2部降格“当確”だったビーレフェルトが急浮上 奥川雅也が「プレーしやすい」と語るドイツ人監督の魅力とは?

ビーレフェルトのフランク・クラマー監督【写真:Getty Images】
ビーレフェルトのフランク・クラマー監督【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】下位に低迷していたビーレフェルトが残留圏へ浮上

 ブンデスリーガでもどこでも、シーズン前にはブックメーカーによってさまざまな賭けが設定されるものだ。優勝争いやUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場クラブ、得点王争いを予想するものもある。大手ブックメーカー「bwin」によると、今季ブンデスリーガにおける降格候補に関して、グロイター・フュルトが1.7倍、日本代表FW浅野拓磨が所属するボーフムが2倍、そして、MF奥川雅也が所属するビーレフェルトが2.2倍で3番手につけていた。ちなみに、9連覇中のバイエルン・ミュンヘンの倍率は2501倍だ。

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 2部からの昇格クラブが降格候補に挙げられるのは正直毎年のことなので、フュルトとボーフムがここに名を連ねるのはある意味例年通り。一方で昨季センセーショナルな追い上げで1部残留を果たしたビーレフェルトではあるが、戦力的に大きな上積みができなかったため、ブンデスリーガ2年目は厳しい見方が多勢を占めることに。実際に15節終了時まではわずか1勝の17位と低迷。降格プレーオフに回る16位との勝ち点差は6も開いていただけに、18位フュルトとともに自動降格は当確だと思われていた。

 そんなビーレフェルトが16節ボーフム戦を2-0で勝利すると、ここから勝ち点を積み上げていく。そこからの9試合で4勝3分2敗。気が付くと降格圏から浮上し、残留圏の14位につけている。

 第23節では日本代表MF原口元気とMF遠藤渓太が所属する7位ウニオン・ベルリンにホームで勝利。ドイツ人監督のフランク・クラマーは試合後の記者会見で喜びを隠すことなく、気持ちをストレートの言葉にしていた。

「難しい試合に勝って、皆で喜ぶことができて私はハッピーだ。コンパクトに戦い、チーム一丸となって勝ち取った勝ち点3だ。みんなの情熱的で勝ちたいという気持ちを感じられた素晴らしい試合だった」

 1つ前のホッフェンハイム戦では良さを出せずに0-2で完敗。その影響が尾を引くのではないかという地元メディアからの心配もあったが、クラマー監督はまったく意に介さないポジティブな姿勢を前面に押し出していた。

「CL出場権を争っているチーム相手に負けたんだ。非常に良いチーム相手に負けたんだよ。あの試合ではミスが少し多かった。大事なのは次の試合に向けて気持ちを切り替えて、チームとして戦うこと。トレーニングからそうじゃなきゃダメなんだ。大事なのは皆で守って、サッカーをすること。それが今日の勝利につながっていると思う。試合に勝つにはちょっとした幸運が必要だと思うけど、それが今、自分たちのところにあるのは、そうした取り組みを積み重ねているからだと思うんだ」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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