被災地への訪問も行っている。

「高校サッカー部の同級生が福島に住んでいて(東日本大震災の)被害に遭いました。その時にすごく大変な思いをしたことは聞いていたので、福島のためにできることはないかと以前から考えていました。そして僕らの会社で小学生向けのサッカー大会を企画するなかで、福島を開催地にしてより多くの小学生やその保護者の方たちに震災のことを伝える活動をしたいと思ったのがきっかけでした」

 このように語る大津自身も、11年の東日本大震災では実家のある茨城県水戸市が被災。家族や知人など親しい人が苦しんでいる姿を目の当たりにしてきた。「(震災は)生きるか、死ぬか。そういうレベルの話」大津にとっては選手として、また1人の人間として新たな問題意識が芽生えるきっかけにもなった出来事だという。

「僕たちがサッカーをやれていることも当たり前ではないと思い知らされました。深刻な現実を人伝に聞いて驚きました。だからこそ、あの経験を経て僕たちにできることをしなきゃいけないと感じたんです」

 選手としてプレーしながらも、一方で会社の代表を務めるなどビジネスマンとしての顔も持つ大津。復興支援だけではなく、サッカースクール運営や大学生支援、農家支援など、さまざまな社会貢献活動を行っている。その原動力になっているのは「誰かのために」という強い思いだ。

「僕自身が小さい頃にそう感じたように、プロサッカー選手は子供たちにとって憧れの存在だと思っています。自分がそういう立場になった時には行動で示したいと思っていました。プロとして現役のうちから行動して発信することで困っている人たちを少しでも助けたい。自分たちの活動によってどのような人たちが助かるのか。そういうことを常に考えています。これは僕だけでなく酒井も同じ気持ちです。

 僕らが『世の中が良くなる。誰かのためになる』と信じている部分に関しては、誰に何を言われたとしても迷いなく取り組もうと思っています。もし、それらが自分たちだけのためなら、やる価値はありません。でも、誰かのためになるのであれば僕たちが行う意義があるはずですから」

 コロナ禍でイベントの開催は難しくなり、スポーツの持つ価値や影響力が改めて問われる時代となった。大津は「サッカーだけでなく、スポーツ界全体として今は少し落ちてきていると感じています。そういったなかでもう一度スポーツが盛り上がるきっかけになるような活動をしていきたいです」と未来に目を向けた。すべては育ててもらったスポーツへの恩返しをするために――。

[プロフィール]
大津祐樹(おおつ・ゆうき)/1990年3月24日生まれ、茨城県出身。新荘常磐SSS-鹿島アントラーズノルテJrユース-成立学園高-柏-ボルシアMG(ドイツ)-VVVフェンロ(オランダ)-柏-横浜FM-磐田。ドリブル突破で打開を図り、機を見て放つシュートで脅威を与える一方、ハードワークを惜しまず、果敢なボール奪取と献身的な守備でチームを支える。浦和レッズDF酒井宏樹とともに「スポーツの価値を最大化する」をテーマとしたプロジェクト「Football Assist」を進めている。

(石川 遼 / Ryo Ishikawa)



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